hackerさん
レビュアー:
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前作の殺人は、結局、殺人予告をした女性による犯行ではありませんでした。大はずれ!本書では、同じ女性が再登場し、また別の殺人が起こります。果たして、今度は大あたりか?それとも題名に偽りありでしょうか?
「教えてください。この国では殺人犯をどうするんですか?」
「どうもしないわよ、マローンが弁護士につけばね」(本書登場人物の会話より)
どんな被告も無罪にするという定評のあるJ.J.マローン弁護士シリーズの1941年刊の第四作、前作『大はずれ殺人事件』のダイレクトな続編です。
大みそかの夜、親友のジェーク・ジャスタスは新妻ヘレンと一緒にバミューダに新婚旅行に出かけていて、ひとりぼっちのJ.J.マローンは、例によってシカゴの酒場をはしごし、前作にも登場する『天使のジョーのシティ・ホール・バー』というバーで、新年を迎えようとしていました。そこに、マローンのまったく知らない男が店に入ってくるなり「マローン!」と叫んで倒れます。男を抱き起したマローンの手に、男は何かをすべりこませた後こと切れてしまいます。男はナイフで刺殺されたのでした。そして、マローンに渡したのは、114と番号がふられている鍵でした。ところが、新年の酒場で勃発した喧嘩騒ぎに巻き込まれ、マローンはその鍵を失くしてしまいます。
おまけに、新婚旅行中のジャスタス夫婦は、現在無職のジェークが競馬で有り金をすってしまい、大金持ちのヘレンと大喧嘩して、別れることになって、二人別々にシカゴに戻り、マローンに会いに来ます。ジェークは、前作で、シカゴ社交界の花形モーナ・マクレーンは自分の手で「殺されても誰も嘆かず、私が個人的に殺す動機を持っている人間を公共の道路上で、白昼、射殺」するという殺人を予告したのですが、犯人が彼女であり、その犯罪の方法を暴いたら、彼女が所有する一流ナイトクラブ『カジノ』(これとて、彼女がギャングの親分から、ルーレットで巻き上げたのです、彼女は賭けの達人でした)を譲るという賭けをジェークとしていて、モーナは絶対に殺人を実行したか、実行しようとしているはずで、それを解決して、『カジノ』のオーナーになって、ヘレンを見返してやると言うのです。前作では、モーナの条件に見合った殺人が起こったのですが、結局彼女の犯行ではなく、「大はずれ」に終わったという苦い経験もしていました。一方、ヘレンの方は、ジェークが自立できるように『カジノ』を渡して、手を切ろうとしているのでした。そして、モーナの自宅に泊まっていた客の一人が、同じようにナイフで刺殺されます。すわ、彼女の犯行か、と喜ぶ(?)ジェークとヘレンでしたが、「射殺でなくて、刺殺だよ。公共の道路上でもないし」とマローンは冷静に指摘します。本書も「大はずれ殺人事件」なのでしょうか?でも、この題名は?
結論を言うと、本書の題名に偽りはないのです。本書では、立派な「大あたり殺人事件」が披露されます。そして、ジェークは『カジノ』を手に入れられるのでしょうか。
さて、この『大はずれ』と『大あたり』は、小泉喜美子が惚れこんだ二作なので、長谷川修司訳のポケミス版もありますが、今回はこちらの方を読んでみました。クレイグ・ライスの特徴は、ユーモア・ミステリーにふさわしいメチャクチャな登場人物と展開にもかかわらず、しっかりとした謎の設定と解決が用意されていることで、本書でも、それは存分に味わうことができます。ただ、小泉喜美子も認めているように、このジャンルはどうも日本での人気はイマイチのようで、多少の怒りも込めて、訳者あとがきでは、次のように書いています。
「ミステリというものは、ちっとも肩肘張るものではない。楽しく楽しく読ませてこそ、そして語らってこそ、初めてりっぱなミステリだと私は信じているのです。(中略)
ミステリと言えば、ただもうおどろおどろしい怨念だの社会正義だの血みどろの殺し合いだの四角定規みたいなトリックの謎ときだのだけだと考えられている日本。そこで育つミステリ・ファン。(可哀相になあ!)
そうしたハンディを超えて、本当に成熟したミステリをのびのびと味わって下さるかたが一人でも増えることを祈っております」
まぁ、ちょっと辛口ですが、どうか大人の対応をお願いします。この二作が「楽しく楽しく読ませて」くれることは間違いないのですから。
「どうもしないわよ、マローンが弁護士につけばね」(本書登場人物の会話より)
どんな被告も無罪にするという定評のあるJ.J.マローン弁護士シリーズの1941年刊の第四作、前作『大はずれ殺人事件』のダイレクトな続編です。
大みそかの夜、親友のジェーク・ジャスタスは新妻ヘレンと一緒にバミューダに新婚旅行に出かけていて、ひとりぼっちのJ.J.マローンは、例によってシカゴの酒場をはしごし、前作にも登場する『天使のジョーのシティ・ホール・バー』というバーで、新年を迎えようとしていました。そこに、マローンのまったく知らない男が店に入ってくるなり「マローン!」と叫んで倒れます。男を抱き起したマローンの手に、男は何かをすべりこませた後こと切れてしまいます。男はナイフで刺殺されたのでした。そして、マローンに渡したのは、114と番号がふられている鍵でした。ところが、新年の酒場で勃発した喧嘩騒ぎに巻き込まれ、マローンはその鍵を失くしてしまいます。
おまけに、新婚旅行中のジャスタス夫婦は、現在無職のジェークが競馬で有り金をすってしまい、大金持ちのヘレンと大喧嘩して、別れることになって、二人別々にシカゴに戻り、マローンに会いに来ます。ジェークは、前作で、シカゴ社交界の花形モーナ・マクレーンは自分の手で「殺されても誰も嘆かず、私が個人的に殺す動機を持っている人間を公共の道路上で、白昼、射殺」するという殺人を予告したのですが、犯人が彼女であり、その犯罪の方法を暴いたら、彼女が所有する一流ナイトクラブ『カジノ』(これとて、彼女がギャングの親分から、ルーレットで巻き上げたのです、彼女は賭けの達人でした)を譲るという賭けをジェークとしていて、モーナは絶対に殺人を実行したか、実行しようとしているはずで、それを解決して、『カジノ』のオーナーになって、ヘレンを見返してやると言うのです。前作では、モーナの条件に見合った殺人が起こったのですが、結局彼女の犯行ではなく、「大はずれ」に終わったという苦い経験もしていました。一方、ヘレンの方は、ジェークが自立できるように『カジノ』を渡して、手を切ろうとしているのでした。そして、モーナの自宅に泊まっていた客の一人が、同じようにナイフで刺殺されます。すわ、彼女の犯行か、と喜ぶ(?)ジェークとヘレンでしたが、「射殺でなくて、刺殺だよ。公共の道路上でもないし」とマローンは冷静に指摘します。本書も「大はずれ殺人事件」なのでしょうか?でも、この題名は?
結論を言うと、本書の題名に偽りはないのです。本書では、立派な「大あたり殺人事件」が披露されます。そして、ジェークは『カジノ』を手に入れられるのでしょうか。
さて、この『大はずれ』と『大あたり』は、小泉喜美子が惚れこんだ二作なので、長谷川修司訳のポケミス版もありますが、今回はこちらの方を読んでみました。クレイグ・ライスの特徴は、ユーモア・ミステリーにふさわしいメチャクチャな登場人物と展開にもかかわらず、しっかりとした謎の設定と解決が用意されていることで、本書でも、それは存分に味わうことができます。ただ、小泉喜美子も認めているように、このジャンルはどうも日本での人気はイマイチのようで、多少の怒りも込めて、訳者あとがきでは、次のように書いています。
「ミステリというものは、ちっとも肩肘張るものではない。楽しく楽しく読ませてこそ、そして語らってこそ、初めてりっぱなミステリだと私は信じているのです。(中略)
ミステリと言えば、ただもうおどろおどろしい怨念だの社会正義だの血みどろの殺し合いだの四角定規みたいなトリックの謎ときだのだけだと考えられている日本。そこで育つミステリ・ファン。(可哀相になあ!)
そうしたハンディを超えて、本当に成熟したミステリをのびのびと味わって下さるかたが一人でも増えることを祈っております」
まぁ、ちょっと辛口ですが、どうか大人の対応をお願いします。この二作が「楽しく楽しく読ませて」くれることは間違いないのですから。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:319
- ISBN:9784150715533
- 発売日:1977年11月01日
- 価格:691円
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