こないだ
名文でもなんでもない。言ってしまえばごく普通の文章で、そこがいい。
いま、個人的に、もっともそのエッセイの発表が待たれる著者、それが山田稔である。三年振りの新著。 …
本が好き! 2級
書評数:42 件
得票数:262 票
本、それは一本の木の死である。Un livre, dit Léger, c'est la mort d'un arbre.
名文でもなんでもない。言ってしまえばごく普通の文章で、そこがいい。
いま、個人的に、もっともそのエッセイの発表が待たれる著者、それが山田稔である。三年振りの新著。 …
東日本大震災後の情況を詩で抉る
東日本大震災の当日、詩人は高見順賞の授賞式のため東京にいた。しかし《贈呈式は自然の驚異のあおりを食っ…
明るい青空の下で、この本を讀んで下さい
東郷青児『戀愛譚』(野崎泉・編、創元社、二〇一八年三月一〇日)読了。正直、ビックリした。これまでも東…
人に「会う」ことについては、幸福だったとしか言いようがない。
還暦を迎えた岡崎武志のすべて(!)がここに集約されている、というか神の滴みたいな岡崎エキスで満たされ…
風に乗って世界を旅する本
世界を旅するイラストブックシリーズの最新刊。まさに風に乗って世界を旅する本だ。 関西で風と言え…
ながい話をつづめていへば光源氏が生きて死ぬ
本書を読むまでは、川柳都々逸なんぞの風流世界にはまったく縁が無いと思っていた。ところが、一読してビッ…
シャプルーが死ねば、部屋は俺が貰へる
舞台はツール(現在ではトゥール Tours と表記される)。フランス中部の都市。時は一八二六年。ナポ…
物語の像は重なり合って、やがてスッキリと収まるところに収まっていく
アリス島……マサチューセッツのハイアニス(Hyannis)から船で渡る、その島出身の女性と知り合って…
小さなピースが組み合わされて大きな世界が描き出されているジグソーパズルのように、ひとつひとつの些細な描写がだんだんと意味を持って来る非凡な構想力
ひと月半ほどかかって読了。ざっと読み通すことは簡単ながら、ちびりちびりとナイトキャップの楽しみに読ん…
まさに「損をしてでも良書を出す」河本亀之助、凄い男だ。
六三六頁の大著である。読み通すのはさすがにホネだったが、洛陽堂という素晴らしい出版社の事蹟を知る事が…
やはり面白いのは成功よりも失敗(成功者の失敗?)、表より裏
宮崎修二朗翁といえば、小生にとっては『神戸文学史夜話』(天秤発行所、一九六四年)の著者として親しい。…
処女作。トマソン社としても単行本処女出版だし、装幀の千葉泉さんも初めての装幀だそうだ。初々々しい一冊。
本書には「ギターを弾き始めたころ」という素晴らしいエッセイが収められている。これは読んだことがあるぞ…
永遠の不毛にも意味がある
時里さんはこれまで六冊詩集を出しておられ、最初の二冊『胚種譚』(一九八三年)『採訪記』(一九八八年)…
オール・アバウト「殺人文学」
十九世紀初頭から前世紀まで、時代ごとの代表的な殺人事件を例に取りながら「殺人」の誕生とそれに対するイ…
伝記というよりも、探索の過程を仔細に叙述した随筆的作品である
大正十四年に詩集『白痴の夢』(ドン社)を出版して一躍ダダ詩人として脚光を浴びたドン・ザッキー。彼は一…
比較文学とは自分の出自を追放された者が、故郷と自国語を相対化するためになしうる、弱者の知的営為だという真理に気がついた
自伝である『歳月の鉛』(工作舎、二〇〇九年)では同じ時代を生きたという気にさせられたけれども、この二…
自殺した友人の兄とのやりとりはかなり巧妙で、やや巧妙すぎてあざとい感じさえするくらいだが、解説で西村賢太が力説しているように飽きさせない筆致である。
本書刊行当時、ある人より『根津権現裏』(新潮文庫、二〇一一年七月一日)を見せられ、新刊情報にうとい当…
ここに収めた二篇の戯曲も、文で読む限りでは滅法に面白い。会話も魅力的だし、「恥」の震災も、「嘘」で描出される、男女間の行き違いの愛憎も、いかにも今日的状況と相通ずるものがある。
二〇一一年七月に出た藤澤清造の新潮文庫版『根津権現裏』はかなり売れた。 《発刊後数箇月で二度の…
出来るだけ一般の人々を喜ばせる小説を書きたいといふことだ。鋭いのはいけない、強いのはいけない、難しいのはいけない、だが卑俗なのもいけない。では何を書くんだ? まあともかく何かさう云つたものを
基本線は石坂洋次郎の代表作のひとつである『若い人』(『三田文学』連載の後、初版は正続二冊ともに改造社…
釣舟につりびと見えぬ露伴の忌
『鶴の鬱』(角川書店、二〇〇七年)から七年も経ったとは思いも寄らなかったが、そのくらい時間は疾走して…