遠い約束





「ミステリが二度のご飯より好きなことは確認されたが、三度のご飯に交替えられるかどうかは未確認」(210頁)
2022年8月末、作家・光原百合、逝去。よく親しんだ作品の作家が亡くなるのは、なんとも落ち着かない…

本が好き! 1級
書評数:696 件
得票数:8276 票
学生時代は書評誌に関わってました。今世紀に入り、当初はBK1(現在honto)、その後、TRCブックポータルでレビューを掲載してました。同サイト閉鎖から、こちらに投稿するようになりました。
ニックネームは書評用のものでずっと使ってます。
サイトの高・多機能ぶりに対応できておらず、書き・読み程度ですが、私の文章がきっかけとなって、本そのものを手にとってもらえれば、うれしいという気持ちは変わりません。 特定分野に偏らないよう、できるだけ多様な書を少しずつでも紹介していければと考えています。
プロフィール画像は大昔にバイト先で書いてもらったものです。





「ミステリが二度のご飯より好きなことは確認されたが、三度のご飯に交替えられるかどうかは未確認」(210頁)
2022年8月末、作家・光原百合、逝去。よく親しんだ作品の作家が亡くなるのは、なんとも落ち着かない…




この3人の女子高生が案内する歴史探訪ムックなんて企画はできないかしら?
初めて読んだ高井作品は『漂流巌流島』。それがあまりに面白く、その後もいろいろと手を伸ばすことになり…




「お前が手塩にかけて作った命の結晶とも言うべき模型たちを、さて、どうしたと思う?」 「・・・どうしたんですか?」 「アホ。捨てるしかなかろうが。ゴミ箱行きよ。」(主人公と教頭の会話、168頁)
ウラスジは次のようにはじまる。 「いつもより遅めの通勤途中、僕は駅のホームで偶然、高校の同級生・…




私の「ほのぼの」はどこへ行った?
秋葉図書館とその司書の日々を描いた『れんげ野原のまんなかで』の続編です。「ほのぼのときどきミステリ…




めぐりめぐる創造性の世界
ここ数年、専門書でも一般書でもなんとかラーニングの本が増えている。一般向けにAIについて書かれた本…





2つの事件の類似性をいくつも挙げることができる。そして、それと同じくらい違いを挙げることも簡単だ。
2022年7月にある銃撃事件が起こった。単独犯のテロリストが政治家に対して引き起こした事件として、…




「子どものころは、それが家族のかたちであり、決して逃れられないものだと思っていた。(中略)気づくと、みんな、ばらばらになっていた。かつて私が家族だと思っていたものは、もはや存在しない。」(208頁)
主人公は、夫・律と小学生の息子・蓮の3人で暮らす「働く女性」の一人・橙子。職業は臨床心理士でクリニ…




「おれたちの夏休み、取り戻したくないか」 (中略) 「こんなつまんない夏休みのまま終わって、おまえら本当にいいのかよ。楽しい夏休みを味わいたくないか」(隼人、13頁)
「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズで一躍その名を広く知られるようになった作家の、渾身の1冊といっ…





「この本に書いてあることに納得できなかったり、あてはまらない事例があったら、お互いに対話して、お互いに変わっていけばいいことです。」(513–514頁、「おわりに」より)
2011年の東日本大震災での福島原発の大事故を契機に、反原発デモが大いに盛り上がった。すでに10年…




見返しからトビラまで、おそらくは都内大田区の写真が使われている。書名通りの灰色が強調された町の姿は手にとる者の心をざわつかせる。
本書の「売り文句」は、著者が20年以上前に目にして以来、ずっと気になっていたある記事を元にして小説…




「《可愛い子供を連れている大人は、とりあえず善人に見える》という謎の理論が、ここでも実証されたわけだ。」(258頁)
実は先日、初めて南武線に乗った。今までなかなかご縁がなかったのだけれど、真新しい駅舎と車体で「新線…




「しかし、善意がいつも好結果につながるわけではない。」(92頁)
広田弘毅――東京裁判でA級戦犯として問われ、文官として唯一絞首刑となった人物として有名となってしま…





「その理由が分からないまま、京都の街に何かを激しく求めていた」(45頁)
本書を原作とした映画を見てからほぼ20年が経ってしまいました。そのあとに原作を手にとったのですが、…





2022年1月放送のNHKのドラマ「わげもの」を見ていて驚いた。江戸末期の長崎を舞台に、座敷牢の格子ごしに英語を教え学ぶシーンが再現されていたのである。
座敷牢から英語を教えるのは米国人ラナルド・マクドナルド、学ぶのは小池徹平さん演じる森山栄之助をはじ…





「書くんだよ・・・きみは遠慮せずに書きなさい」(344頁)
辻真先、著名な作家として名前は知っているけれど、さほど多くの作品は読んではこなかったです。本書が刊…





絶対音感に絶対はない。
本書刊行のときは、本格的なサイエンス・ノンフィクションといったふれこみだったようにおぼえている。あ…




なんとも語呂のよいタイトルが印象的な1冊です。店頭ですぐおぼえらえるタイトルというのも小説の重要な特徴ではないでしょうか。ただ「社会」はどこへ行った?
小学生から中学生を対象としたJSS学習塾を舞台に「誘拐」騒動が起きます。小学6年生の山下愛子を誘拐…




「本当はまだ自分は高校生で、卒業してからの十六年間は長い夢。病気もなにもかも悪い夢だったら・・・。そんなことをふと考える。」(遼賀、243頁)
本書の筋を簡単にまとめれば、33歳の働く独身男性・笹本遼賀が「がん」の宣告を受けてからの約1年半の…





「世の職業人でいちばん自由に読書ができるのは、もしかすると、研究者でもなく、評論家でもなく、勤め人かも知れません。」(223頁)
『野蛮な図書目録』以来、〈狐〉の読者なのです。ただ、彼の書評を読むために『日刊ゲンダイ』を手にとる…





「ひまつぶしに」と手にとった1冊。上巻だけでも本文600頁弱と、とても沢山つぶせそうでした。ところが、とても面白く、つぶすとかどうとか、それどころではなく楽しみました。
様々な日本史にかかわる既出のエッセイを集めたものかと思ったら、どうやら「書き下ろし」です。どのよう…