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ぷるーと
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極限状態にあって、どうやって自分自身を保つか。
ある旅行会社が企画したツアーの参加者七人と添乗員、現地運転手、計九人の乗ったマイクロバスが地球の裏側にある国の遺跡観光を終えて首都に向かう帰路、反政府ゲリラの襲撃を受けて拉致された。 

事故発生から百日以上が過ぎてから特殊部隊がゲリラのアジトに強行突運転手以外の八人が入ったが、人質たちは犯人の仕掛けたダイナマイトの爆発により全員死亡してしまった。 
その二年後、ゲリラのアジトで録音された盗聴テープの中で人質たちが語り合っている朗読が公開された。 

アジトには、遺品と呼べるようなものはほとんど残っていなかったが、床板、戸棚の横板、引き出しの底、窓枠、テーブルの脚などのさまざまな切れ端に、八人分の文字が見つかった。人質たちは、朗読を始める前に、話の内容をまとめようといろいろな所に文字を記したらしかった。

極限状態で閉じ込められた狭い空間で、その場にいる者たちが順番に話をするという設定は、ボッカチオの『デカメロン』と似ている。だが、『デカメロン』は、フィレンツェでペストが大流行しているという極限状態ではあっても、そこに居ればペストの危害は受けないし、流行が収束すれば間違いなく家に帰ることができる。

『人質の朗読会』の人質たちには、自分たちが助かるという確証はない。もしかしたら助かるかもしれないという希望がいくらかはあっただろうが、死ぬかもしれないとも思っていただろう。そういったあやふやな状態で百日余りも過ごすのだ。気が変になってしまいかねない状況なのに、犯人たちの前で何かやったら、殺されかねない。そんな極限状態にあってどうやって自分自身を保つか、それが、一つ一つの話となっている。

私が好きだったのは、コンソメスープ名人。そして、一つ一つの話をまとめたイメージの第九話のハキリアリ。この二つ、本当にいい話だった。 
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2934 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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