フランスの作家、ジョルジュ・シムノンのメグレものを久しぶりに読んだ。hackerさんがよくシムノンを紹介していたのと、これが河出文庫だったからだ。文庫が出たのは1977年だが原書が出たのは1947年だったらしい。
時代は第二次大戦直後だろうか。フランスから米国へはまだ船で渡航している。Wikipediaによれば戦後のシムノンは対独協力者の疑いがあって、一時北米に逃げていた。この時、ニューヨークをよく訪れていたという。この小説の舞台がニューヨークなのもそのためかな。
小説ではメグレは既に警察を退職しており、元警視と呼ばれている。そして別荘で引退生活を楽しんでいたのだが、まだ大学生の青年が突然訪問してきて、米国にいる父親の様子が変なので帰国するが同伴して欲しいという。ニューヨークについてから分かるのだが、青年の父親はジュークボックスの事業で成功した大金持ちだった。
ところが、メグレがニューヨークの港についてみると青年は行方不明になり、父親に会いに行ってもまともに相手にされない。何かが異常であると感じたメグレは他国の地なのに勝手に捜査を始める。
そうはいっても一人では大したことが出来ないので、昔の事件で協力したニューヨーク警察の刑事やよっぱらいの私立探偵に助けられながら、裏に隠された30年前の殺人事件の真相に迫って行く。
メグレはブロードウエイにある庶民的なホテルに泊まって、ブロンクスのフィンドリー街へ手がかりを求めて行ってみる。その辺りはハーレムに近く、目的のアパートは貧しいイタリア移民が暮らすスラム街だった。翌日同じ場所を再訪すると殺人事件の現場に遭遇し、裏で誰かが動いているのを確信する。
実は青年の父親の大富豪は若い頃にフランスから友人と二人で米国にやってきた音楽家で、このイタリア人街に住んでいたらしい。その頃の事情を知っている老人を探していたのだが、どうやら殺されてしまった。
ところで、このタイトルを選んだ理由の一つは舞台がニューヨークだということだ。メグレ警視が活躍するのは普通はフランス国内で主にパリ市内だと思うが、僕はフランスにもパリにも行ったことがない。でもニューヨークなら仕事で2,3回立ち寄っている。
でもこの本に載っているマンハッタンの地図はちょっと不正確だ。セントラルパークの南側しか書いていないからブロンクスやフィンドリー街の位置が分からないし、5番街の西側になるはずのエンパイアステートビルが5番街の東側に書いてあるし、5番街の名前が載っていない。
まあ、ネットで地図を見れば読むのに大した不便はないのだけれど。
この書評へのコメント