はるほんさん
レビュアー:
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きっとこの子はやればできる子。
町田氏は以前、源氏物語九つの変奏で短編を拝読した。
癖のある文章だが、内容は面白かった。
が、何やらいまひとつ理解しがたい部分があるとは思っていたのだが
今回も全く同じ感想を持つこととなった。(笑)
「夫婦茶碗」と「人間の屑」の2編。
どちらも人間の弱さ・駄目さを扱ったテーマや
狭い人間関係の中でまとめられた設定などは文学作品と呼んで差支えない。
だが脳内の思考をそのまま垂れ流しているような文体に
格調高さより、駄目街道を走る主人公がひたすら心に残る。
ボクシングならヘビーライト級とでも言うのだろうか。
「ライトヘビー」級ではない。
あくまで軽い。めっちゃ軽い。その軽さは尋常でない。
だが確かに「重い」のだ。
夫婦茶碗
どうやら現代の話であるらしいが、明治か大正の舞台とも思えてしまう。
社会の歯車と言うものに全く噛んでいない主人公の浮世っぷりが、
ニートなどという肩書では足りない程に尋常でないからだ。
妻の扶養義務という責任感を微塵も感じず、
冷蔵庫の卵の配列に数ページも使う奔放っぷりが上手い。
突き詰めれば大変な文学作品に化けそうなところを
寸止めで終わっているのが狙いとも残念ともとれる。
人間の屑
父親譲りらしい逃避癖と無責任さで、
パンツのゴムの上を歩いて人生綱渡りしているような主人公。
演劇をやっては逃げ、パンクロックをやっては逃げ、
祖母の元へ逃げ込んだ先からまた逃げ、
女のもとへ転がり込んでは逃げるというミもフタもない人生。
ムカつく以前に、余りに人生設計がお粗末すぎて心配になってしまうという
これまた不思議なキャラ作りである。
一瞬胸にジンと来そうな下りから、斜め45度ズラした着地点で終わる。
なんだろう、コレは。
どうしようもない男の救いようもない人生なのに、
図らずも何回か噴き出してしまった。
いや常識で考えて、笑い取ってる場合じゃないだろっていう。
お前、やればできる子っぽいじゃないか。
眼鏡を取ればカワイコちゃんっつーか、黙っていればイケメンなのに、
高尚な悲壮感を敢えて駄目な方へ輝かせていく。
なにかこう、すべてを残念に変換する魔法が逆にスゴい。
さりとて本を閉じて見捨てるのも惜しい。
駄目なのに捨てられない、まさにヒモみたいな小説だ。
いや、駄目な訳ではないのだ。
既にスタイルとして確立されているこの「駄目」を
読んだ側はどうしていいのか迷うのだ。
一部の隙もない「駄目」が「駄目」じゃなくなったら
逆に作品は「駄目駄目」になる気もする。
かくして「やっぱりよく分からない」というハンコを押して、
本書を脳内の未決箱に放り込むことになったが
なんというか、見どころのある「駄目」なのである。
いやもう「駄目」ってなんなのよ。
「駄目」がゲシュタルト崩壊起こしてきた。
駄目だコリャ。(ドリフ調に)
癖のある文章だが、内容は面白かった。
が、何やらいまひとつ理解しがたい部分があるとは思っていたのだが
今回も全く同じ感想を持つこととなった。(笑)
「夫婦茶碗」と「人間の屑」の2編。
どちらも人間の弱さ・駄目さを扱ったテーマや
狭い人間関係の中でまとめられた設定などは文学作品と呼んで差支えない。
だが脳内の思考をそのまま垂れ流しているような文体に
格調高さより、駄目街道を走る主人公がひたすら心に残る。
ボクシングならヘビーライト級とでも言うのだろうか。
「ライトヘビー」級ではない。
あくまで軽い。めっちゃ軽い。その軽さは尋常でない。
だが確かに「重い」のだ。
夫婦茶碗
どうやら現代の話であるらしいが、明治か大正の舞台とも思えてしまう。
社会の歯車と言うものに全く噛んでいない主人公の浮世っぷりが、
ニートなどという肩書では足りない程に尋常でないからだ。
妻の扶養義務という責任感を微塵も感じず、
冷蔵庫の卵の配列に数ページも使う奔放っぷりが上手い。
突き詰めれば大変な文学作品に化けそうなところを
寸止めで終わっているのが狙いとも残念ともとれる。
人間の屑
父親譲りらしい逃避癖と無責任さで、
パンツのゴムの上を歩いて人生綱渡りしているような主人公。
演劇をやっては逃げ、パンクロックをやっては逃げ、
祖母の元へ逃げ込んだ先からまた逃げ、
女のもとへ転がり込んでは逃げるというミもフタもない人生。
ムカつく以前に、余りに人生設計がお粗末すぎて心配になってしまうという
これまた不思議なキャラ作りである。
一瞬胸にジンと来そうな下りから、斜め45度ズラした着地点で終わる。
なんだろう、コレは。
どうしようもない男の救いようもない人生なのに、
図らずも何回か噴き出してしまった。
いや常識で考えて、笑い取ってる場合じゃないだろっていう。
お前、やればできる子っぽいじゃないか。
眼鏡を取ればカワイコちゃんっつーか、黙っていればイケメンなのに、
高尚な悲壮感を敢えて駄目な方へ輝かせていく。
なにかこう、すべてを残念に変換する魔法が逆にスゴい。
さりとて本を閉じて見捨てるのも惜しい。
駄目なのに捨てられない、まさにヒモみたいな小説だ。
いや、駄目な訳ではないのだ。
既にスタイルとして確立されているこの「駄目」を
読んだ側はどうしていいのか迷うのだ。
一部の隙もない「駄目」が「駄目」じゃなくなったら
逆に作品は「駄目駄目」になる気もする。
かくして「やっぱりよく分からない」というハンコを押して、
本書を脳内の未決箱に放り込むことになったが
なんというか、見どころのある「駄目」なのである。
いやもう「駄目」ってなんなのよ。
「駄目」がゲシュタルト崩壊起こしてきた。
駄目だコリャ。(ドリフ調に)
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
- アリーマ2014-02-24 13:19
この独特なダメ感(?)が、直球でエッセイ化される『猫シリーズ』が好きです♪
ハンパない猫狂いの日々を描いて、最近4巻目がでてます。
ワタシはこれ↓が好きですが、それより前の作品は文庫化されてますよん♪
http://www.honzuki.jp/book/179250/review/79913/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:新潮社
- ページ数:221
- ISBN:9784101319315
- 発売日:2001年04月01日
- 価格:420円
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