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hackerさん
hacker
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リトアニアの民話というのもそうですが、ちいさな(=子どもの)あくまが貧しいきこりのパンを盗んだら、おおきな(=大人の)あくまたちに怒られて、罪滅ぼしをするという展開が珍しい絵本です。
本書はリトアニアの民話を内田莉莎子(1928-1997)が再話したものですが、彼女が翻訳したり再話したりした絵本はけっこう読んでいて、『てぶくろ ウクライナ民話』(1965年)『おおきなかぶ』(1966年)『もぐらとずぼん』(1967年)『わらのうし ウクライナ民話』(1998年)あたりが印象に残っています。絵を描いた堀内誠一(1932-1987)も、たくさんの絵本を担当していて、特に『ぐるんぱのようちえん』(1966年)は私のお気に入りです。二人のコラボである本書は、ちょっと変わったお話です。


「もりへ はたらきに いくときも、ちいさな パンの かけらしか おべんとうにもっていけないほど びんぼう」なきこりが、ある日働いていると、ちいさなあくまが、そのパンのかけらを盗みます。得意顔で仲間のところへ戻ったちいさなあくまでしたが、おおきなあくまたちに怒られてしまいます。

「なんて やつだ! びんぼうな きこりの だいじな べんとうじゃないか。さ、いますぐ あやまりにいけ。おわびのしるしに きこりのために はたらいてこい。なにか やくにたつことを やってこい。それまでは かえってくるな!」

ちいさなあくまは、しょんぼりときこりのところへ戻り、パンを返して、謝ります。「おわびに なにかさせてください」と頼むちいさなあくまに、きこりは「パンを かえしてくれれば、それでけっこう。はやく おかえり」と言いますが、それでは仲間のところに戻れないと泣きつかれて、あることを思いつきます。

それは、地主の旦那が持っている何の役にも立たない沼地を、旦那が許可してくれたら麦畑に変えてほしいという(謙虚な割にはとんでもなく欲張りな)要求でした。ちいさなあくまは、旦那のところへ行って、その許可をもらってきます。旦那はそんなことはできるわけがないと思ってOKを出したのですが、そこは、小さくても立派な(?)悪魔、見事に麦畑に変えてみせます。ところが、刈り入れ時になると、地主の旦那が現れて「きこり、ぬまを むぎばたけにしてよいと いったが、おまえにやるとは いわなかったぞ。これは みな わしの ものだ」と言って、麦を全部持っていってしまいます。

がっかりしたきこりでしたが、ちいさなあくまはあきらめませんでした。ちいさなあくまはどうするのでしょうか。


お分かりのように、悪さをしたちいさな(=子どもの)あくまが、おおきな(=大人の)あくまに咎められて、罪滅ぼしをするという展開なのですが、昔話としては、あまり記憶にない類のお話です。ただ、時節柄かもしれないですが、麦を持っていく地主の旦那というのは、ロシアのことかと思ってしまうので、それに反抗するちいさなあくまというのは、リトアニアのことかもしれません。まぁ、考えすぎでしょうが...。表紙からも分かるように、堀内誠一の楽しい絵とともに、妙に印象的な絵本です。

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hacker
hacker さん本が好き!1級(書評数:2281 件)

「本職」は、本というより映画です。

本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。

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『パンのかけらとちいさなあくま―リトアニア民話 (こどものとも傑作集)』のカテゴリ

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