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三太郎さん
三太郎
レビュアー:
今年の4月に出たばかりの新書です。
著者の日下部理絵氏はマンショントレンド評論家というちょっと不思議な肩書で仕事をされている方の様です。

私事ですが、来年にはリアイアする予定なので、近いうちに今の横浜のマンションを売却して奥さんと一緒に僕の故郷にUターンしようかと考えています。今住んでいるマンションは築三十年以上ですが来年には3回めの大規模修繕工事が終わって綺麗になる予定です。駅に近いし便利な場所なので売却にはあまり心配はしていないのですが、問題は故郷でどんな家を買うかということです。居住性と価格から築20年以内の中古マンションにしようかと思っていますが、どんな点に気を気を付けねばならないのか、この本でケーススタディーをしようと思います。

著者によれば日本では現在、大都市中心に680万戸の分譲マンションがあり、その6割以上の住民はマンションに永住したいと思っているとか。我々夫婦は都会暮らしのメインストリームにいるみたいです。8件の事例が紹介されていますが、幾つかを紹介し僕自身のための注意事項も<>内にコメントしてみます。

事例2 夫婦二人になり、駅近マンションに買い替え

50代後半のサラリーマンの夫婦で86平米・4LDK・築22年のマンション暮らし。子供が独立したのを機に今のマンションを売却し駅に近いマンションに引っ越すことに。ちょうどそのタイミングで夫が理事長になり2回目の大規模修繕工事となった。仲介業者の査定額は修繕工事の後では100万円アップした。ほどなく30代の若い夫婦への売却が成立。駅から徒歩10分とやや遠いが、部屋の広さと共用部分のキレイさが決め手になったという。

中古マンションは古いほど売買価格が下がるが、築30年でほぼ下げ止まるという。今は中古マンションが人気だとか。この10年でマンションの建築費用が30%アップしたため、新築と比べ中古は割安感がある。駅からの距離は重要で新築のマンションは駅から徒歩7分以内が過半数を占めているとか。

<僕の今住んでいるマンションは築30年以上だが、定期的に大規模修繕工事を行い、壁面の補修・クリーニング、防犯カメラ、インターネット、屋外照明のLED化などを進めてきたので見た目では30年経っているようには見えない。長期修繕計画があり修繕積立金などの財政も健全。駅までの距離も僕の足で6分と駅近といえるだろう。1種住専地域なので3階建てだがおかげで住環境は静か。部屋の床面積は80平米あるが、水周りの設備は販売当時のままなので購入者がフルリフォームすることになるだろう。修繕工事が終わっているので販売時の6割くらいの価格では売れるのではないかと期待。>

事例5 終の棲家として買ったはずの住居で思わぬトラブル

夫75歳、妻72歳の夫婦。60歳の時に終の棲家と思って新築の2LDKのマンションを購入した。ローンは完済。最近、上階に引っ越してきた住民の酷い騒音に悩まされることになった。ものを投げたり叫んだりしているようだ。管理会社を通じて騒音への注意書きを掲示してもらったところ、一旦は収まるものの直ぐに元に戻ってしまう。また買い替えるか賃貸へ引っ越そうかと悩んでいる。

騒音問題はマンションではよくあるが防ぐのは困難。防音工事を行うこともあり得るが一部屋で100万円ほどかかる。買い替えるなら「リバースモーゲージ型住宅ローン」がある。これは住宅を担保としてローンを組んで生きている間は利息のみ返済し、死亡時に住宅を売却して返す。夫が契約者で妻を連帯債務者とすれば、夫の死亡後も妻は住み続けられる。不動産市場の変動により定期的に担保価格が見直されるため、担保評価額が下がり元本割れすると一括返金を求められるリスクはある。その他にリースバックという手段もある。

<引っ越した先のマンションでトラブルに見舞われた場合の対処法は難しいが、最終手段として売却して再度引っ越すということも想定しておくべきかな。いざとなったら売却できる、資産価値の下がりにくいマンションを選んでおく必要はありそうだ。>

事例6 空き駐車場問題に理事長として奮闘

夫66歳、妻62歳の二人暮らし。マンションは築32年。理事会の理事長に選出された。このマンションは平置き式と機械式の駐車場が各戸に1台分あるが、現在は空き駐車場があり、その分の駐車場代が集金できずに管理費の収入減となり、このままでは管理費会計が赤字になり管理費を値上げせねばならない状態であった。58台分の駐車スペースの内18台分の空きがあるため、管理費会計は予算より年間270万円の赤字であった。住民にアンケートを行い、外部の駐車場を利用している住民にマンション内の駐車スペースを紹介した。また要望の多かったバイク置き場を新設した結果、赤字は170万円まで減少した。まだ空きがあるので、大規模修繕に合わせて3段式の機械式駐車スペースを2段式に更新することになった。これで車高の高い車の駐車も可能になった。

<僕が今住んでいるマンションは元々戸数の1/3の平置き駐車場しかない。駐車スペースが当たらなかった人は近所の駐車場を契約している。しかし最近は車を持たない人が増えたので、将来は空きが発生する可能性はゼロではないだろう。機械式駐車場ではないので装置更新の費用がかからないメリットはある。一方、車が減るのと逆に大型バイクに乗る人が増えてきて、数年前にバイクスペースを新設した。今どき全戸数分の駐車場はむしろリスクだろう。僕自身は車は持っていない。(空き駐車場を外部に貸すと、税制上の面倒が発生する。管理組合が法人化されていれば別ですが)>

事例7 戸建てを売りタワマンを購入したものの・・・

夫63歳、妻61歳の二人暮らし。二階建ての家に住んでいたが、老後に階段のある家に住み続けられるか不安に思い、思い切って家を売って駅近のタワーマンションに住み替えた。しかし初めはリッチな環境に感動していたが直ぐに飽きてきた。全面ガラス張りの部屋は陽射しが強くて暑く、年中クーラーが必要だし、風が強いと建物が揺れる。ベランダに布団が干せないし、オール電化のためIHヒーターで調理するが強火の調理ができないなど、段々不満が溜まってきて後悔し始めた。騒音も気になる。築2年になるのに3割が売れ残っている。このタワマンは周囲の相場より割高なので売れ残ったようだ。またタワマンにしては小規模のため管理費が割高だ。

タワーマンションとは高さが60m以上(20階以上)の住居用超高層建築だ。著者によると2021年末で全国に1427棟(37万戸)あるという。国内外の投資家、地方の裕福層が投資のために購入したり、裕福な高齢者の相続税対策に買われたりしているという。

<僕自身は高層階に住みたくはない。仙台はいつ地震があるか分からない。エレバーターが止まって高層階から階段で降りるなんて勘弁願いたい。タワマンで気になるのは投資目的での購入者が多いことで、管理組合が機能するのか疑問だ。それ以前の問題として、僕は裕福ではないからタワマンを買おうとは思いませんけどね。ところで最近タワマンでの騒音問題の話を聞くが、これは今のタマワンが鉄筋コンクリートではなくて、鉄骨にパネルを固定する工法で造られているためらしい。軽いALC(発泡コンクリート)パネルが多く使われていて、そのため遮音性が低いとのこと。昔のタワマンはそんなことはなかったと思うのですが。>

その他の話題として
・売ってから買うか、買ってから売るか
・管理組合の自主管理と管理委託
・大規模修繕計画は必須
・自宅をリノベーション
・エレベーターの問題
・買い替えや相続などの出口戦略
など・・・

マンション住まいを考えている方や、既に住んでいる方も一読して損はないと思います。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:830 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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この書評へのコメント

  1. 菅原万亀2022-05-17 17:39

    終の棲家をどうするのか、今迷っているところなので、読んでみたいです!

  2. 三太郎2022-05-17 18:39

    菅原様

    お役に立てたら嬉しいです!

  3. No Image

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