応天の門 1




菅原道真は謀反の冤罪で左遷され、日本最強の怨霊になった人物である。しかし、『応天の門』の道真は「怪力乱神を語らず」であり、超自然的に見える現象も説明しようとするタイプである。
灰原薬『応天の門』(新潮社)は菅良道真を主人公とした歴史漫画。道真は朗らかという優等生的な主人公とは…

本が好き! 1級
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歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。




菅原道真は謀反の冤罪で左遷され、日本最強の怨霊になった人物である。しかし、『応天の門』の道真は「怪力乱神を語らず」であり、超自然的に見える現象も説明しようとするタイプである。
灰原薬『応天の門』(新潮社)は菅良道真を主人公とした歴史漫画。道真は朗らかという優等生的な主人公とは…




「どんな理由があれ、騙した方が悪い」と言う。これは現代の消費者問題にも通じる真理である。だます側とだまされる側では、だます側が全面的に悪い。
灰原薬『応天の門 8』(新潮社、2017年)は菅原道真と紀長谷雄が表紙。道真を扱った物語では長谷雄は…




祭りの宴会では毒殺という卑劣な陰謀が進められていた。藤原氏は冤罪を作って政敵を潰す手口が有名であるが、海外から入手した毒物を使った毒殺も用いたとの指摘がある。
灰原薬『応天の門 5』(新潮社、2016年)では朝廷が広く庶民に開放した鎮魂の祭りを開催する。鎮魂の…




関ヶ原合戦後の徳川家康の築城の動きを紹介した歴史書。NHK大河ドラマ『どうする家康』の予習になる。時間をかけて豊臣恩顧の大名の力を弱め、大阪城包囲網を築くことで豊臣家と戦争できる実力を蓄えた。
方広寺鐘銘事件は卑怯な言いがかりであり、徳川家康の汚点になった。関ヶ原の合戦後に家康が完全な天下人に…




明石全登 (守重)は関ヶ原の合戦の直前に宇喜多家は新たに浪人を抱えて戦力を増強しており、「存外丈夫にこれある事に候」と手紙に書いたが、大丈夫と言う場合は大抵大丈夫ではない。
桐野作人『謎解き関ヶ原合戦 戦国最大の戦い、20の謎』(アスキー新書、2012年)は関ヶ原の合戦の疑…




西京神人の先祖は冤罪で大宰府に左遷された道真に奉仕し、道真が亡くなった後に京に戻った人々と伝承される。北野天満宮の創立は怨霊に怯えた藤原摂関家による上からの鎮魂とは別に下からの民衆の動きがあった。
三枝暁子『日本中世の民衆世界 西京神人の千年』(岩波新書、2022年)は中世から現代までの西京神人を…




家康と三成の立場を逆転させたものが七将襲撃事件であった。これによって家康は利を得ているため、家康が糸を引いていたとする謀略説がある。しかし、加藤清正らの暴発であった。
宮下英樹『大乱 関ヶ原 2』(リイド社、2023年)は七将襲撃事件が起きる。NHK大河ドラマ『どうす…




民衆の反発がエネルギーとなった動きとして太平天国の乱と比較される。太平天国の乱は清朝に対する反乱であり、独自の帝国を作ろうとした。これに対して義和団は扶清滅洋を掲げる排外主義であった。
義和団事件の背景には阿片が蔓延し、搾取された阿片戦争後の中国の苦しみがある。阿片戦争はイギリスの不道…




シャフトは多国籍企業という設定であるが、外資というよりも日本企業的な社内政治を感じる。売り物にならないグリフォンに予算を青天井でつぎ込んで開発する点は現代のビジネス感覚では違和感がある。
ゆうき まさみ『機動警察パトレイバー』(小学館)は近未来SF漫画であるが、登場する反体制派は昭和の左…




虎杖悠仁は自分が死ぬことで五条先生が解放されれば「もっと大丈夫」と考える。しかし、全く大丈夫ではなかった。大丈夫は大抵の場合、大丈夫ではない。むしろ大丈夫と考えると大丈夫でなくなる。
芥見下々『呪術廻戦 24』212話「膿む」で虎杖悠仁は、伏黒津美紀が死滅回游から離脱すれば、もう伏黒…




洪秀全は1851年に太平天国の乱を起こした。拝上帝会というキリスト教のプロテスタント系宗教団体を母体と反乱であったが、阿片の蔓延や清朝官憲の腐敗に怒る人民に支持されて勢力を拡大した。
洪秀全は1851年に太平天国の乱を起こした。拝上帝会というキリスト教のプロテスタント系宗教団体を母体…





冤罪についての基本書である。過去の冤罪事例を検証し、国内外の文献を分析する。冤罪についての知識を体系的に整理するが、冤罪を防ぐためにはどうすればいいかという目的を持った書籍である。
西愛礼『冤罪学 冤罪に学ぶ原因と再発防止』(日本評論社、2023年)は冤罪についての基本書である。過…




清末の政治家である李鴻章を描いた歴史書である。個人がタイトルになっているが、個人の頑張りよりも李鴻章が活躍する背景となった清末の社会情勢に着目している。
岡本隆司『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書、2011年)は清末の政治家である李鴻章を描いた歴史書で…




英国では紅茶に砂糖を入れて味わった。砂糖は西インド諸島などのプランテーションで黒人奴隷が作ったものである。阿片戦争は不道徳であるが、背景になった茶の消費も黒人奴隷という不道徳の上に成り立っていた。
祝田秀全『銀の世界史』(ちくま書房、2016年)は世界経済の一体化を語る歴史書である。徳川家康が貿易…




球電(Ball lightning)に取りつかれた研究者の陳が主人公である。既存の常識ではあり得ないと考えられた現象を発想の転換で明らかにしていく中盤は読んでいて高揚する。
劉慈欣『三体0 球状閃電』(早川書房、2022年)は大ヒットSF大作の前日譚。球電(Ball lig…




オロンドリア帝国では書き記された文字を奉じる人々と語り伝える声を信じる人々の戦いが起きた。現代のビジネスではメールで仕事を進めたい人と対面会議で進めたい日との対立がある。
ソフィア・サマター『図書館島』は架空世界のオロンドリア帝国を舞台としたファンタジー小説。著者は米国イ…




藤原氏は冤罪をでっち上げて長屋王らの対立者を葬り、権力を握った。藤原氏は冤罪だけでなく、毒殺という卑怯な手段も用いている。毒殺という卑怯な手段は藤原一族にも向けられることがあった。
船山信次『毒が変えた天平時代 藤原氏とかぐや姫の謎』(原書房、2021年)は毒をキーワードに天平時代…




江戸時代の公務員化した武士とは異なり、中世の武士は主君への忠義は二の次であった。冤罪で滅ぼされた畠山重忠の「謀反の噂があることは、むしろ武士としての名誉だ」が典型である。
呉座勇一『武士とは何か』(新潮社、2022年)は中世の武士の言葉から、そのメンタリティに迫る歴史書。…




家康は南蛮人(スペイン、ポルトガル)と紅毛人(オランダ、イギリス)の相違を理解し、後者を重視するようになる。それはキリスト教以前に安易に「大丈夫」と答えるスペイン人の無責任さに不満があった。
植松三十里『家康の海』(PHP研究所、2022年)は徳川家康の外交を描いた歴史小説である。NHK大河…




足利義政と豊臣秀吉の事例から大規模な土木事業が雇用を創出する面があるものの、その結果として窮民が京都に集まり、劣悪な労働条件下で働くことを余儀なくされた。金を回すことが経済発展とはならない。
東島誠『「幕府」とは何か 武家政権の正当性』(NHK出版、2023年)は幕府の正当性について考察した…