hit4papaさん
レビュアー:
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まったく厭な小説です(悪い意味ではなく)
子供の頃、随分残酷な遊びをした。
蜘蛛の巣にとってきた蝶を絡ませたり、トンボの尻にクローバを突っ込んで飛ばしたり、蟻を集めて虫眼鏡で焼いたり。子供ながら自分でやっていることに嫌悪感を抱き、ざわめきながらもこの悪行が止められない。酷いことをしているという後ろめたさが、余計、征服欲に拍車をかけたのかもしれない。
吉村萬壱さんの第129回芥川龍之介賞受賞作『ハリガネムシ』は厭な小説である。
読み進めながら、子供の頃の鬱屈した気分を思い出した。あの時の行為が、僕の本能によっているのならば、今だに酷いことを求めるものがあるのかもしれない。
本作品は、欲望をさらけ出した男の物語である。
一度会ったきりのソープ嬢サチコと同棲を始めた高校教師 慎一。慎一は、サチコの容姿に、行為に、言動に嫌悪感を抱きながら、関係を続けていく。仕事場では、密かに欲情を抱いている同僚の女教師に叱責され、鬱屈した日々を送る慎一。サチコに対して、時には心をどこかに置いてきたような優しさを見せ、時には暴力をもって冷酷に突き放す。
獣のよう性行為は、もっともっと堕ちていく自分を、サチコを通して確認しているように思える。慎一は、サチコが行方知れずになると、一抹の寂しさにおそわれる。しかし、この寂しさは愛とよべるものではないだろう。自身の所有するものに対する執着に似ている。
カマキリの尻から悶え出てくるハリガネムシは、剥き出しになった欲望を象徴しているようだ。厭な気分にさせるのは、理性で押さえつけている暗い部分に、不本意ながら共鳴してしまうからなのかもしれない。
残酷なまでに人間の本質をえぐり出す吉村萬壱さんの筆力に感嘆してしまう。読み切るのに嫌悪に耐えうる精神力を要するが、他の作品を引き続き読んでみたいと思わせる。
ちなみに、僕は、今は虫の類が大の苦手である。触るのはおろか、近寄ることもできない。だからといって、本質の部分で変わっているわけではないのだろうけど。
蜘蛛の巣にとってきた蝶を絡ませたり、トンボの尻にクローバを突っ込んで飛ばしたり、蟻を集めて虫眼鏡で焼いたり。子供ながら自分でやっていることに嫌悪感を抱き、ざわめきながらもこの悪行が止められない。酷いことをしているという後ろめたさが、余計、征服欲に拍車をかけたのかもしれない。
吉村萬壱さんの第129回芥川龍之介賞受賞作『ハリガネムシ』は厭な小説である。
読み進めながら、子供の頃の鬱屈した気分を思い出した。あの時の行為が、僕の本能によっているのならば、今だに酷いことを求めるものがあるのかもしれない。
本作品は、欲望をさらけ出した男の物語である。
一度会ったきりのソープ嬢サチコと同棲を始めた高校教師 慎一。慎一は、サチコの容姿に、行為に、言動に嫌悪感を抱きながら、関係を続けていく。仕事場では、密かに欲情を抱いている同僚の女教師に叱責され、鬱屈した日々を送る慎一。サチコに対して、時には心をどこかに置いてきたような優しさを見せ、時には暴力をもって冷酷に突き放す。
獣のよう性行為は、もっともっと堕ちていく自分を、サチコを通して確認しているように思える。慎一は、サチコが行方知れずになると、一抹の寂しさにおそわれる。しかし、この寂しさは愛とよべるものではないだろう。自身の所有するものに対する執着に似ている。
カマキリの尻から悶え出てくるハリガネムシは、剥き出しになった欲望を象徴しているようだ。厭な気分にさせるのは、理性で押さえつけている暗い部分に、不本意ながら共鳴してしまうからなのかもしれない。
残酷なまでに人間の本質をえぐり出す吉村萬壱さんの筆力に感嘆してしまう。読み切るのに嫌悪に耐えうる精神力を要するが、他の作品を引き続き読んでみたいと思わせる。
ちなみに、僕は、今は虫の類が大の苦手である。触るのはおろか、近寄ることもできない。だからといって、本質の部分で変わっているわけではないのだろうけど。
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ススキノの読書バーで、本読みさんとお話ししていたら、またまた書きたくなっちゃった。僕はお子ちゃまなみに頭の中が単純なんだな...
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:280
- ISBN:9784167679989
- 発売日:2006年08月01日
- 価格:600円
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