愛の渇き
三島由紀夫の初期の佳品。「仮面の告白」の若々しさを飛び越え、手練の風格を漂わせている。「死」と「愛」という作家にとって極めて重要な主題を通じ、人間の実存と精神の或る秘められた暗部を剔抉した精緻な小説。
三島由紀夫の「愛の渇き」(新潮文庫)を読了したので、感想を認めておく。 この作品の全篇に行…
本が好き! 1級
書評数:41 件
得票数:579 票
どうも皆さんこんにちは、サラダ坊主と申します。
はてなブログで、雑多な内容のブログを運営しています。
このたび、御誘いを受けて、こちらの「本が好き!」というサイトに書評を投稿してみました。今後も機会があれば順次投稿させて頂きます。
どうぞよろしく御付き合いくださいませ。
三島由紀夫の初期の佳品。「仮面の告白」の若々しさを飛び越え、手練の風格を漂わせている。「死」と「愛」という作家にとって極めて重要な主題を通じ、人間の実存と精神の或る秘められた暗部を剔抉した精緻な小説。
三島由紀夫の「愛の渇き」(新潮文庫)を読了したので、感想を認めておく。 この作品の全篇に行…
昭和の文豪・三島由紀夫の出世作にして、作家の内面的論理の基本的な構造を凝縮した、緊密な傑作。同性愛とサディズムを巡る、青年の苦々しい精神的惨劇。
三島由紀夫の「仮面の告白」(新潮文庫)を読了したので、その感想文を認めておく。 三島の出世…
ロシアが生んだ鬼才ウラジーミル・ナボコフによる「歪んだ愛」の異様に精細な記録。夥しい暗示と引用に満ちたペダンティックな文体の魔力を存分に味わえる、濃密な傑作。
九月前半からずっと格闘し続けてきたナボコフの「ロリータ」(新潮文庫)を読了したので、覚書を認めてお…
1989年度のブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロの代表作。戦間期の古き良きイギリスの回想を通じて、人生の黄昏における複雑な「悔恨」の抒情を滲ませる典雅な小説。
1989年のブッカー賞の栄冠に輝いた、カズオ・イシグロの「日の名残り」(ハヤカワepi文庫)を読み…
「異邦人」によってフランスの文壇に華々しく登場した作家カミュの、もう一つの代表作。アルジェリアの地方都市オランを舞台に、ペストの蔓延という苛酷な閉鎖的情況と、そこに生きる人間の実存を活写した名作。
先刻、アルベール・カミュの「ペスト」(新潮文庫)を読み終えた。 この作品を単純なヒロイズム…
丁寧な訳文で抽出された、二十世紀文学の巨星フランツ・カフカの精髄が味わえる珠玉の短篇集。
最近、ドイツ文学者の池内紀氏が翻訳と編纂を担った「カフカ短篇集」(岩波文庫)を少しずつ読んでいる。…
現代イタリア文学の巨人ウンベルト・エーコの紡ぎ出す、荒唐無稽の「奇想」に満ちた痛快な冒険譚。中世ヨーロッパの「妄想」の絢爛たる世界を味わえる稀有な一冊です。
ウンベルト・エーコの「バウドリーノ」(岩波文庫)は、ヨーロッパの歴史や思想に関する該博な知識を素材…
中上健次の異様な迫力に満ちた、混沌たる小説作品。「路地」の消滅によって惹き起こされる複数の錯綜した物語の、交響曲。
一箇月ほどの期間を要して、漸く中上健次の長篇小説「地の果て 至上の時」(新潮文庫)を読了した。 …
ドイツの哲学書ショウペンハウエル(斎藤忍随氏の訳に即す)が書き遺した、読書と思索を巡る切れ味抜群の毒舌エッセイ。余りにも身も蓋もない表現のオンパレードだが、清々しいほどに逆らえない!
どうもこんばんは、サラダ坊主です。 ドイツの哲学者ショウペンハウエルの「読書について 他二…
該博な知識と異様な情熱を駆使し、ハーマン・メルヴィルが書き上げた長大で奇想天外な「鯨の聖書」の完結編。
どうもこんばんは、サラダ坊主です。 先日、遂にハーマン・メルヴィルの「白鯨」(岩波文庫・八…
ハーマン・メルヴィルの代表作「白鯨」は、十九世紀的なリアリズムの精神に抗うように、縦横無尽の饒舌を駆使して、捕鯨業界の真実を滑稽且つ優雅に描き出してみせる。
どうもこんばんは、サラダ坊主です。 メルヴィルの「白鯨」(岩波文庫・八木敏雄訳)の中巻を読…
アメリカの作家ハーマン・メルヴィルが遺した奇妙奇天烈な長篇小説。「捕鯨」に対する比類なき情熱と縦横無尽の博学な語り口の威力に、誰もが打ちのめされるに違いない。
どうもこんばんは、サラダ坊主です。 アメリカの作家ハーマン・メルヴィルの有名な長篇小説「白…
「少年」の異様で過激な論理を徹底的に抉り出し、典雅な構成の物語として精緻に織り上げた、三島由紀夫の傑作小説。もっと簡単な言葉でいえば「厨二病文学の古典」ということになるかもしれない。
三島由紀夫の「午後の曳航」(新潮文庫)を読了した。 この作品に限らず、三島文学の普遍的な特…
村上春樹の静謐で乾燥した抒情に満ちた処女作。小説というよりも、いよいよ書くことの曠野に踏み出す決意を固めた青年の私的なノートのような趣の作品。
今、僕は語ろうと思う。 もちろん問題は何ひとつ解決してはいないし、語り終えた時点でもある…
村上春樹の重要な文学的「転轍」を示す、破天荒で未完成な問題作の最終巻。個人的な領域への逼塞から、公共的な領域への果敢な移行に向けた、破れかぶれの挑戦状である。
村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」(第3部 鳥刺し男編)を読了した。 この錯綜した筋書きを…
村上春樹の文学的な転回点を成した長篇小説の第二部。根源的な受動性に囚われた語り手の「僕」はいよいよ、対決しなければならない真実の手懸りを掴み始める。
村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」(第2部 予言する鳥編)を読み終えた。 読後の印象として…
村上春樹の代表作の一つであり、個人の宿命を脅やかす暴力的なものとの対峙を描いて、作家の倫理的な飛躍と成熟を感じさせる重厚な長篇小説の第一巻。
村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」という長篇小説の第一巻「泥棒かささぎ編」を読了したので、感想の断…
都市・沙漠・他人・自由・匿名性。世界的に著名な作家、安部公房が生み出す世界には、独特の色彩がいつも添えられている。精巧な仮面を被った男の観念的な格闘を描いた、いかにも小説的な諧謔に満ちた傑作。
安部公房の「他人の顔」(新潮文庫)を、十余年越しに読み終えた。 大学一年生の春に買い求めて…
現代文学の最前線に位置する異端の作家、誰よりも「小説家」であることに明瞭な自覚と理論を持ち合わせるミラン・クンデラの犀利な評論集。その明晰な文章は、ヨーロッパが生み出した「近代」の扉へ通じている。
ミラン・クンデラの「小説の技法」(岩波文庫)を読了したので、感想を書き留めておく。 現代文…
「夜の写本師」で鮮烈なデビューを飾った乾石智子の長篇第二作。前作以上に磨き上げられ、更に逞しく成長した独自の文体で、危険で魅惑的な異界の物語を圧倒的な迫力を以て描き尽くす。
乾石智子の「魔道師の月」(創元推理文庫)を読了したので、感想を書き留めておく。 前作の「夜…