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ときのき
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彼が彼らになるまでの
 地元ではおちこぼれの掃きだめとして有名な男子校に入学した南方。何故かその年の新入生は例年よりはるかに多い200人だった。狭い校舎で、満員電車に詰め込まれたような毎日を送ることになる新一年生たち。ある日、彼らに第一学年団体訓練の開催が告げられる。山奥で行われたのは、訓練という名の地獄のようなしごきだった。次々と脱落者が出る過酷な日々。彼らはやがて、この催しが学校側の仕組んだ陰謀だと気が付くのだが。

【ザ・ゾンビーズ】シリーズの前日譚だ。入学したばかりの南方たちが遭遇する初めての冒険。
 エリートサラリーマンである父親との確執。張りのない学校生活への迷い。起爆剤となる決定的なある言葉に出会う前、まだ跳ぼうとする覚悟を持てずにいた頃の、南方ビギニングを描いた物語だ。
 状況はどうしようもなく閉塞的で、周囲が彼らおちこぼれたちに望むのはただおとなしく分際をわきまえてふるまうこと――しかし、たとえ学校という場が惰性的な日常を演じる舞台でそこには退屈しかなかったとしても、外部から無理やり退場を要求されるいわれはない。

 教師がふるう凄惨な暴力は彼らを着実に追い詰めていく。期待されることも望まれることもなく、自分自身のあり方に自信を持つこともできないままにただ疲弊し心を折られていく高校生たち。
 喧嘩の強い朴舜臣も、超然としたアウトローのアギーも、この理不尽な状況から決定的に逃れる方法を知りはしない。無敵の【ザ・ゾンビーズ】はまだ手を繋ぎあうために必要なパーツを得ていない。
 だが、身体にまとわりつくしがらみにくすぶり続けていた南方が、苦境の中、逡巡しながらもついに抵抗のため一歩を踏み出す。そして、彼一人の知恵には限界があっても、“彼ら”には現状から飛び立つ力があることを知る。
 青春小説のプロローグ。地面と平行線を描いていた低空飛行のエモーションが、徐々に上向いていき、ラストにぐいっと急カーブを作り大空へと抜ける。解放されるために彼らは走る。仲間たちとともに先の見えない夜の道を突っ切り、次の舞台の入り口へと。
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ときのき
ときのき さん本が好き!1級(書評数:137 件)

海外文学・ミステリーなどが好きです。書評は小説が主になるはずです。

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