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書評 乱反射


乱反射 2009年上半期の直木賞候補作となった社会派エンターテインメント作品である。登場人物達は皆、平凡な普通の人達であるが、負の感情が非常に強い。 たとえば年下の人間の話を聞かない「尊大な退職者」である。
本書(貫井徳郎『乱反射』朝日新聞出版、2009年2月28日発行)は2009年上半期の直木賞候補作となった社会派エンターテインメント作品である。

物語は中々幼児の死に到達しない。前半は相互に関係のない人々の優越意識や嫉妬心、怠慢、無気力に彩られた日常生活が平行して進行する群像劇である。無関係な人々の不満や苛立ちの毎日が延々と続くような感がある。登場人物達は皆、平凡な普通の人達であるが、負の感情が非常に強い。

たとえば年下の人間の話を聞かない「尊大な退職者」(本書の帯の表現。以下同じ)や責任回避だけを考える「怠慢な医師」、「無気力な公務員」である。一方、「良識派の主婦」と紹介されている人物は近所のマンション建設反対運動を応援し、道路拡幅による街路樹の伐採に反対しようとするなど他の人物に比べるとまともそうな人物である。しかし、読み進めると誰かが進める反対運動を応援するだけで、自分が先頭に立って反対運動を行うのは嫌という情けない人物であることが分かる。

そのような人々の「自分さえよければいい」というルール違反やモラル違反が2歳児の死亡事故をもたらした。記者は大手不動産会社から不利益事実(隣地建て替え)を隠してマンションをだまし売りされた経験がある。隣地を建て替えるという情報は地上げブローカー、売主の不動産会社、販売を代理した不動産流通会社が皆、知っていたにもかかわらず、消費者の利益に立って行動した関係者は一人として存在しなかった。この経験があるために二歳児の父親の感じた無責任の連鎖に対する憤りは強く理解できる。

後半は息子を亡くした父親による真相の追求である。ここにもリアリティがある。二歳児の父親は告発するウェブサイトを開設する。しかし、公開しても大海に一石を投じた程度で期待していた反響はなかった。そのため、同種の被害者のウェブサイト管理人にリンクを求め、ブログにコメントを残すなど努力をすることで訪問者数を増加させた(487頁)。

ここには告発サイトのリアリティがある。ネットに対する理解が浅い人はネットを万能視するか、全否定するかの両極端に走りがちである。しかし、実際は、そのどちらでもない。ウェブサイトを作っただけで大きな反響を呼ぶわけではない。しかし、継続することで少しずつでも広げていくことができる。

記者の大手不動産会社との裁判についても、裁判そのものに対する注目よりも、裁判を契機として「営業マンの対応が高慢」「頼みもしないDMを送りつけてくる」などの不動産会社に対する批判が起こり、ビジネス誌から炎上と報道された(「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威-「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド2007年11月17日号39頁)。

告発サイトを開設しただけではだけでは広がらないという実態を把握していることに感心した。このような細部のリアリティの追求が作品の質を高めている。

レーティング:
掲載日:2012/02/04
書評掲載URL : http://hayariki.zero-yen.com/
ニックネーム: 林田力 レベル: 本が好き! 1級

林田力(はやしだりきHayashida Riki)は漫画・ドラマ・書評・不動産・裁判・住民運動・市民運動などジャンルを問わず活動中。
『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』の著者(Author of "The Suit TOKYU Land Corp's Fraud")の著者であり、東急不動産消費者契約法違反訴訟原告(The plaintiff Who Fought Against TOKYU Land Corporation)である。

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『乱反射』の本が好き!書評

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しおね

始めから半分以上は平凡な人々の日常なのです。でも事故が起こる事が冒頭で分かっているので、そこまでの緊張感がすごいです!

 |  書評を読む(580文字)  | 書評者 / しおね
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林田力

2009年上半期の直木賞候補作となった社会派エンターテインメント作品である。登場人物達は皆、平凡な普通の人達であるが、負の感情が非常に強い。 たとえば年下の人間の話を聞かない「尊大な退職者」である。

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☆文雀☆

思わず眉をひそめたくなる言動、かといって表立っては非難出来ない。なぜなら誰しもその程度のことなら思いあたる節があるから…

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