大人のための残酷童話

上半身が魚で下半身が人間という人魚
毎夜姫君と共寝する一寸法師
玉手箱をあけても歳を取らなかった浦島太郎
月には帰らないことを選択をしたかぐや姫
虫に“変身”した後も見世物となって家族を養うザムザ
美しいが頭が空っぽの白雪姫
約束通り狸汁をこしらえたのに夫に狸と疑われるお婆さん


日本の昔話や西洋の童話、ギリシア神話や中国の故事など
有名な物語やどこかで聞いたことがあるようなお話を改変した物語が２６篇

エロティックなもの、グロテスクなものも多く
ひとくちに“残酷”といってもいろいろな意味があるものだと
思わず関心もしてしまう。

その割に後味が悪くないのは、
良くも悪くも読後に“残るものがない”からだという気がしないでもない。

倉橋由美子は嫌いじゃないし
さらっと読めてその着想は面白いと思うものもあるにはあるが、
私としては
作者のファンは別として
改変ものに興味があるなら
風刺の効いた芥川とか
ジェンダー観が興味深い太宰とか
昔乙女なら思わず手をたたきたくなりそりそうなドナ・ジョーナポリの方を
お薦めしたい。