書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

ソネアキラ
レビュアー:
良い酔い宵―作者の新作はもう読めないのだろうか。読みたい

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

たぶん、「山本昌代」と言うよりも、「『居酒屋ゆうれい』の作者」と言う方が、通りは良いだろう。作者の書くものには、時代劇ものと現代ものの2方向があるが、なぜかぼくは、もっぱら現代ものの方を愛読している。

本書は『ウィスキーボンボン』『ワイングラス』『月の雫』の3篇から成る連作集。3タイトルとも、アルコールに関連するものだが、読了後に、なるほど上手なタイトルだと感心してしまった。

子どもの頃は、可愛らしく小柄で『お稚児さん』と呼ばれていた若者が主人公。このあだ名でピンと来る人には、ネタばれかもしれないが。姉は、高校卒業後、美容師学校へ行き、美容師になる。勤務先の美容院の男と同棲をはじめたり、その男と別れて、また別な美容師とつきあいはじめたり、ロンドンへ美容師の武者修業に行ったりと、まったくのマイペース。主人公は、いわゆるいい子ちゃんタイプで、勉強もクラブ活動もそこそこ、こなして、高校・大学も志望校に入り、就職。会社の後輩の女性と結婚する。

妻の希望で、両親との同居生活をスタートさせる。しかし、しばらく経ってから、母親からやんわりと同居を拒否され、会社の上司の借りていたマンションに引っ越す。姉とその夫、姉の最初の同棲相手と主人公夫婦が意外な関係へと発展していく。とりたてて大げさな事件は起きないのだが、小さな事件が波紋となって次から次へと広がっていく。

作者はいつものように軽い筆致で、八分の力で書いている。描写は饒舌ではないのだが、よく伝わる。背景の描き込みはほとんどなく、余白だらけなのに、その余白が心地よい少女漫画を読んでいるような気分なのだ。おわかり願えるだろうか。なかなかこれが、できない。

都会で暮らしている、いまどきの共働きの若い夫婦―男女雇用機会均等法世代なのか、立場も役割もすべて対等・平等である―のごくごくありがちな物語なのだが、一気に読ませてしまう魅力がある。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2198 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

twitter.com/sonenkofu

詩や小説らしきものはこちら。

https://note.mu/sonenkofu

参考になる:21票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ウィスキーボンボン』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ