yukoさん
レビュアー:
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1991年4月。雨宿りしている少女と出会った高校三年生の守屋と太刀洗。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』 彼女は分裂前のユーゴスラビアからやってきたのでした。
続編にあたる『王とサーカス』が昨年出版され、
新聞で、前作にあたる『さよなら妖精』について書かれていたのを見ていると、
娘に、「面白いよ、それ」と言われ、
最近はめっきり本を読む暇のない娘がそう言うなら、と、読んでみました。
1991年4月23日。
下校中の高校三年生、守屋路行と太刀洗万智は、大粒の雨が降る中、潰れた写真館のシャッターの前で雨宿りする外国人の少女を見かけます。
傘を貸してあげようかと守屋が英語で話しかけるも、
見た目は白色人種のようなのですが、英語が全く通じない。
なんのことはない、太刀洗が日本語で話しかけるとあっさり通じ、一緒に喫茶店に行くことに。
話を聞くと、
この街で父親の知り合いの家で二カ月世話になるはずが、来てみると本人が亡くなっており、行くあてがなく困っているという。
彼女の名はマーヤ。ユーゴスラビアから来たと言う。
お金もあまりないということで、二人は同じ高校の同級生の、家が大きな旅館をやっている白河いずるに連絡をし、旅館の手伝いをしてもらうかわりに泊めてやってほしいと頼み込みます。
貪欲になんでもメモをとって、何事の意味もすべて知りたがるマーヤ。
だんだんと親しくなり、街を案内したり、ユーゴスラビアのことを聞いたり。
彼女が帰国した後、彼女の行方を探すために皆で集まるところから物語は始まります。
青春ミステリ、になるのでしょうか。
でも殺人事件とかは物語の中では起きません。
前半は高校生のほのぼのとした青春物語で、
後半でマーヤの出身国であるユーゴスラビアの情勢が変わり、
マーヤがいなくなってから、マーヤとの間の出来事をひとつずつ思い返し、
小さな謎を拾い上げていく。
平和な日本という国で、何の目標もなく、毎日ただなんとなく時間が過ぎていくだけの生活を送っていた高校生たちが、
激動のユーゴスラビアへ帰っていったマーヤのことを思いだし、
その甘酸っぱい青春時代から、一歩大人へ成長する物語、といったところでしょうか。
島国である日本で育ってきた彼らに、
ユーゴ=南の、スラビア=スラブ人、南スラブが一つであるようにとして出来上がった連邦国、ユーゴスラビアの複雑さがなかなか理解できない。
頑張ってお金を貯めてユーゴスラビアに行きたい!と守屋はマーヤにいうけれど、
マーヤには、
あなたは観光をしたいのだ、
いまは駄目ですね、観光に命を賭けるのはよくありません。
と拒絶されます。
マーヤが日本に来ていた1991年から、ユーゴスラビア紛争とよばれる、連邦解体の過程で起きた内戦は2000年まで続きました。
物語の中でちょうど起きるスロベニア紛争にはじまり、
有名なところではクロアチア紛争やボスニア・ヘルツェコビナ紛争などでしょうか。
文中でもマーヤも言っていますが、
基本的に独立した国の集まりである連邦国なのですが、豊かな国が貧しい国を支えているといういう構図になると、自分たちの稼いだお金をよその国の人のために使うのは嫌だ、だから独立したい、となるのは当然のことです。
「7つの国境と、
6つの共和国と、
5つの民族と、
4つの言語と、
3つの宗教と、
2つの文字を持つ、
1つの連邦国家」
ユーゴスラビアとはこんなにも多様性を内包した国家でした。
内戦が起き、分裂していく。
その中へ帰っていくマーヤ。
彼女のおかげで、高校生たちは成長できた。
悲しい結末ではあったけれど、
いい物語でした。
ユーゴスラビアのことをもっとちゃんと勉強しなくては・・・・
新聞で、前作にあたる『さよなら妖精』について書かれていたのを見ていると、
娘に、「面白いよ、それ」と言われ、
最近はめっきり本を読む暇のない娘がそう言うなら、と、読んでみました。
1991年4月23日。
下校中の高校三年生、守屋路行と太刀洗万智は、大粒の雨が降る中、潰れた写真館のシャッターの前で雨宿りする外国人の少女を見かけます。
傘を貸してあげようかと守屋が英語で話しかけるも、
見た目は白色人種のようなのですが、英語が全く通じない。
なんのことはない、太刀洗が日本語で話しかけるとあっさり通じ、一緒に喫茶店に行くことに。
話を聞くと、
この街で父親の知り合いの家で二カ月世話になるはずが、来てみると本人が亡くなっており、行くあてがなく困っているという。
彼女の名はマーヤ。ユーゴスラビアから来たと言う。
お金もあまりないということで、二人は同じ高校の同級生の、家が大きな旅館をやっている白河いずるに連絡をし、旅館の手伝いをしてもらうかわりに泊めてやってほしいと頼み込みます。
貪欲になんでもメモをとって、何事の意味もすべて知りたがるマーヤ。
だんだんと親しくなり、街を案内したり、ユーゴスラビアのことを聞いたり。
彼女が帰国した後、彼女の行方を探すために皆で集まるところから物語は始まります。
青春ミステリ、になるのでしょうか。
でも殺人事件とかは物語の中では起きません。
前半は高校生のほのぼのとした青春物語で、
後半でマーヤの出身国であるユーゴスラビアの情勢が変わり、
マーヤがいなくなってから、マーヤとの間の出来事をひとつずつ思い返し、
小さな謎を拾い上げていく。
平和な日本という国で、何の目標もなく、毎日ただなんとなく時間が過ぎていくだけの生活を送っていた高校生たちが、
激動のユーゴスラビアへ帰っていったマーヤのことを思いだし、
その甘酸っぱい青春時代から、一歩大人へ成長する物語、といったところでしょうか。
島国である日本で育ってきた彼らに、
ユーゴ=南の、スラビア=スラブ人、南スラブが一つであるようにとして出来上がった連邦国、ユーゴスラビアの複雑さがなかなか理解できない。
頑張ってお金を貯めてユーゴスラビアに行きたい!と守屋はマーヤにいうけれど、
マーヤには、
あなたは観光をしたいのだ、
いまは駄目ですね、観光に命を賭けるのはよくありません。
と拒絶されます。
マーヤが日本に来ていた1991年から、ユーゴスラビア紛争とよばれる、連邦解体の過程で起きた内戦は2000年まで続きました。
物語の中でちょうど起きるスロベニア紛争にはじまり、
有名なところではクロアチア紛争やボスニア・ヘルツェコビナ紛争などでしょうか。
文中でもマーヤも言っていますが、
基本的に独立した国の集まりである連邦国なのですが、豊かな国が貧しい国を支えているといういう構図になると、自分たちの稼いだお金をよその国の人のために使うのは嫌だ、だから独立したい、となるのは当然のことです。
「7つの国境と、
6つの共和国と、
5つの民族と、
4つの言語と、
3つの宗教と、
2つの文字を持つ、
1つの連邦国家」
ユーゴスラビアとはこんなにも多様性を内包した国家でした。
内戦が起き、分裂していく。
その中へ帰っていくマーヤ。
彼女のおかげで、高校生たちは成長できた。
悲しい結末ではあったけれど、
いい物語でした。
ユーゴスラビアのことをもっとちゃんと勉強しなくては・・・・
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仕事のことで鬱状態が続いており全く本が読めなかったのですが、ぼちぼち読めるようになってきました!
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:362
- ISBN:9784488451035
- 発売日:2006年06月10日
- 価格:780円
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