村田エフェンディ滞土録




民族も宗教も異なる人々の織り成す日々は、なんと刺激的でユーモアに富んでいたことか。
不思議なタイトルである。「エフェンディ」とは学問を修めた人物への敬称とのことだが、滞土録の「土」は……




民族も宗教も異なる人々の織り成す日々は、なんと刺激的でユーモアに富んでいたことか。
不思議なタイトルである。「エフェンディ」とは学問を修めた人物への敬称とのことだが、滞土録の「土」は……



なんともシンプルな「呼鈴」の仕組みから一歩も離れることなく、磁石や電流の根本原理から相対性理論、量子力学にまで至り、そしてぐるりと呼鈴に戻る。鮮やかな物理サーカスを見るような一冊だ。
端子に電池をつなぐと、コイルに電気が流れ、槌が鈴を打ち、音が出る。なんともシンプルな「呼鈴」の仕組み…





空海がユニークなのは、それを単に「語り得ない」内的体験にとどめることなく、それを徹底して言葉によって分節し、体系化したことにある。
作家、高村薫が「21世紀の空海の肖像」をたどる一冊。冒頭、東日本大震災の被災地における信仰と、被災寺…



この手の本には違和感を感じることも多いのだが、本書は大きな「納得感」を感じた一冊だった。
著者はネットライフ生命の創業者で、希代の読書家としても知られる。その人の仕事術とはどんなものなのか、…





目が見えないだけなら、声は聞こえる。耳が聞こえないだけなら、文字は読める。でも、どっちも閉ざされてしまったら、人はどうやってコミュニケーションを取るんだろう。
盲ろうの東大教授、福島智の半生と思想を追ったノンフィクション。 目が見えないだけなら、声は聞…





現代の日本のような国家や社会のほうが、実は世界史的にはイレギュラーなのである。
最初は、単に「ソマリランドと室町時代が似てる!」というネタを広げただけの一冊かと思っていた。だが、読…




「教訓本三冊」のうちの一冊として刊行された、ゴーリー初期の名作。そもそもこの本を「教訓本」というところが、ジョークにしてはブラックすぎる。
「教訓本三冊」のうちの一冊として刊行された、ゴーリー初期の名作。 そもそもこの本を「…





チャーミングな円空仏の写真や井上のスケッチはとっつきやすいが、その奥はとてつもなく深い。井上の漫画『バガボンド』にも通じる透徹の一冊である。
『SLAM DUNK』『バガボンド』の漫画家・井上雄彦が、江戸時代の仏僧・彫刻家、円空の作品をもとめ…





驚くべき小説。「ろう者」の世界をここまでのディテールで描き切った小説は、寡聞ながら他に知らない。
主人公は警察の事務職を辞め、手話通訳で生計を立てることにした男である。だが、手話に対する男…




文楽パワーがみなぎる一冊。ポップでライトな雰囲気のなかに垣間見える、その底知れぬ奥深さ。
こないだ文楽をテーマにした小説『仏果を得ず』を読んだが、いわば本書はそのエッセイ版。演目の解説から楽…




江戸から受け継ぎ、現代へとつなげる、悪と負の、恐怖と異形の物語。
表題作のほか「八幡縁起」「修羅」を収める。 どれをとっても、おそろしい小説である。とりあえず、…




絶品紀行文。歩けば歩くほど、見えてくるのは日本の裏側を流れる歴史の文様。
こういう本を読むと、観光客でごった返す名所旧跡なんぞに行くのがバカらしくなる。 著者が訪れるの…




巧すぎてため息ひとつ、切なすぎてため息ひとつ。著者の生家をモデルにしたというが、こんな家でよくぞ育ち、よくぞそのことを書き尽くしたものだ。
舞台は戦前の高知。15歳で渡世人の夫、岩伍に嫁いだ喜和は、芸妓紹介業という商売に抵抗を感じつつも夫に…




「正しくないけど」じゃなく「正しくないから」役に立つのです。
悩み相談を持ちかけた時、一番腹が立つのが、やたらに正論をぶつヤツだ。 「こうあるべき」で問題が…




一人の人に、ここまで底知れない魅力を感じたことはない、かもしれない。「先生」こと色川武大(こと阿佐田哲也)のやさしさに、心がふわりと包まれる。
若き日の著者と「いねむり先生」こと色川武大/阿佐田哲也との交流を描いた一冊。 読めば読むほど、…




独力で歴史をもった文明は、中国と地中海ヨーロッパのみ。洋の東西でこれほど違う歴史観の根源がわかる、目からウロコの歴史本。
E・H・カーの名著『歴史とは何か』とほぼ同じタイトルだが、中身は基本的に別モノ。かなりエッジの利いた…




深沢七郎、円熟の7編。特に表題作は、読んでいて背筋が「ぞわっ」とする傑作だ。
本書は深沢七郎の短編集である。表題作に加え「秘儀」「アラビア狂想曲」「をんな曼陀羅」「『破れ草子』に…




文楽が好き! という著者の熱中がストレートに伝わってくるので、読んでいて気持ちがいい。芸の世界の奥深さにまでしっかりと手が届いている。
タイトルだけ見て「仏教小説」なのかと思っていたら、読んでびっくり、なんとこれは「文楽小説」なのであっ…




審判は「2人で3か所以上」を同時に見なければならないという。無理である。なのに誤審率はおどろくほど低い。ピッチの上では毎日のように「奇蹟」が起こっているのだ。
審判にもいろいろあるが、本書で取り上げられているのはサッカーの審判。しかし、その難しさや醍醐味は、た…




オトナのためのアンデルセン。でもコドモにも読ませたい。
思えば、アンデルセンを「まともに」読んだことって、今までなかったかもしれない。 子どもの頃は「…