最初から最後までものすごい違和感を抱いたままだった。報道などで目にした木嶋佳苗被告と本書の中の彼女とがどうしても結びつかない。著者が裁判で直接目にした木嶋佳苗という女性は、そんなに妖しく魅力的だったのだろうか…。
冷静に裁判を受ける被告の様子が、その服装や持ち物、動作をつぶさに観察する著者の目線で語られているのだけれど、やはり3件もの殺人事件の被告を描いているようには思えない。なにやら地に足がついていないというか、浮かれているような描写ばかりが続く。
木嶋佳苗に数百万円、あるいは数千万円を貢いだ男性たちが、ただ女性に不慣れで純粋だったがために"騙された"のだとは言わない。欲深さもあったのだろうと思う。金を巻き上げられたのには、そこそこの理由があったのだろうとも思う。けれど、だからといって殺されていいわけでは決してない。
最後に著者が木嶋被告に問いかけている文章がある。
なぜ、あなたはあの男たちを選んだの。なぜ、あなたは男たちからお金を得たの。あなたから見える、この「世界」はどういうものなの? あなたから見える世界を描くことは、あなた自身を曝すことだ。それは、飾った言葉での精神分析よりずっと、あなたをより物語る。だから、直視してほしい。男性たちの死を直視してほしい。男性たちにあなたが感じた苛立ちの根源を、描いてほしい。あなたの目から見える世界の色を、きちんと描いていってほしいのだ。
私はとにかく「なぜ殺したの?」と問いかけたい。
自分で自分を演じていたようにも思える木嶋被告。彼女は自分の人生を最後まで演じきることができるのだろうか。
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