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158 PV
sashaさん
sasha
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アイスピック1本と10分。
暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の妹ローズマリー・ケネディは、23歳の
時にロボトミー手術を受けた。大人しく、口数も少なかったローズマリーは
成長するにつれ荒れた性格となり、一家の名声を妨げる要因になると
恐れた父によって決断された手術だった。

前頭葉を脳の他の部分から切断するロボトミー手術は、統合失調症やうつ
病に効果があると信じられた。この手術の結果、ローズマリーの人格は破壊
され、術後の一生を障碍者施設で送ることになった。

ここにひとりのロボトミー手術経験者がいる。本書の著者、ハワード・タリー
は12歳の時にロボトミー手術を受けた。ハワードに精神的な問題があった
のではない。どこにでもいる、少しやんちゃな少年だった。

しかし、弟出産後に実母を癌で亡くした後、父の再婚相手で義母となった
女性はハワードだけに辛く当たる。子供の頃のハワードに対して行われた
のはほとんど児童虐待といってもいい仕打ちだった。

その義母がハワードを自分の生活から排除する為に辿り着いたのがウォル
ター・フリーマン博士の診療室だった。アメリカ初のロボトミー手術を成功させ、
ローズマリー・ケネディの手術をも担当した。

義母の一方的な言い分からフリーマンが導き出したのは、ハワードは4歳で
統合失調症を発症し、ロボトミー手術によって現在の状況は改善できると
いうものだった。

ぞっとする。眼窩から器具を差し込み前頭葉を切断する。12歳の子供に何故、
そんな処置が必要とされたのか。否、そもそもハワードには精神的な問題は
ないと診断した別の医師もいたのだ。

問題があるとすればハワードを溺愛した実母が亡くなり、父も義母もハワード
が必要とする愛情を注がなかったことじゃなかったのか。愛情に飢えた子供が
注意を惹きたくて少々問題行動を起こしただけだったのだ。

その後のハワードの生活は手術を受けたことによって翻弄される。医療施設
や少年院、更生施設への入退院を繰り返し、40歳を過ぎてやっと人並みの
生活を築けるようになる。

そうして手術から40年が経って、何故自分はロボトミー手術を受けさせられる
ようになったのかという疑問に向き合うようになる。

生存率7割5分。でも、その生存者でも回復出来た患者はほぼいないと言われ
るロボトミー手術。ローズマリー・ケネディのように人格を破壊されたり、植物
人間になったりする患者が多かったそうだ。

ハワードはロボトミー手術経験者のなかでも稀有な例なのだろう。12歳で手術
を受けたことが幸いした。成長期のハワードの脳は、失われた機能を他の部分
が補う働きをしたのだから。

もし、ロボトミー手術を受けなかったのならハワードも平穏な人生を歩んで本書
を書くこともなかっただろう。1本のアイスピックと10分の手術時間が40年もの
歳月を奪ったんだ。精神的な問題を抱えていたのは義母の方だったのに。

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sasha
sasha さん本が好き!1級(書評数:910 件)

読書記録として登録。小説少なめ、ノンフィクション多め。偏った読書になって大分経ちます。

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