風竜胆さん
レビュアー:
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探偵役は、なんと76歳のおばあちゃん!
おばあちゃん探偵が活躍する、「萩を揺らす雨」(吉永南央:文春文庫)。主人公の杉浦草は、コーヒーと和食器の店・小蔵屋の経営者だ。数えで76歳。29歳で離婚し、一人息子を事故で亡くした草だが、実家を建て替えて、この店を始めたのがなんと65歳のときである。まだまだかくしゃくとしたもので、身の回りで起きる様々な事件の解決する様は、まったく歳を感じない。
本書は、5つの作品が収まった短編集である。表題作の「萩を揺らす雨」は少し切ない話だ。草は幼馴染の代議士・大谷からかっての恋人で子供まで儲けた鈴子の葬儀に京都まで代理で行ってくれと頼まれる。ところが大谷の息子・清史は、事件に巻き込まれていた。大谷の、鈴子やまだ見ぬ息子清史に対する思い、鈴子の、妻のいる大谷に迷惑をかけたくないという思い、そして草の、大谷に対する秘めたる思い。そんな人の「思い」というものが、良く描かれた作品である。
この他、虐待されていた少年を救ったり、生き甲斐を無くしていた医者に活を入れたりと、まさにスーパーおばあちゃんぶりなのだが、その一方では、老いの悲哀といったものも感じられる。草が、虐待されていた少年のことを調べようと、彼の家の周りをうろうろしていると、お巡りさんから徘徊老人扱いされてしまうのである。病気の後遺症で体が不自由な親友の由紀乃は、とうとう宮崎の息子のところに連れて行かれてしまった。まさに草の年代ならではのエピソードだ。
しかし、徘徊老人に間違えられようが、まだまだ草は頭も体も元気だ。そんなおばあちゃん探偵に、知らず知らずのうちにエールを送ってしまう。
本書は、5つの作品が収まった短編集である。表題作の「萩を揺らす雨」は少し切ない話だ。草は幼馴染の代議士・大谷からかっての恋人で子供まで儲けた鈴子の葬儀に京都まで代理で行ってくれと頼まれる。ところが大谷の息子・清史は、事件に巻き込まれていた。大谷の、鈴子やまだ見ぬ息子清史に対する思い、鈴子の、妻のいる大谷に迷惑をかけたくないという思い、そして草の、大谷に対する秘めたる思い。そんな人の「思い」というものが、良く描かれた作品である。
この他、虐待されていた少年を救ったり、生き甲斐を無くしていた医者に活を入れたりと、まさにスーパーおばあちゃんぶりなのだが、その一方では、老いの悲哀といったものも感じられる。草が、虐待されていた少年のことを調べようと、彼の家の周りをうろうろしていると、お巡りさんから徘徊老人扱いされてしまうのである。病気の後遺症で体が不自由な親友の由紀乃は、とうとう宮崎の息子のところに連れて行かれてしまった。まさに草の年代ならではのエピソードだ。
しかし、徘徊老人に間違えられようが、まだまだ草は頭も体も元気だ。そんなおばあちゃん探偵に、知らず知らずのうちにエールを送ってしまう。
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昨年は2月に腎盂炎、6月に全身発疹と散々な1年でした。幸いどちらも、現在は完治しておりますが、皆様も健康にはお気をつけください。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:268
- ISBN:9784167813017
- 発売日:2011年04月08日
- 価格:580円
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