武藤吐夢さん
レビュアー:
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第二次大戦の戦勝国はドイツと日本というディストピアだ。米国人の卑屈さが笑える。

もしも・・・だったら。
というモチーフのSFは多い。
戦国自衛隊という小説が好きだ。
もしも、自衛隊が戦国時代にタイムリークしたらという話しだ。
本書のもしもは、あの第二次大戦で、日本とナチスドイツが勝利し世界を二分割していたらという話しだ。
ありえないことを書くのがSFである。
本作は、ディック作品の中でも一番評価が高いらしいが
僕にはそう思えなかった。『ユービック』のほうが圧倒的に面白かった。
違和感がある。
西洋人が、易学。つまり占いを本気で信じているという点だ。
何で易学なのかわからない。
たくさんの人が出てきて、少しややこしい。
日本人が、やたらとアメリカの骨とう品を買いあさっている。
だが、ほとんどは最近、工場で作った贋作なのだ。
ここに本物と偽物という命題が発生する
贋作を作っている男のセリフが興味深い
>>本物という言葉に実は何の意味もない以上、偽物という言葉も無意味だ。コルト44口径はコルト44口径さ。
大切なのは口径とデザインであって、いつ製造されたかってのは関係ない。大切なのは・・・彼女に証明書を渡した。
証明書さえあれば、それが最近作られた贋作であっても、この世界では本物として扱われるというのだ。
ある男が手作業で工芸品を作った。
しかし、それは売れない。骨とう品ではないからだ。
店主に日本人は言う。ある男を紹介しようと。その男は、それを工場で大量生産し売る・・・でしょうと
つまり、アメリカ人の作るものなんて、大量生産品くらいの価値しかなく
丁寧な手作業で生み出した芸術としての価値はないという、日本人の侮蔑なのだった。
先に出てきた骨とう品の贋作を高値で買っていた日本人の言葉だ。
だが、その骨とう品を作ったのも、芸術作品を作ったのも同じユダヤ人たちなのだ。
>>俺たちは敗戦国民なんだ。そして、俺たちの敗北は、これと同じように、ひどく微妙でぼんやりしていて、ほとんどそれと気づかないくらいなんだ。実際、進化のメモリーをもう一段階進まなければ、それが起こったことすらわからない。
現実に行われている何か、それは空気みたいなもので見えない。
敗戦した。それによって、何かが決定的に変わった。それは気分だけではない。
何かわけのわからない何かなのだ。
それは日本の戦後にも言える。日本人は、あの敗戦で何かが決定的に変わってしまった。それがいいか悪いかは別にして、この物語の自虐主義的な思考みたいに、何か卑屈になっている。戦勝国であるアメリカの顔色ばかり窺い理不尽も聞くしかなくなっている。
ここで言いたいことは、たぶん、人間次第で本物にも模造品にもなる紙一重な存在
そういう曖昧さだと思う
易学で書いた本が出てくる。
この世界のベストセラーらしい。
ホーソーン・アベンゼンなる作家の『イナゴ身重く横たわる』という本です。
「もしもドイツと日本が戦争に負けていたら」というテーマで書かれているんです。
現実の歴史とは微妙にずれています。
現実と虚構という対比をここで出してきます。
これは贋作のところで見た本物と偽物の対比と構造が似ている。
たくさんの人が、この物語には出てくるのですが、最終的にはバラバラだつた、その人たちが磁石に引き寄せられるみたいに一方向に引き寄せられていきます。
贋作のところで、僕は人間次第で本物にも模造品にもなる紙一重な存在と書いた。
証明書の有無、それもインチキで本物か偽物は判断されるのだから
その真贋は人の目次第となる。
鑑定する目が大切なのだ。
そして、現実と虚構。小説の世界と、小説の中の小説の世界も同じで
結局は、人だと思う。
ナチが天下を取ってようが、アメリカが天下を取ってようが
そんなのはどうでもいい。
最後は人だと僕は思ったのです。
2024 11 4
というモチーフのSFは多い。
戦国自衛隊という小説が好きだ。
もしも、自衛隊が戦国時代にタイムリークしたらという話しだ。
本書のもしもは、あの第二次大戦で、日本とナチスドイツが勝利し世界を二分割していたらという話しだ。
ありえないことを書くのがSFである。
本作は、ディック作品の中でも一番評価が高いらしいが
僕にはそう思えなかった。『ユービック』のほうが圧倒的に面白かった。
違和感がある。
西洋人が、易学。つまり占いを本気で信じているという点だ。
何で易学なのかわからない。
たくさんの人が出てきて、少しややこしい。
日本人が、やたらとアメリカの骨とう品を買いあさっている。
だが、ほとんどは最近、工場で作った贋作なのだ。
ここに本物と偽物という命題が発生する
贋作を作っている男のセリフが興味深い
>>本物という言葉に実は何の意味もない以上、偽物という言葉も無意味だ。コルト44口径はコルト44口径さ。
大切なのは口径とデザインであって、いつ製造されたかってのは関係ない。大切なのは・・・彼女に証明書を渡した。
証明書さえあれば、それが最近作られた贋作であっても、この世界では本物として扱われるというのだ。
ある男が手作業で工芸品を作った。
しかし、それは売れない。骨とう品ではないからだ。
店主に日本人は言う。ある男を紹介しようと。その男は、それを工場で大量生産し売る・・・でしょうと
つまり、アメリカ人の作るものなんて、大量生産品くらいの価値しかなく
丁寧な手作業で生み出した芸術としての価値はないという、日本人の侮蔑なのだった。
先に出てきた骨とう品の贋作を高値で買っていた日本人の言葉だ。
だが、その骨とう品を作ったのも、芸術作品を作ったのも同じユダヤ人たちなのだ。
>>俺たちは敗戦国民なんだ。そして、俺たちの敗北は、これと同じように、ひどく微妙でぼんやりしていて、ほとんどそれと気づかないくらいなんだ。実際、進化のメモリーをもう一段階進まなければ、それが起こったことすらわからない。
現実に行われている何か、それは空気みたいなもので見えない。
敗戦した。それによって、何かが決定的に変わった。それは気分だけではない。
何かわけのわからない何かなのだ。
それは日本の戦後にも言える。日本人は、あの敗戦で何かが決定的に変わってしまった。それがいいか悪いかは別にして、この物語の自虐主義的な思考みたいに、何か卑屈になっている。戦勝国であるアメリカの顔色ばかり窺い理不尽も聞くしかなくなっている。
ここで言いたいことは、たぶん、人間次第で本物にも模造品にもなる紙一重な存在
そういう曖昧さだと思う
易学で書いた本が出てくる。
この世界のベストセラーらしい。
ホーソーン・アベンゼンなる作家の『イナゴ身重く横たわる』という本です。
「もしもドイツと日本が戦争に負けていたら」というテーマで書かれているんです。
現実の歴史とは微妙にずれています。
現実と虚構という対比をここで出してきます。
これは贋作のところで見た本物と偽物の対比と構造が似ている。
たくさんの人が、この物語には出てくるのですが、最終的にはバラバラだつた、その人たちが磁石に引き寄せられるみたいに一方向に引き寄せられていきます。
贋作のところで、僕は人間次第で本物にも模造品にもなる紙一重な存在と書いた。
証明書の有無、それもインチキで本物か偽物は判断されるのだから
その真贋は人の目次第となる。
鑑定する目が大切なのだ。
そして、現実と虚構。小説の世界と、小説の中の小説の世界も同じで
結局は、人だと思う。
ナチが天下を取ってようが、アメリカが天下を取ってようが
そんなのはどうでもいい。
最後は人だと僕は思ったのです。
2024 11 4
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よろしくお願いします。
昨年は雑な読みが多く数ばかりこなす感じでした。
2025年は丁寧にいきたいと思います。
この書評へのコメント
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- 出版社:早川書房
- ページ数:399
- ISBN:9784150105686
- 発売日:1984年07月01日
- 価格:840円
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