oldmanさん
レビュアー:
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『ここまで書いて委員会』と言ってしまいそうな小説。よくもここまでTDRの裏を暴いちゃってさぁ……でもねぇ、ディズニーって僕らの年代には特別なんだよなぁ。
この本については、単行本の段階ではるほんさんの名(迷?)書評 が有ったので読んでみました。
フリーター生活の後藤大輔は派遣社員として東京ディズニーランドに派遣されます。テストは散々な結果でしたが、やる気と元気を買われて準社員(アルバイト)に採用されます。
勇んで行ったディズニーランドで配属されたのは美装部。ヌイグルミをキャストに着せたり脱がせたりする裏方でした。
この主人公 やる気はあるんですが、いわゆるKY男子で最初はイライラ感じます。
失敗をしてもめげないし、幹部社員の打ち合わせに口を出すし、先輩の指示を無視して勝手な行動をしてしまいます。美装部の新入りという自覚がまったくありません。
ここで描かれているのは正社員vs準社員(アルバイト)という会社内の階級制度であり、公務員のキャリアとノンキャリアの様な世界です。
その辺り(実際 TDRでも準社員から正社員になったという例は1%以下らしい……)ですね。
夢を提供する会社として、これはかなり「不都合な真実」だと思います。……が一応著者は社名をオリエンタルワールド(実際はオリエンタルランド)とすることで、巧みに避けています。
さて、お話の中ではディズニーランドでショーに使用するミッキーのキグルミ(念のため言っておきますが本物のミッキーには中の人なんて居ません)が紛失します。果たしてミッキーのキグルミは何処へ?というのがメインテーマです。
まぁ結果は他愛の無いものですが、ミッキーのキグルミ(しつこいようですが、これはあくまでもこの本の事で、本物のミッキーはキグルミなんかでは有りません)は無事発見され、偉そうに正社員風を吹かせて威張り散らしていた人達は成敗され(「スケサンカクサン ヤッテオシマイナサイ」)メデタシメデタシとなるわけです。
閑話休題 冒頭で「ここまで書いて委員会」と書きましたが、TDR自体厳重な秘密主義をとっている為、その内情はあまり知られていません。
これは、ウォルト・ディズニーの哲学「夢は決してその正体を明かしてはならない」が生きている為であり、その徹底ぶりがこの結果なのです。
お話の中でもちょっと触れられていますが、本家のディズニーランドは勿論、TDLの下にも大きなトンネルがあり其処をトラックが走っているというのは有名な話です。(実際ウォルトがミッキーとトラックが通れるよう様なトンネルでならんで立っている写真を昔見たことが有ります。)
この辺がディズニープロが秘密組織染みた扱いをされる所以でしょう。
また、異様に版権に対して煩いことも本当で、これは過去にウォルトが盟友アブ・アイワークスと共に立ち上げて産み出した人気キャラクター 「しあわせウサギのオズワルド」が配給者であるチャールズ・ミンツの画策で版権を奪われたうえ、スタジオに居たアニメーターの殆どを引き抜かれる、という苦渋を味わったからです。
ウォルトとアブはその後ミッキーを産み出すことで大成功を納めるのですが、この経験でその後のディズニープロの姿勢が決まるのです。
余談ですが、ウォルトと共にディズニープロを起こしたすぐ上の兄ロイ・ディズニーは敏腕な経営者で今のディズニープロの礎を築いています。
アニメーションの研究家 森卓也氏(日本アニメーション界の草分けともいえる研究者であり評論家)がかって名著 アニメーションギャグの世界で書いていらしたと記憶していますが、氏が著書にディズニーのキャラクターの写真(映画館の屑フィルム<かっては映画館で上映する場合、尺に合わせるため映写技師がフィルムのコマを切って調整したため、屑フィルムが出たのです>を集めて使用したのですが……)を使ったところ、速攻でディズニープロ(当時ですから勿論カリフォルニアの本社)から「何処で手に入れた?」との問い合わせの手紙が来て驚いたそうです。
こんな経緯があるため、ディズニーは世界一版権にうるさい会社となったのです。
ところで、これも冒頭で「ディズニーは僕らの年代には特別」と書きましたが、昔(1968年頃)日本テレビ系列で夜8時から三菱電機の提供で「ディズニーランド」という番組が放送されていました。
ホイチョイの馬場康夫氏(僕と同い年)も書いていますが、なぜか「プロレス中継」との隔週放送で、ミッキーやドナルドを視るつもりでテレビをつけると、いきなり豊登りやミスターアトミックが出たりしてすごくガッカリしたものです。
僕の年代の子供にとって、白黒テレビに映し出されるディズニーランドは当に憧れの国であり、夢の世界だったのです。
今、舞浜にあるディズニーリゾートに勤めるキャストのほとんどは準社員だと聞いています。離職率も結構高いとも聞きます。
でも、東北大震災の時のキャストの対応は見事だったのも事実です。彼らは彼らなりにその夢を壊すことの無いように日々頑張っているのでしょう。
ディズニーランドの裏側を描きながら、読み手に不愉快な思いをさせない著者松岡氏の手腕はお見事と言えるでしょう。
なお、出版後氏がディズニープロから訴えられたとの話は聞かないので、あらかじめOKをとって書いたのでしょう(^_^)
フリーター生活の後藤大輔は派遣社員として東京ディズニーランドに派遣されます。テストは散々な結果でしたが、やる気と元気を買われて準社員(アルバイト)に採用されます。
勇んで行ったディズニーランドで配属されたのは美装部。ヌイグルミをキャストに着せたり脱がせたりする裏方でした。
この主人公 やる気はあるんですが、いわゆるKY男子で最初はイライラ感じます。
失敗をしてもめげないし、幹部社員の打ち合わせに口を出すし、先輩の指示を無視して勝手な行動をしてしまいます。美装部の新入りという自覚がまったくありません。
ここで描かれているのは正社員vs準社員(アルバイト)という会社内の階級制度であり、公務員のキャリアとノンキャリアの様な世界です。
その辺り(実際 TDRでも準社員から正社員になったという例は1%以下らしい……)ですね。
夢を提供する会社として、これはかなり「不都合な真実」だと思います。……が一応著者は社名をオリエンタルワールド(実際はオリエンタルランド)とすることで、巧みに避けています。
さて、お話の中ではディズニーランドでショーに使用するミッキーのキグルミ(念のため言っておきますが本物のミッキーには中の人なんて居ません)が紛失します。果たしてミッキーのキグルミは何処へ?というのがメインテーマです。
まぁ結果は他愛の無いものですが、ミッキーのキグルミ(しつこいようですが、これはあくまでもこの本の事で、本物のミッキーはキグルミなんかでは有りません)は無事発見され、偉そうに正社員風を吹かせて威張り散らしていた人達は成敗され(「スケサンカクサン ヤッテオシマイナサイ」)メデタシメデタシとなるわけです。
閑話休題 冒頭で「ここまで書いて委員会」と書きましたが、TDR自体厳重な秘密主義をとっている為、その内情はあまり知られていません。
これは、ウォルト・ディズニーの哲学「夢は決してその正体を明かしてはならない」が生きている為であり、その徹底ぶりがこの結果なのです。
お話の中でもちょっと触れられていますが、本家のディズニーランドは勿論、TDLの下にも大きなトンネルがあり其処をトラックが走っているというのは有名な話です。(実際ウォルトがミッキーとトラックが通れるよう様なトンネルでならんで立っている写真を昔見たことが有ります。)
この辺がディズニープロが秘密組織染みた扱いをされる所以でしょう。
また、異様に版権に対して煩いことも本当で、これは過去にウォルトが盟友アブ・アイワークスと共に立ち上げて産み出した人気キャラクター 「しあわせウサギのオズワルド」が配給者であるチャールズ・ミンツの画策で版権を奪われたうえ、スタジオに居たアニメーターの殆どを引き抜かれる、という苦渋を味わったからです。
ウォルトとアブはその後ミッキーを産み出すことで大成功を納めるのですが、この経験でその後のディズニープロの姿勢が決まるのです。
余談ですが、ウォルトと共にディズニープロを起こしたすぐ上の兄ロイ・ディズニーは敏腕な経営者で今のディズニープロの礎を築いています。
アニメーションの研究家 森卓也氏(日本アニメーション界の草分けともいえる研究者であり評論家)がかって名著 アニメーションギャグの世界で書いていらしたと記憶していますが、氏が著書にディズニーのキャラクターの写真(映画館の屑フィルム<かっては映画館で上映する場合、尺に合わせるため映写技師がフィルムのコマを切って調整したため、屑フィルムが出たのです>を集めて使用したのですが……)を使ったところ、速攻でディズニープロ(当時ですから勿論カリフォルニアの本社)から「何処で手に入れた?」との問い合わせの手紙が来て驚いたそうです。
こんな経緯があるため、ディズニーは世界一版権にうるさい会社となったのです。
ところで、これも冒頭で「ディズニーは僕らの年代には特別」と書きましたが、昔(1968年頃)日本テレビ系列で夜8時から三菱電機の提供で「ディズニーランド」という番組が放送されていました。
ホイチョイの馬場康夫氏(僕と同い年)も書いていますが、なぜか「プロレス中継」との隔週放送で、ミッキーやドナルドを視るつもりでテレビをつけると、いきなり豊登りやミスターアトミックが出たりしてすごくガッカリしたものです。
僕の年代の子供にとって、白黒テレビに映し出されるディズニーランドは当に憧れの国であり、夢の世界だったのです。
今、舞浜にあるディズニーリゾートに勤めるキャストのほとんどは準社員だと聞いています。離職率も結構高いとも聞きます。
でも、東北大震災の時のキャストの対応は見事だったのも事実です。彼らは彼らなりにその夢を壊すことの無いように日々頑張っているのでしょう。
ディズニーランドの裏側を描きながら、読み手に不愉快な思いをさせない著者松岡氏の手腕はお見事と言えるでしょう。
なお、出版後氏がディズニープロから訴えられたとの話は聞かないので、あらかじめOKをとって書いたのでしょう(^_^)
- これがオズワルド……今の版権は……ヤバッ ディズニープロが取り戻してるぞΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)
- 若きウォルト・ディズニー(左)とアブ・アイワークス(右)この二人がミッキーの産みの親です
- ウォルトと兄ロイ ロイは夢想家のウォルトに対して現実主義者でした。
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最近歳のせいか読書スピードが落ちているにもかかわらず、本好きが昂じて積読本が溜まっております。
そして、歩けるうちにとアチコチヘ顔を出すようになりました。
現在はビブリオバトルを普及することに力をいれております。
その為読書メーターにはコミュニティーも作りました。
( ゚∀゚)つ https://bookmeter.com/communities/337701
いささかひねくれた年寄りですがよろしくお願いいたします。
2016年12月 読書メーターのプロフィル画像とハンドルネームをちょっと変えてみました(*^^*)
読メハンドルネーム oldman獺祭魚翁
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- 出版社:新潮社
- ページ数:276
- ISBN:9784101357515
- 発売日:2008年08月28日
- 価格:460円
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