ひとり旅日和

実のところ、ひとり飯もひとり旅も全く苦にならないが、経験豊富とは言いがたい。
なにしろ、昔から自他共に認める出不精ななのだ。
とはいえ「ここではないどこか」に出かける旅は嫌いじゃない。
もっともこれも昔から、旅の一番の楽しみはあれこれと「計画を立てる」ことではないかと思ってはいるのだけれど…。

そんな私が手にした本は、中小企業では働く社会人生活三年目の自称「人見知り女王」、日和を主人公とする連作短篇の旅物語だ。

人見知りで要領の悪い主人公は、直属の上司に怒られてばかり。
パワハラのターゲットになっているようにも思えるのだが、心配した社長からあれこれとストレス解消法を提案される。

いやいや社長！それ違うから！心配すべきはそこじゃないでしょ！という読者の突っ込みは、とりあえず脇に置いて、旅好きの職場の先輩からの後押しもあって、日帰りで熱海に出かけてみることにした日和の旅を追ってみると……

頭の中が、アジの干物でいっぱいに！！

食べたい！めちゃくちゃ食べたい！

美味しいアジを食べるなら…熱海より沼津という気も…。
北の果てでは手に入らない「美味しいアジの干物」が恋しい！！

だがしかし、とりあえず恋しい思いに蓋をして先を進むと、すっかりひとり旅にはまった主人公が、名所巡りとご当地グルメを堪能しながら、次第に行動範囲を広げ、佐原、仙台、金沢、福岡へと足を延ばしていく展開。

ひとり旅がストレス解消だけでなく主人公に自信を与えていく様が、美味しく楽しく描かれているのも良い感じだし、ちょっと甘そうな恋の予感もまあありだろう。

だがしかし、最初に脇に置いたパワハラ問題は…！
被害者の「気の持ちよう」で済ましちゃダメだよ！
ということで、次巻以降はこちらの解決にも踏み出して欲しいところ。

もうひとつ気になったのは、ガイドブックのグルメ情報。

いわゆる「観光地」で暮らす立場になってみれば、あれほど当てにならないものはない…と思うのだけれど……それもまあ別の話か。