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ちょっと星新一っぽい作品もあるな~

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
オートコレクト
 イスラエルの作家さんの短編集です。いや、短い作品も多く、もうショート・ショートと言っても良いくらいの長さのものも多いのです(どうやらこういう短い作品は『フラッシュフィクション』とも呼ばれるそうです)。
 原書はヘブライ語で書かれているそうで、作品によってはユダヤっぽい文化が前面に出ているものもありました。

 一つ一つが大変短い作品なのでネタバレしないように内容を紹介するのがちょっと難しい。
 少しだけかいつまんでみると……

 表題作の『オートコレクト』は、朝、家にやって来た父親との事が描かれるのですが、父親は死んでしまうのです。こりゃやり直しをしなければ、と、時間を巻き戻して今度は違う展開に持って行こうとする主人公なのですが、どうやっても父親は色んな形で死んでしまうのです。
 最後に主人公がしたことは……。
 というお話。

 このようにちょっとSFチックな作品も多いんですよ。
 例えば『自撮り棒のない世界』は、ある日、別れた女性とそっくりの女性を見かけた主人公が声をかけたところ非常につれない対応。なんて酷い……。
 一人打ちひしがれて涙していたところ、その女性がやって来て、私は別の世界から来たのだと言うのです。何それ?
 どうやら別の世界では、他の世界に行き、そこに自分たちの世界にないものを見つけるというバラエティショーみたいなものが大流行しており、彼女もそれに応募してこの世界に来たのだとか。参加者のうち、一番最初に「無いもの」を見つけた者は元の世界に戻れるけれど、負けた参加者は別の世界に残らなければならないというペナルティがあるのだそうです。
 主人公は、行きがかりというわけでもないのでしょうけれど、この女性に協力して「無いもの」探しを手伝うというお話。
 主人公は惚れた女性にそっくりのこの女性に恋しちゃうんですよね。また、この女性も、主人公のことが気に入り、そもそも自分は別の世界に行きたくて応募したのであって、「無いもの」なんか見つけなくても良い、このままこっちの世界に残ってあなたと結婚したいと言ってくれるんです。
 ところが……という、結末はちょっとシニカルなものになっています。

 その他、地獄に落ちたメソポタミア人を描いた『メソポタミア人の地獄』なんかもちょっと面白い。メソポタミア人の地獄では、一度使った言葉は二度と使えなくなるんだそうですよ。一度「ありがとう」と言っちゃったら、もう二度と「ありがとう」と言えないのだとか。しかもその地獄での人生は永遠に続くのです。
 こりゃ嫌な世界だ。こんな地獄に落ちてしまったメソポタミア人夫婦が描かれます。

 ご紹介したのはちょっとSFテイストがある作品ですが、まったくSFじゃない作品もありますし、中にはオチがないというか、なんだろう~という作品もあります。
 ちょっと変わったショート・ショートを読んでみたいという方にオススメ。雰囲気は違いますが、星新一っぽい奇想が楽しめると思います。


読了時間メーター
□□□     普通(1~2日あれば読める)/189ページ:2025/11/08
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  • 掲載日:2025/11/29
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