三毛ネコさん
レビュアー:
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安部寛と岡田准一主演の映画にもなってますね。エヴェレストに挑む、ある山男の物語です。登山という行為について考えさせられます。
エヴェレスト。言うまでもなく、世界で一番高い山である。登山家なら誰もが一度は挑戦したい山であろう。
本書はまず、エヴェレストの登山シーンから始まる。この男(深町)は、エヴェレストに挑戦しているのだ。それは、「あいつ」に出会ってしまったからだという。
カメラマン、深町誠。クライマーとしての経験もある。彼は、エヴェレスト遠征に同行したのだが、その遠征は失敗した。しかし、深町はカトマンズであるカメラを発見する。それは、ヒマラヤ登山史上、最大の謎を解くカギである。そこで彼は出会ったのだ。「あいつ」-羽生丈二と。羽生丈二は伝説のクライマーだった。そして、深町は羽生のことを調べ、だんだん羽生に興味を持つようになっていく。
山岳小説を読むと、ある疑問を持たざるを得ない。なぜ人は山に登るのだろうと。有名な登山家、マロリーは「なぜエヴェレストに登りたいと思ったのか?」と聞かれて「それ(エヴェレスト)がそこにあるから」と答えたそうだ。この言葉だけでは理由として納得できないのだが、結局人は未知のもの、まだ達成していないことに挑戦してみたい性(サガ)があるのかもしれない。未達成のものに対するチャレンジ精神。それが人類を進歩させてきたとも言える。登山家にとって山登りは、単なる仕事ではなく、命を賭けた自己実現、ひいては人生そのものだとも言えるだろう。
さて、深町は日本に戻ったのだが、そのカメラを追って再びネパールに行く。そこで、事態は複雑になっていき、誘拐事件まで起こる。そんな中で、羽生が目指していたのはエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂だった。山についてはよく知らないが、どうやら達成すれば登山史に残るものすごいことらしい。
エヴェレストという高山に挑むのは簡単ではない。寒さとの戦い、高山病との戦い、雪との戦い・・・
これらに打ち勝った者のみが登頂という栄冠を勝ち取ることができるのだ。もちろん、運も必要である。
この小説のメインは何といってもエヴェレスト登山の場面である。技術、体力、山での経験は言うまでもなく、高度順応、万全な体調、エヴェレストの地理・天候を熟知し、そして運が味方してくれて、初めて冬のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂が成功する可能性が出てくる。
羽生丈二は、普通の感覚で考えれば山のせいで道を踏み外したのかもしれないが、その山に救われてもいたのだ。彼には山しかなかった。そして、羽生には山に対する情熱があった。燃えたぎるような情熱が。
そして、羽生の挑戦が始まる-。結果は読んでのお楽しみだが、その過程は実に過酷である。読んでいると、また同じ疑問が出てくる。なぜ人は山に登るのか、と。深町が羽生の後を追いながら、なぜ山に登るのかという疑問は、なぜ生きるのかという質問と同じだと考える。どちらも、容易に答えの出る疑問ではない。それでも、羽生丈二は登り続けていく。彼にしか出せない答えを抱えて・・・
登山という行為について考えさせられる、読みごたえのある作品である。
本書はまず、エヴェレストの登山シーンから始まる。この男(深町)は、エヴェレストに挑戦しているのだ。それは、「あいつ」に出会ってしまったからだという。
カメラマン、深町誠。クライマーとしての経験もある。彼は、エヴェレスト遠征に同行したのだが、その遠征は失敗した。しかし、深町はカトマンズであるカメラを発見する。それは、ヒマラヤ登山史上、最大の謎を解くカギである。そこで彼は出会ったのだ。「あいつ」-羽生丈二と。羽生丈二は伝説のクライマーだった。そして、深町は羽生のことを調べ、だんだん羽生に興味を持つようになっていく。
山岳小説を読むと、ある疑問を持たざるを得ない。なぜ人は山に登るのだろうと。有名な登山家、マロリーは「なぜエヴェレストに登りたいと思ったのか?」と聞かれて「それ(エヴェレスト)がそこにあるから」と答えたそうだ。この言葉だけでは理由として納得できないのだが、結局人は未知のもの、まだ達成していないことに挑戦してみたい性(サガ)があるのかもしれない。未達成のものに対するチャレンジ精神。それが人類を進歩させてきたとも言える。登山家にとって山登りは、単なる仕事ではなく、命を賭けた自己実現、ひいては人生そのものだとも言えるだろう。
さて、深町は日本に戻ったのだが、そのカメラを追って再びネパールに行く。そこで、事態は複雑になっていき、誘拐事件まで起こる。そんな中で、羽生が目指していたのはエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂だった。山についてはよく知らないが、どうやら達成すれば登山史に残るものすごいことらしい。
エヴェレストという高山に挑むのは簡単ではない。寒さとの戦い、高山病との戦い、雪との戦い・・・
これらに打ち勝った者のみが登頂という栄冠を勝ち取ることができるのだ。もちろん、運も必要である。
この小説のメインは何といってもエヴェレスト登山の場面である。技術、体力、山での経験は言うまでもなく、高度順応、万全な体調、エヴェレストの地理・天候を熟知し、そして運が味方してくれて、初めて冬のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂が成功する可能性が出てくる。
羽生丈二は、普通の感覚で考えれば山のせいで道を踏み外したのかもしれないが、その山に救われてもいたのだ。彼には山しかなかった。そして、羽生には山に対する情熱があった。燃えたぎるような情熱が。
そして、羽生の挑戦が始まる-。結果は読んでのお楽しみだが、その過程は実に過酷である。読んでいると、また同じ疑問が出てくる。なぜ人は山に登るのか、と。深町が羽生の後を追いながら、なぜ山に登るのかという疑問は、なぜ生きるのかという質問と同じだと考える。どちらも、容易に答えの出る疑問ではない。それでも、羽生丈二は登り続けていく。彼にしか出せない答えを抱えて・・・
登山という行為について考えさせられる、読みごたえのある作品である。
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フリーランスの産業翻訳者です。翻訳歴12年。趣味と実益(翻訳に必要な日本語の表現力を磨くため)を兼ねてレビューを書いています。サッカーファンです。
書評、500冊になりました。これからも少しずつ投稿していきたいと思います。
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- 出版社:集英社
- ページ数:504
- ISBN:9784087472226
- 発売日:2000年08月18日
- 価格:760円
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