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あかつき
レビュアー:
古代の人々には、「土地を捨てる」という選択肢があった。もっと豊かな土地、もっと安全な土地、もっと広い土地を求めて、移動する選択肢があった。しかし、私たちの、次の土地は、もうないのだ。
この本で、筆者はユーラシア大陸を一つのポンプと表現しています。
間氷期には動物を北へ奥深く吸い込み、氷期には南へ吐き出す。そうして、恐ろしく緩やかに吸い込まれ、吐き出され、それを繰り返すうちに少しずつ行動範囲が拡がり、人類は自らはそれとは知らずに全地球上に散らばっていったのというのです。
私は、この表現に酔い痴れました。
太古の伝説の通り、私たちは巨大な動物の上で生活していたのですよ。うっとりしませんか?

約束の地、カナン。絶海の孤島・イースター島。ナスカの地上絵。密林に埋もれたチチェン・イッツァ。
森林や荒野、海に囲まれ、突如として現れる古代遺跡たち。
何故、こんなところに?
もっと住み良い場所があったのではないか?
そう思ってしまう私たちは、きっと、その景色を見誤っているのです。
住みやすい場所、豊かな場所にしか、古代文明は築かれません。
数千年前、数百年前の気候は今とは異なるものだったのでしょう。
カナンには、本当に乳と蜜が流れていたのかもしれません。
地質学的調査から浮かび上がる、本来の古代文明の姿。
そして、その都が盛衰し、文明が移り変わり、人々が消え去った理由。
今より、遥かに旱魃や飢饉が恐ろしかった時代。
ほんの僅かな気候の変化と人間による環境へ負荷が、人口集中地区をあっという間に蝕んでいきました。

いや、それは先進国に住む私の傲慢で、2011年のアフリカの旱魃では、25万人の死者が出たのですから、今もなお気候に私たちは脅かされているのです。
今は技術や援助の力でなんとかなると?
いいえ、古代の人々には、「土地を捨てる」という選択肢がありました。
もっと豊かな土地、もっと安全な土地、もっと広い土地を求めて、移動する選択肢がありました。
しかし、私たちの、次の土地は、もうないのです。
今の土地にしがみつき、最早移動しきれない大量の人口を抱え、消費されゆく資源と共に生きていくしかないのです。

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あかつき
あかつき さん本が好き!1級(書評数:760 件)

色々世界がひっくり返って読書との距離を測り中.往きて還るかは神の味噌汁.「セミンゴの会」会員No1214.別名焼き粉とも.読書は背徳の蜜の味.毒を喰らわば根元まで.

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