今回のお話の語り手はドリトル先生の助手となったスタビンズ君です。
髪に白いものが混じるようになったスタビンズ君が、ドリトル先生の業績を書き残すべくオウムのポリネシアを相手に回想していく設定だ。
物語は航海記で三年かけて南大西洋の小さな島へ旅行していたドリトル先生が、懐かしのパドルビーに帰ってきたところから始まります。
留守番役だった動物たちが大喜びして迎えたドリトル先生は、旅行に出る前に住んでいた外国の動物たちを故郷に返してがら空きになってしまった動物園を改装しようと思い立ちます。
しかも珍しい動物を飼っておくのではなく、ドリトル先生と一緒に暮らしたいというイギリスの動物たちの家を広大な庭に作ろうという計画だ。
動物園の立ち上げを多忙のドリトル先生に変わって取り仕切ることになったスタビンズ君は、ポリネシアの知恵を借りながらウサギ・アパート、雑種犬ホーム、ネズミ・クラブ、アナグマ居酒屋、キツネ礼拝堂、リス・ホテルという施設が集まった動物園というよりは動物の町を作り上げていきます。
どちらかといえば小動物が多いけれど、ドリトル先生の庭はどれだけ広いんだろう。
アナグマ居酒屋で勃発する喧嘩騒ぎや、ジップが町ですぐに勧誘してくるため常に餌代がかかる雑種犬ホームの話も出てきます。
だが今回のメインはネズミ・クラブの会員となったネズミたちの冒険談だろう。
二匹のネコに追いかけられた体験を語るホテル・ネズミ、ネズミの王国を作り上げその初代首相となった火山ネズミ、博物館で巣作りした結果起きた騒動の顛末を語る博物館ネズミ、絵描きと一緒に暮らしていた牢屋ネズミ、そしていたずら者の夫がニシコクマルガラスと起こした事件を語る馬小屋ネズミだ。
どの話も壮大でとても面白い。
最後の事件はドリトル先生が巻き込まれた事件でしたが、その発端もネズミが持ち込んだものだった。
パドルビーのドリトル先生の家の近くにある荘園に住んでいるネズミが火事にあい、まだ目も空いていない赤ちゃんネズミを助けてほしいと駆け込んでくる。
すぐに駆け付けたドリトル先生たちの働きで火事は消し止められてネズミ一家は救出されたが、荘園の持ち主はなぜか不満そうだった。
そこにネズミが持ち込んだ紙切れから荘園の秘密をあぶり出していく。
賑やかで心温まる話だった。
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