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ぱるころ
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「ねえ、ジャンヌ様、人生ってのは、皆が思うほど良いものでも、悪いものでもないんですね。」 辛い出来事に悲しむことはあっても、恨みや憎しみに縛られることはない。そんな主人公たちが教えてくれること…

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

モーパッサン(1850-1893、仏)の代表作である『女の一生』。本書は2011年刊行の新訳であり、原作の素晴らしさを読みやすい文章で味わうことができる。


男爵令嬢のジャンヌは、修道院を出たばかりの17歳。両親からの愛情を受け、まっさらで貞淑な乙女に育っていた。
ジャンヌの目に映る景色は全てが輝いており、その目線で捉えた世界の瑞々しさは次のように表現される。
「ジャンヌは、頭がおかしくなりそうなほど幸福だった。(中略)この太陽は私のもの。この夜明けは私のもの。人生がいま始まる。希望に満ちた人生が始まる。」

だがその後ジャンヌは、身近な人物たちからの裏切りに遭い、お金を失い、大切な人をも失うという転落人生を歩む。夢見がちで感傷的な母親や、幸薄な独身のリゾン叔母など個性的な人物の言動も、物語の進行において存在感を放つ。
ジャンヌの最初の失敗は、ハンサムだが貧乏でケチで暴力的な子爵ジュリアンとの結婚。さらに自身の乳姉妹である女中ロザリの出産した子供が夫ジュリアンの子であることを知り、ロザリは家から去る。その後も夫は伯爵夫人と浮気、さらに、ジャンヌは過保護のあまり一人息子の教育にも失敗する。

それらの出来事から二十年以上の時が流れ、独り身となったジャンヌに再び寄り添うのは、元女中のロザリ。お互いジュリアンに翻弄された過去はあるものの、ジャンヌは乳姉妹との再会を喜んだ。そして、幸せを追い求めるジャンヌとは対照的で堅実なロザリは、ジャンヌを救うことになる。
作品の締めくくりとなるロザリの一言が印象的であった。
「ねえ、ジャンヌ様、人生ってのは、皆が思うほど良いものでも、悪いものでもないんですね。」
生きていると辛いこともあるけれど、時間が経てばこんな風に言えるのかも知れない。


解説によると原題『Une vie』には「誰の」という限定的な意味はなく、『ある誰かの人生』といった意味だそう。ロザリの一言はジャンヌの人生に限らず、登場人物に起きた出来事を作者が俯瞰的に表した言葉のように感じた。
また読み終えて気付いたことだが、辛い出来事によりジャンヌが悲しみの感情を抱くことはあっても、恨みや憎しみに縛られることは無い。そのためか、名作であることは勿論だが、それ以上に心の充実を得られたという読後感が強い。
ロザリの言葉が、現代を生きる人たち、特に若い人たちの心に響いたらいいな、と思った。
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ぱるころ
ぱるころ さん本が好き!1級(書評数:147 件)

週1〜2冊、通勤時間や昼休みを利用して本を読んでいます。
ジャンルは小説・エッセイ・ビジネス書・自己啓発本など。
読後感、気付き、活かしたい点などを自分なりに書き、
また、皆さんからも学びたいと考え参加しました。
よろしくお願いします。

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