中原の虹 第一巻(ゲラ)
「蚕食」「碩学」「禅譲」「目に一丁字がない」など魅力的な語彙の宝庫のような本。残虐な殺戮シーンが多いので、苦手な方はご注意を。今後の展開が楽しみ。
投票(5)コメント(0)2012-03-02
本が好き! 4級
書評数:3 件
得票数:7 票
異郷トロントにおりながら、日本語の本を読むのが好きな私です。
「蚕食」「碩学」「禅譲」「目に一丁字がない」など魅力的な語彙の宝庫のような本。残虐な殺戮シーンが多いので、苦手な方はご注意を。今後の展開が楽しみ。
告発あり、警告あり、にも拘らず陰惨でないのは、取材先で出会う人々との交流をあたたかい視線で記しているからだろう。「食」がテーマの本だが「ひと」が魅力的。
貧困、父との確執、権力争いの中で独自の芸を確立して行く世阿弥の姿を、弟の目を通して描く。本書は「自己に向かって自己を表現し、自己を究明し、自己を押し広げる」(197)という著者の芸術論でもあると思う。