バンド・デシネ 異邦人





カミュの『異邦人』が、バンド・デシネになりました。作者のジャック・フェランデズはすばらしく質の高い色彩感覚の持ち主だと思います。そして、カミュの最良の理解者のひとりだ、とも。
表紙絵―― 空を見上げながら、アルジェの砂浜をムルソーが歩く。 その横顔は、来たるべき不幸の予兆…
本が好き! 1級
書評数:104 件
得票数:1968 票
このサイトの名前どおり「本が好き!」なのですが、それ以上に「酒が好き!」なので、読書より晩酌を優先してしまっています。改めようとは思っているのですが……。
遅読で、遅筆です。
たまに見かけたら、よろしく、一読、してやってください。
(2015年7月9日)





カミュの『異邦人』が、バンド・デシネになりました。作者のジャック・フェランデズはすばらしく質の高い色彩感覚の持ち主だと思います。そして、カミュの最良の理解者のひとりだ、とも。
表紙絵―― 空を見上げながら、アルジェの砂浜をムルソーが歩く。 その横顔は、来たるべき不幸の予兆…





「何がどうなろうと、たいしたことやあらせん」~大河ロマン『流転の海』第二部です。
熊吾は家族を連れて大阪から故里の愛媛に帰る。 伸仁、三歳。 父はたっぷりとひとり息子に愛…





輝さんの『流転の海』。執筆開始から37年の時を経て、昨年、全9巻完結しました。折りにふれて買い求めていた文庫本、途中から積ん読状態でしたが、あらたに、第一部から読み始めました。
およそ20年ぶりの再読。 熊吾と房江、そして生まれたばかりの虚弱な伸仁。 この三人の家族…





この作品は、原民喜が遺した生涯で唯一の翻訳作品です。翻訳というより翻案であり、正しくは、子供たちのために書き直した<再話>です。しかし僕には、民喜が書き上げたうつくしい<遺書>のように思えました。
1951年6月、主婦の友社から『少年少女名作家庭文庫』の一冊として「ガリバー旅行記」が発刊された。原…





« J'ai peur, dans trois jours je serai fusillé par les soldats de Dieu »「怖いな。三日経てば、ぼくは神の兵隊たちに銃殺されるんだ。」
過日、昔よく読んでいた小林秀雄全集の内の一冊をパラパラとめくっていたら、懐かしい作品が目に止まった。…





ときおり目頭を押さえながら読了して胸に湧いたものは、素晴らしい書物を読み終わったときにおとずれる、あの、ふるえるような幸福感でした。ぎごちなく恥ずかしそうに頬笑む民喜の姿が目の前に浮かんできます。
(何度試みても、この評伝の素晴らしさを表す言葉が出て来ません。たとえ出てきたとしても、すべて枯れ枝の…





「かけかへのないもの、そのさけび、木の枝にある空、空のあなたに消えたいのち。/はてしないもの、そのなげき、木の枝にかへつてくるいのち、かすかにうづく星。」(原民喜「かけかへのないもの」)
昭和24年4月、死の2年前、民喜はこんな文章を雑誌に寄せた。 (前…





「もし妻と死別れたら、一年間だけ生き残ろう、悲しい美しい一冊の詩集を書き残すために……」(原民喜「遙かな旅」より)
僕がはじめて原民喜という名前を知ったのは、角川文庫の『世界原爆詩集』という本に接したときだった。十…





「人は自分でつちかってきたやり方によってのみ、困難な時の自分を支えることができる」(本書21頁)
この本の書名は、石川啄木の短歌から採られている。 友がみなわれよりえらく見ゆる日よ…





できるならば、収録されているすべての作品を、まるごとここに書き写したい。そんなできないことを思い立たせるうつくしい詩集です。
さがされて、いたい。 うまれて、しまった以上。 いやされることなどのぞむべくも…





ジャン・コクトーの原作を萩尾望都が見事な芸術作品に仕上げた漫画です。小説、映画とともに、僕の大好きな作品です。
「ダルジュロスを見なかった?」 雪つぶてが飛び交うなか、ポールはダルジュロスをさがす。 …





「目が世界について語ってくれないなら、ほかの方法をつくりださなくてはならない。世界は本を通じてひらかれるはずだ。」
(承前)「そのためには、文字を書く新しい方法が必要になる。ほかに思いつく人がいないなら、それはぼくの…





十年前、九十七歳で死去した今日泊亜蘭が1962年に発表した、日本初の長編SFと呼ばれている作品。僕にとっては、小松左京『果しなき流れの果に』と並ぶマイ・フェバリットSFの頂点に立つ作品です。
水原宇宙軍少佐兼軍医が火星から帰還した時、地球では異変が起こっていた。 が、それはさておき…





1983年藤原新也38歳の時に出版した写真集。衝撃的な写真もありますが、じっくりと写真を見つめ、コメントを噛みしめながら頁をめくっていくうちに、この本を開く前と少し違った自分が見えてくるかと思います。
Mémento-Mori 死を想え (三十五年前)扉をめくると真っ先に眼に飛び込んできた文…





何度でも立ち止まって/また何度でも走り始めればいい/必要なのは走り続けることじゃない/走り始め続けることだ (竹原ピストル「オールドルーキー」)
佐藤泰志は「東京」を「首都」と書く。「首都から来た」「首都へ行く」等々。単なるレトリックではなく、…





「……終わりはまた始まりでもある。人間の持つあらゆる瞬間が、その瞬間ごとに現在を失って思い出にすり替わってゆく。私たちは永遠に現在を生きられない。永遠に記憶を生きるのみだ。」(本文より)
「暗闇に神の光り輝く指があった。指先から乳白色の滴が虚無に落ち、私が生まれた。虚無は暖かで私は闇を…





永塚幸司、清水正一、天野忠、瀬沼孝彰、相良平八郎、氷見敦子、長岡三夫、南信雄、谷澤辿、征矢泰子、本多利通、寺島珠雄、佐藤泰志――以上、十三名の生と詩と死。静かな感動が胸の奥からひろがってきます。
本の帯にはこう書かれている。 この本に登場する十三人の詩人は、「読売文学賞」を受賞して天寿をま…





「人がもう一人の人間を救うことなど、できるかね。そんなことは、できはせん。私は人間ば救うため、医者になった男だが……この五十年でやったことは……人間ば殺すことだけだった……」(本文、勝呂の述懐より)
遠藤周作は、 『海と毒薬』 を上梓した翌年、『おバカさん』という題名の小説を新聞に連載した。昭和3…





「赤黒くよどんだ水に漬けられたこの褐色の暗い塊。俺が怖ろしいのはこれではない。自分の殺した人間の一部分を見ても、ほとんどなにも感ぜず、なにも苦しまないこの不気味な心なのだ。」(本文、戸田の述懐より)
遠藤周作の文学、それも最初期の作品を読んでいると、僕は僕のこころの闇のなかに知らず知らず深く沈み込…





アルジェリア人作家ヤスミナ・カドラが、動乱の本国を舞台に、ひとりの人間の成長の跡を辿った物語です。470頁に渉るその一頁一頁の文章がたいへん情感に溢れ、深く僕のこころに沁み込んだ作品です。
1938年、北アフリカ、フランス領アルジェリア。 マヒエディヌ・ユネス、十歳。 「私…