動物行動学者であり、白と黒の長毛のネコのスプラッジをはじめスプラッジの姪の娘ルーシー、ルーシーの娘リビーといった飼い猫の主人でもある著者が猫の行動と歴史をまとめています。
やはり動物行動学者ともなれば、愛する飼い猫も観察する機会が多いだけに分析の対象になるということだろう。
「ネコの目はわたしたちに別の世界を見せてくれる窓だ」というアイルランドの伝説が興味深い。
イヌと並んで人間のコンパニオンであるネコは、身近にいる存在にもかかわらず神秘的な要素を保ったままだ。
ネコはペットとして飼いやすいが、野生の原点を忘れることなく一万年前の祖先と同じ暮らし方を今でもすることができるそうだ。
ネコは野性的な行動を保ちながらも人間と生活するように適応してきたが、人間がネコに与えた最初の役割は害獣駆除係だった。
9500年前くらいのキプロスに移住してきた人間と共にネコが船で連れてこられたであろう考古学的な証拠があることから、その頃までにはネコがネズミ対策として飼われていただろうことがわかるそうだ。
そして人間に慣れて一緒に住むようになったネコはコンパニオンの地位も獲得する。
続いてネコの進化の歴史と、エジプトに壁画に描かれた猫の姿が紹介されています。
エジプトのネコのミイラは神殿に奉納する生贄として特別に飼育されていたものだというのはちょっとショックだったが、ミイラになったネコはすべてサバ模様というのは勉強になった。
そしてエジプトから広がっていったイエネコですが、異教信仰と結びついてしまったために中世になって迫害されるようになってしまった。
それでもネズミ捕りの能力は重宝され続けたようで、ネコが必要な水分は肉から吸収できる能力とビタミンCを必要としないことから船の生活にとても適合したそうです。
ネコの能力については、目の構造やすばらしい聴覚、平衡感覚と落下した時の宙返り能力、そして突出してすぐれている嗅覚について見ていきます。
ゴロゴロ昼寝している猫を見る限りこんなハイスペックな能力って必要なのかと思ってしまうくらいだ。
さらにネコの認知能力や学習能力についても見ていきます。
人間によく馴れているネコと人に近寄らない野良猫の違いは、子供の頃に人間と触れ合う機会の多さとその時期で決まるようだ。
そして飼い猫は人間も家族だと思っているようで、人間とネコはお互いに感情を伝え合う手段を学んでいくそうです。
著者の三十年に及ぶ研究の集大成の本だった。
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