ここはとても速い川

養護施設で暮らす少年の一人称で語られる物語。
主人公は小学五年の少年、集。 物語は、集の一人称で語られます。関西ことばの独り語り。目の前で起きて…

本が好き! 1級
書評数:562 件
得票数:14095 票
読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

養護施設で暮らす少年の一人称で語られる物語。
主人公は小学五年の少年、集。 物語は、集の一人称で語られます。関西ことばの独り語り。目の前で起きて…

降りつづく雨。あふれる川。沈む村。逃げてしまったスプリーマ(国家最高指導者)。人々を救うために奔走するのは、15歳のメイドとスプリーマ(国家最高指導者)の夫。
架空の国、アフェイリア国が物語の舞台です。 アフェイリア国には、もう何か月も雨が降り続いていま…

長崎奉行所通辞と、ポルトガル人の母から生まれた娘の恋。
1971年発表の長編歴史小説。 舞台は長崎。時代は、江戸時代初期の寛永年間。 主人公の上…

第165回(2021年上半期)芥川賞受賞作。ある小さな島に、ひとりの少女が流れ着く。彼岸花の咲き乱れる海辺に。少女は記憶をなくしていた。
少女を助けてくれたのは、島の少女・游娜だった。 游娜は、記憶をなくした少女に宇実と名づける。宇実は…

お金はある愛もある。理想の家族の底に潜む狂気—— 衝撃の児童文学。
児童文学で殺人を書くのは、はばかられる。 ましてや、家族間の殺人とか、理由なき快楽殺人なんて。 …

黒い髪、少し寄り目の黒い瞳――テレーザは、たちまち恋に落ちた。
14歳の夏、わたし(テレーザ)は、15歳の少年ベルンに出会った。 テレーザは、8月を祖母の家で過ご…

日常からちょっとそれたところで、出会った人、起きたことをつづり、人生の深淵をふと垣間見る。そんな15の短編集。
この本を、kindleの端末にダウンロードしたのは、2015年のセンター試験の直後だった。 所収の…

キノコを食べた美少女が、毒にあたってクルクル舞う話? ではなくて、茸の姫の舞を、若者がうっとりながめる話。
杢若は、町の立派な医者の家に生まれたが、白痴だった。母親は、狂女で、嵐の夜に人魚になって死んだ。ほど…

泉鏡花の関東大震災体験記。
大正十二年九月一日午前十一時五十八分、東京が激震に見舞われた。 泉鏡花の住む番町、麹町界隈からも、…

ひととおり読み終えたあとに、パラパラと拾い読みすると、ああこんなことも書いてあったんだと感動する。良い本に出会えたと感謝している。
カリブ海に浮かぶ、雨林の繁った小さな島、騎士島。 そこに、白人の富豪の別荘があった。 別荘の主人…

四十歳、独身。女中の竹さんと二人暮らし……
鴎外が小倉に単身で赴任していたのは、明治三十二年から三年ほど。 三十七歳から四十歳ぐらいまでの間で…

1961年2月、右翼少年が中央公論社社長宅に押し入り、家政婦さんを殺害、社長夫人にも重傷を負わせるという事件が起きた。発端となったのは「中央公論」に掲載された、深沢七郎の小説「風流夢譚」だった。
その後、「風流夢譚」は、発禁になったわけではないのに、どこの出版社からも忌避され、書籍化されることも…

言葉には不思議なちからがある。
小学一年生のつばさは、三月生まれで、しかも早産だった。 だから、一年生の中でもとりわけ小さい。 …

結の家族は、おかあさんが作るパッチワークに似ている。神様がめぐり合わせてくれたパッチワークだ。
四年生の結(むすぶ)が通っている学校には、「二分の一成人式」というのがある。 二十歳の半分、十歳を…

明治末か大正のはじめ。作者が南北朝時代の歴史小説を書くために吉野地方を訪れたときの話。
はじめのうちは、後亀山天皇とか自天王とか、歴史の話ばかり。 歴史小説の創作ノートみたいと戸惑いつつ…

盲目の男が語る。死ぬときはお市の方様といっしょに……
盲目の男のひとり語りの形式で書かれている。 その男は、天文21年、近江のくに長浜に、貧しい百姓…

怨んだり恨まれたり、あれこれも怨霊のせい。そんな時代に国母となり、藤原氏を支えた彰子の物語。
藤原道長の長女・彰子は、12歳のときに父の意志で入内する。 一条天皇との婚姻である。父の道長には、…

シニョーレは、深い孤独の影をまとっていた。
1968年に発表された作品である。 作者の歴史三部作(「安土往還記」、「嵯峨野明月記」、「天草の雅…

著者のマイケル・ポーランは、園芸家であり、ジャーナリスト。アヘン、カフェイン、メスカリン。三つの植物由来の化学物質に、多様な切り口から挑んだ一冊。
アヘン は、ケシの実からつくる。 1996年ごろのこと。著者は、地下出版された『大衆のためのアヘ…

若いアメリカ人の共同の家で、虎や鷹男と暮らしていたころが、”僕”の青春の黄金期だった――
1963年、大江健三郎28歳のときの作品である。 主人公の”僕”は、二十歳の仏文科の大学生。高…