菊地成孔がアニメについて語る?!ジャズメルカ第二回開催 

2013.01.08 posted by honzuki / Category: イベント情報 / Tags: , , ,

2013年1月9日、渋谷UPLINKで「プロのミュージシャンがアニメについて語る」という異色の催しジャズメルカ!!!!!!!!!! vol.2 特集:『LUPIN the Third -峰不二子という女』が開催される。今回はゲストに菊地成孔氏、前回に続いて大谷能生氏・吉田隆一氏・吉田アミ氏らが登壇。彼らを迎えるのは、アニメ評論同人誌最大手「アニメルカ」編集長の高瀬司氏。「ジャズとアニメ」という、一見すると意外な取り合わせをめぐって激論が展開されることはほぼ間違いない。
 
前回の「ジャズメルカ!!!!!!!!!! vol.1」の様子は、既に刊行されている同人誌アニメルカ増刊号 反=アニメ批評 2012 autumnに採録されている。今回の記事は「vol.2」の予習として、この採録の内容を紹介していきたい。なお、イベントに行けない人にも有用な内容になるようにも配慮したつもりなので、いろいろな事情で行けない人も楽しんでもらえたら幸いである(なお、「vol.2」の内容も今後の刊行物に採録される予定とのこと。行けない人は刊行を楽しみに待とう)。
 

ani2012autumn_coverFull


 
さて、「アニメルカ増刊号 反=アニメ批評 2012 autumn」に掲載された「ジャズメルカvol.1」は、「vol.2」にも参加している大谷能生氏・吉田隆一氏・吉田アミ氏の3名のほかに、類家心平氏というトランペッターが参加していた。「vol.1」では、『坂道のアポロン』というアニメの音楽をめぐってトークが展開されるのだが、類家氏はこの作品に参加している人物でもあった。作中のキャラクターである「淳兄」のトランペットの演奏は、この類家氏による演奏なのだ。
まずはそのプレイを聞いてもらおう。

 
この類家氏は、大谷氏とともに、「vol.2」のメインゲストである菊地成孔氏が主宰するバンド「DCPRG」のメンバーでもある。菊地氏と大谷氏は二人で音楽史とその他の文化の歴史を結びつけて語る独特の姿勢で、多くの共著を発表してもいる。「vol.1」では、菊地氏も参加しようと調整をしたらしいのだけれど、参加できなかったとのこと。大谷氏曰く「俺はDCPRGを蹴ってジャズメルカに来てるからね」。実は「vol.1」の当日、DCPRGのライブがあり類家氏はライブ後にジャズメルカの会場に駆けつけ、大谷氏は自分の声の録音をライブで再生させジャズメルカに最初から登壇していたのだ。
というわけで、DCPRGのライブ音源をどうぞ。

 
さて、「ジャズメルカvol.1」のトークは、まず最初は「そもそも1960年代か1970年代は、アニメに限らず他のTV番組や映画音楽にいたるまで、ほとんどの音楽をジャズミュージシャンが担当していた」という歴史的な前提の確認から始まった。

トークの話題にも挙がった『ガンバの冒険』のオープニング曲。1971~2年の『ルパン3世』の音楽を手がけたことでも知られる山下毅雄氏が作曲したもの。
 
しかし、大谷氏もトーク中に口にしているとおり、ジャズという音楽は本来アドリブ演奏が主体の、「作曲」とは対極にあるもの。1970年代以降、ジャズミュージシャンはアニメ音楽の主流派ではなくなっていく。その後、1990年半ば頃から菊地成孔氏や『はじめの一歩』などを手掛けた今堀恒雄氏といった人々が表に出るようになってくる。吉田隆一氏によると、菊地氏と今堀氏に、『創聖のアクエリオン』の菅野よう子氏や『ふしぎの海のナディア』の鷺巣詩郎氏が絡んでくるのが重要らしい。

たとえば鷺巣氏は、ビッグバンド出身でAORやフュージョンを来歴に持つ作曲家。この『カードキャプターさくら』エンディング曲『明日へのメロディ』を聞きながら、吉田隆一氏と大谷能生氏は楽曲を分析する。素人耳にはジャズっぽさはほとんど聞き取れないかもしれない。しかし実はコード進行やフレーズの切り方やメロディラインにジャズ要素が見いだせる。わかる人にはわかるらしい。
 
ちなみに、一般的に「ジャズっぽい」と思われているであろう菅野氏作曲の『カウボーイ・ビバップ』のオープニング曲はどうだろうか。これがなんと、大谷氏や吉田隆一氏が聞くと曲の始まりから「ジャズの人が作っていないのがわかる」のだという。聞いてみよう。わかるだろうか。

 
同じ『カウボーイ・ビバップ』で、菊地成孔氏がサックスを担当した楽曲もある。

「オープニング曲と比べたらまだふつうのジャズをやろうとしている」という曲らしい。
ちなみに、この元ネタになっていると登壇者が推測しているのはビル・エヴァンスのこの曲。

言われてみると、確かにものすごく似ている。この曲と比べると、上記の『カウボーイ・ビバップ』の曲は「クサい」とのこと。
 
そして、そんな菅野氏が『カウボーイ・ビバップ』の監督と再びタッグを組んだ作品が『坂道のアポロン』
良い演奏の場面があるのでまずは観ていただこう。映像の中で演奏しているのは高校生だが、実際に演奏しているのは本職のプロミュージシャン。高校生らしく聞こえるように「もっと下手に!」という演技指導があったとのこと。

 
この『坂道のアポロン』と対比されるのが、菊地成孔氏が音楽を担当した『LUPIN the Third -峰不二子という女』
まずは楽曲を聞いていただこう。

今度「vol.2」でその菊地氏を迎えて本格的に扱われるであろう『ルパン』、「vol.1」ではこのオープニング曲で語りを担当しているピアニストの橋本一子氏の話題が印象的だった。みずから作曲家でもある橋本氏は『ラーゼフォン』というアニメでは音楽を担当。菅野氏とも菊地氏ともぜんぜん違う、かなり自由な仕事ぶりをしているとのこと。

この『ラーゼフォン』エンディング曲『夢の卵』素晴らしいですね。もうジャズとかよくわからなくなっていますが。ちなみに、「vol.1」のトークでは「単に自分の音楽をやっているだけ」と言われたこの曲が取り上げられていました。

いいですねえ、こういうの大好きです。

 
以上のように、「vol.1」のトークではまず「アニメとジャズはもともと遠くなかった」という前提の確認、その後ジャズ色が薄くなっていく過程が紹介され、それでも聞く人が聞けば嗅ぎ取れる「ジャズの匂い」が残っている楽曲があることが解説された。さらに、菅野よう子氏のように、ジャズに詳しい人からするとジャズではないような、記号化されたジャズも出てくる。なお、『LUPIN the Third -峰不二子という女』での菊地氏の音楽は、ジャズミュージシャンの仕事でありながら、同時に徹底して「記号としてのジャズ」である、と言われていた。
「vol.2」ではこの複雑な状況について、本人からの解説があるかも知れない。

 
※なお、イベントの詳細についてはコチラをご参照のこと。
前売り券は既に売り切れているが、若干名キャンセル待ちを受け付けているらしい。

 

【関連記事】

石原慎太郎とジャニーさんの意外な関係?『ジャニ研!』トークレポ
「ジャズメルカvol.1」「vol.2」どちらにも参加する大谷能生氏が、評論家の速水健朗氏・矢野利裕氏とジャズではなくジャニーズを中心に文化史を語るという異色の試みをしたのが昨年刊行された話題書『ジャニ研!』上記の記事は、その刊行イベントのレポートです。
 
第1回ジャニーズ研究部「ディスコ文化として見るジャニーズ〜極東★でぃすこてぃっく、情熱熱風☆せれなーで〜」に行ってきました
こちらは、『ジャニ研!』の元になったイベントシリーズの第1回目のレポート。大谷さん、歌も歌っていました。

 

【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
==================================

「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、
本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、
紹介させていただきたいのでBOOKニュース宛に新刊をぜひ送ってください!
↓宛先はこちら↓
〒333-0834
川口根岸郵便局留
Bookニュース 永田希

twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。
RSSフィード購読はこちら。