鈍色幻視行





「君らが充実させたいと願っている君らの人生。その中に真実はないぞ、と。(中略)人生の中に真実はないのさ。/はっきり言おう。/真実があるのは虚構の中だけだ。」(武井京太郎、511頁)
クルーズ船を舞台にしたミステリーと書くと、なんとも旅情をかきたてる感じがしますが、舞台設定はかなり…

本が好き! 1級
書評数:693 件
得票数:8236 票
学生時代は書評誌に関わってました。今世紀に入り、当初はBK1(現在honto)、その後、TRCブックポータルでレビューを掲載してました。同サイト閉鎖から、こちらに投稿するようになりました。
ニックネームは書評用のものでずっと使ってます。
サイトの高・多機能ぶりに対応できておらず、書き・読み程度ですが、私の文章がきっかけとなって、本そのものを手にとってもらえれば、うれしいという気持ちは変わりません。 特定分野に偏らないよう、できるだけ多様な書を少しずつでも紹介していければと考えています。
プロフィール画像は大昔にバイト先で書いてもらったものです。





「君らが充実させたいと願っている君らの人生。その中に真実はないぞ、と。(中略)人生の中に真実はないのさ。/はっきり言おう。/真実があるのは虚構の中だけだ。」(武井京太郎、511頁)
クルーズ船を舞台にしたミステリーと書くと、なんとも旅情をかきたてる感じがしますが、舞台設定はかなり…




「この優れた新聞記者が逮捕されたというニュースは、東京のドイツ人社会を呆然とさせ、およそ信じ難いことであると受け取られた。」(プロローグ「大使と記者」、上巻・3頁)
「おそらく日本一有名なスパイ」についての研究書である。著者は英国の歴史家で、一般向けを意識した評伝…




「君もいつか、ちゃんと、しあわせになりなさい。」(奥寺先輩、241頁)
有名な男女のすれ違いドラマの名作のタイトルを借りた、すれ違いと出会いを描く物語。2016年公開の同…





「『クアトロ・ラガッツィ! スー、アル・ラヴォーロ(四人の少年よ! さあ勉強だ)』(下巻、446頁)
下巻が「つらい読書」になることは、「史実」からわかりきっていたことではあるが、「こんなにも・・・」…




「どんなにつらくて苦しいお話でも、必ず誰かが助けに来てくれて最後には救われる。それって、現実じゃありえないじゃないですか。そんなの、読んだところで仕方がないです。」(三崎さん、しおり先生へ、239頁)
数年前でしょうか、ツイッター上だったと記憶していますが、夏休み明け直前に「辛い時は図書館においでよ…





「私はずいぶんと旅をしてきた。でもこれでほんとうに私がやりたかったこと、知りたかったことが書けた。この主人公は私と無縁ではなかった。」(プロローグ、19頁)
長い、とにかく長い。文庫になっても上巻だけで570頁をこえ、上下を合わせたら1000頁超。2003…





「当然だけど、あたしたちにも、あんたたちぐらいの頃があったのよ」(初江ママ、11頁)
『海街ダイアリー』を引き継いではじまった『詩歌川百景』。第1巻だけを読んで「わかった」気になってい…




「屋根の下は意外に広い。屋根を見上げると包まれるような懐の深さに不思議な安堵感を覚える。橋全体が呼吸しているようだ。」(愛媛県内子町の「田丸橋」、152頁)
「近代化遺産」という言葉が一般にも広がって20年以上は経っただろうか。それまでは、個々の建築・建造…




「本当の気持ちなんて、本人にだって分からないこともある」(駅長から倉持君へ、「ほおずき」、247頁)
ある想いをかかえている人の前に、ある駅のプラットホーム上に、とある高校の夏の制服姿の少女が現れて・…




「戦前の絵はがきは、時空を超えた旅行に私たちをいざなうツールである。小さな『どこでもドア』なのだ。」(「あとがき」より、211頁)
著者は建築史を専門とする研究者。広く都市文化なども扱うが、本書ではそうした議論の参考資料としてきた…





「石は動く 私たちが思っている以上にな」(凪さん、47頁)
簡単にまとめてしまうと、女子高生と女子大学院生が案内する、「マンガで読む鉱物の世界入門」です。明ら…





1986年、ハレー彗星地球最接近(の前)のときのことをおぼえていますか?
前回、ハレー彗星が地球に最接近したのが1986年、本書の刊行が1984年。最接近の2年も前に刊行さ…




「私の所蔵する遺品の中に、漱石先生の鼻毛がある。」(18頁)
内田百間の名前を知ったのは、どこかで紹介されていた「夏目漱石の鼻毛のついた原稿をもっている」という…





「本書の主題は、個々人と集団ーそこには国家も含まれるーが願望をかなえようとする意識についてである。」(日本語版への序文、冒頭、7頁)
『豊かな社会』で有名な異端派経済学者ガルブレイスの1992年の著作である。恥ずかしながら同時代にそ…





「一度出てみたかったの 今なら出られる気がして・・・あゆりちゃんは私にできない事をするよね」(〈窓から教室の外に出てしまった〉美音から、あゆりへ 109~110頁)
本格城郭探訪漫画、「収穫と飛躍」の第3弾です。 第2巻で初の夏合宿を松本城で敢行した城址散策部…





「どこで、どうやって生きていくのか、うちは自分で決めたい」(本書冒頭、6頁)
出版社PR誌に掲載されていた、作者の「自著紹介」で興味を惹かれた1冊です。 映画「時をかける少…





大ヒット作『昭和史』に続く、著者の名調子が「聞ける」一作です。
親本は2008年、2012年に文庫化。文庫版にしてほぼ500頁ですが、その名調子で読者を飽かせるこ…





「目立つことはなくても際立つことはなくても、赤や青やピンクの雪にはなれなくても、それでも、雪には雪のなりたい白さがある」(232頁)
本書の表紙イラストは、表題作「雪には雪のなりたい白さがある」に即しています。20代半ばとなった女性…




「ああ・・・ いい! 少年が男になる瞬間!」(下巻、35頁)
2014年の作品。著者の長篇本格デビュー作のようです。数年前に映画化されていますが、未見です。 …





思っている限り、人は生き続ける。/忘れること、忘れられることを恐れながら、それでも生きていこう。/私はいま、そんな風に感じている。 (著者の最後の言葉、475頁)
ここ数年、本作の著者の新聞連載をよく読むようになり、「知ってるつもり」の1人であったものの、実は彼…