ぱせりさん
レビュアー:
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狼を観察すればするほど、見えてくるのは私たち「人間」の姿
★先日読んだ『オオカミの知恵と愛』に、この本『狼が語る:ネバー・クライ・ウルフ』が「オオカミについて書かれた本の中で最高の名著のひとつ」であると紹介されていました。ちょうど、この本のことを思い出していたところだったので、うれしかった。
以下、過去に書いたものです。
*
若きナチュラリストだった著者が、大学を卒業して、生物学者として職を得たのがカナダ野生動物保護局。
そのころ、「オオカミがカリブーを全部殺してしまい、市民が狩猟に出かけてもどんどん獲物が少なくなっていて、ますます手ぶらで帰ってくることが多くなった」という苦情と抗議が、主に釣りや狩猟クラブといった市民団体から寄せられていた。
(この抗議を支持するのは実業界の面々、特にある有名弾薬メーカーということが、あとから読みなおしてみれば、きな臭いような……)
当局は、オオカミの大群による大虐殺からカリブーを保護することを約束。
その調査のために現地に派遣されたのが、著者だった。
(現場を知らない偉い人たちによって)滅茶苦茶な条件で、北極オオカミの生態を観察、調査、報告する任務を与えられたのだ。
ハドソン湾西岸、北極に近い荒涼たるバーレンランド。二つの夏と一つの冬をここで過ごす。
人といったら、たまにイヌイットの人びとに遭遇するくらいの、いわばオオカミ・ランドです。
ここにたどり着くまでの困難、ここで生活することのさらなる困難、さらに、観察・研究の難しさ、報告に至ってはほぼ不可能という悲惨な状態をユーモアたっぷりに描写している。
オオカミの土地に人間の文明を持ち込んだ自分が、いかに常識知らずであることか、マナー破りであることか、自分を笑い飛ばしてみせるかのような著者の文章を読みながら、私自身も道化師になったような気がしていた。
狼の生き方があまりにもまっとうに思えて。
オオカミ家族の互いを思いやる愛情深さ、あたりまえに力を尽くして助け合う日常、家族の結びつきの強さに、驚いてしまう。
狼ほど誠実で信頼できる隣人はいないと、数々のエピソードを読むほどに思えてきた。
(……最後に、著者がこの地を去る間際に穴の中で出会った光る目がなんとも美しい印象となり、心に残っています。)
狼は本当にカリブーを殺すだろうか。大虐殺の犯人はいったいだれなのだろう。
狼を観察すればするほど、見えてくるのは私たち「人間」の姿だった。
クライ・ウルフとは「ありもしない危険を言いたてること」を意味する慣用句だそうだ。
もともとのタイトル「ネバー・クライ・ウルフ」はすでにこの本の内容を語っている。
以下、過去に書いたものです。
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若きナチュラリストだった著者が、大学を卒業して、生物学者として職を得たのがカナダ野生動物保護局。
そのころ、「オオカミがカリブーを全部殺してしまい、市民が狩猟に出かけてもどんどん獲物が少なくなっていて、ますます手ぶらで帰ってくることが多くなった」という苦情と抗議が、主に釣りや狩猟クラブといった市民団体から寄せられていた。
(この抗議を支持するのは実業界の面々、特にある有名弾薬メーカーということが、あとから読みなおしてみれば、きな臭いような……)
当局は、オオカミの大群による大虐殺からカリブーを保護することを約束。
その調査のために現地に派遣されたのが、著者だった。
(現場を知らない偉い人たちによって)滅茶苦茶な条件で、北極オオカミの生態を観察、調査、報告する任務を与えられたのだ。
ハドソン湾西岸、北極に近い荒涼たるバーレンランド。二つの夏と一つの冬をここで過ごす。
人といったら、たまにイヌイットの人びとに遭遇するくらいの、いわばオオカミ・ランドです。
ここにたどり着くまでの困難、ここで生活することのさらなる困難、さらに、観察・研究の難しさ、報告に至ってはほぼ不可能という悲惨な状態をユーモアたっぷりに描写している。
オオカミの土地に人間の文明を持ち込んだ自分が、いかに常識知らずであることか、マナー破りであることか、自分を笑い飛ばしてみせるかのような著者の文章を読みながら、私自身も道化師になったような気がしていた。
狼の生き方があまりにもまっとうに思えて。
オオカミ家族の互いを思いやる愛情深さ、あたりまえに力を尽くして助け合う日常、家族の結びつきの強さに、驚いてしまう。
狼ほど誠実で信頼できる隣人はいないと、数々のエピソードを読むほどに思えてきた。
(……最後に、著者がこの地を去る間際に穴の中で出会った光る目がなんとも美しい印象となり、心に残っています。)
狼は本当にカリブーを殺すだろうか。大虐殺の犯人はいったいだれなのだろう。
狼を観察すればするほど、見えてくるのは私たち「人間」の姿だった。
クライ・ウルフとは「ありもしない危険を言いたてること」を意味する慣用句だそうだ。
もともとのタイトル「ネバー・クライ・ウルフ」はすでにこの本の内容を語っている。
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いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。
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- 出版社:築地書館
- ページ数:0
- ISBN:9784806714712
- 発売日:2014年01月23日
- 価格:2200円
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