富永太郎詩集





おい、こゝを曲らう、こんな処で血でも吐いたら馬鹿々々しいからな
大正の終わり、若いひとりの無名詩人が、結核菌に蝕まれて、この世を去った。書き残した詩篇はわずかなもの…
本が好き! 1級
書評数:104 件
得票数:1968 票
このサイトの名前どおり「本が好き!」なのですが、それ以上に「酒が好き!」なので、読書より晩酌を優先してしまっています。改めようとは思っているのですが……。
遅読で、遅筆です。
たまに見かけたら、よろしく、一読、してやってください。
(2015年7月9日)





おい、こゝを曲らう、こんな処で血でも吐いたら馬鹿々々しいからな
大正の終わり、若いひとりの無名詩人が、結核菌に蝕まれて、この世を去った。書き残した詩篇はわずかなもの…





精神衛生上、重要なことは?
重松の本は人のいるところで読んではいけない。これは僕と娘の共通した約束事である。約束事というより、…





「たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」 (石川啄木『一握の砂』所収)
書き出し。 山と山とが連なっていて、どこまでも山ばかりである。 この、地獄から湧き出て…





取材する者とされる者とに、密接な信頼関係が生まれていることを感じさせる稀なノンフィクションであり、すぐれた言語論、文化論である。
斉藤道雄という人の書いた本を、二冊読んだ。 『悩む力~べてるの家の人々』(みすず書房 20…





てくてく、ぞろぞろ、てくてく、ぞろぞろ、……
恩田陸の作品を読むのはこれが初めてである。何年か前に古本屋で「六番目の小夜子」を衝動買いしたことが…





すぐれた作品を描く漫画家は、同時にすぐれた画家であるということの証左。
今まで、画集らしい画集など買ったことがなかった。思い起こせばずいぶん昔に、新潮美術文庫版の『ムンク…





フランスBD界異能の二人組、ケラスコエットが織りなすノワールの世界。結構グロテスクです。ふつうの絵本ではありません。お間違えのないように……。
この本に描かれているのは―― 妖精、無邪気、残酷、嫉妬、恐怖、愛嬌、幸福、悲惨、おゆうぎ、…





「怪物と戦う者は自ら怪物とならぬよう気をつけたまえ。あまり長い間深淵を覗き込むと、今度は深淵のほうが君を覗き込む。」(ニーチェ『善悪の彼岸』より)
(実は、以下の文章は、アルベール・カミュ『異邦人』の書評の「番外編」という位置づけのつもりで書き始め…





「歳月人を待たず」(陶淵明)
(2007年に書いた文章です。娘は高校生で、確かまだスマホというコトバもなかった頃です。) …





「五百万円の持参金付の女房を貰ったとて 貧乏人の僕がどうなるものか」(黒田三郎「賭け」より) 貧乏の檻……。
冬。 山奥の旅館の庭先に突如として現れた座禅を組んだままの坊さんの屍体。そして隣接する巨大…





ホラホラ、これが僕の骨だ…… (中原中也「骨」より)
狂骨は井戸の中にいる、と鳥山石燕は記す。はなはなだしきまでの怨みを持つ白骨である、とも。白骨は、な…





「一篇の詩が生まれるためには、/われわれは殺さなければならない/多くのものを殺さなければならない/多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ」(田村隆一「四千の日と夜」より)
この詩人の「帰途」は、こんなふうに始まる。 言葉なんかおぼえるんじゃなかった …





爬虫類の眼ではなく、正視眼で……
(佐藤優のデビュー作です。僕が読んだころの佐藤さんは、まだ現在のようにマスコミに引っ張りだこではなく…





きわめて短い年月ではあったけれど、妻と二人の児をこよなく愛し、守りつづけた、僕の好きな詩人です。
一枚の家族写真がある。 向かって右側に二十六歳の重吉。その左側に、妻のとみ子二十歳。そして…





好きな詩人がいるということ、忘れられない詩があるということ、それはたぶん、そうでない人よりは、ほんの少しだけ、幸せなことなのかも知れない。
この詩人の名を知ったのは二十歳を過ぎてまもなくだったということはかろうじて憶えているが、この詩人を…





題名を見てすぐに、手塚治虫のW3(ワンダー・スリー)を思い浮かべたのは僕だけでしょうか(笑)。池井戸潤のなかで、いちばん好きな作品です。6年ほど前に書いた拙文ですが、よろしければ、どうぞ。
2002年1月、横浜市内で走行中の大型トレーラーの左前輪が脱落し、歩道を歩いていた母子3人を直撃す…





「酒神バッカスは、海神ネプチューンよりも多くの人をおぼれさせた。」(トマス・フラー:17世紀イギリスの聖職者、歴史家)
これは、開高健が「二日酔い」にまつわる話を集めて編集した、酒好きには切実でありながらまったく楽しい内…





蜘蛛が付く題名ですぐに思い浮かぶ小説といえば、芥川の『蜘蛛の糸』、プイグの『蜘蛛女のキス』しかなかったけれど、この本を読んで、またひとつ増えました。
「あなたが――蜘蛛だったのですね」 この冒頭の一行から引き込まれてしまった。いや、引きずり込…





う~む、これぞ、職人芸。
7年前の冬のこと―― 我が家の一人娘は、京極にハマっている。『姑獲鳥(うぶめ)の夏』に始まる…





オソロシイ題名だけど、深い内容です
5年前の夏のこと―― 「あ、京極だ。」とつぶやいて、娘は平積みになった本の前でしばらく立ち止…