星落秋風五丈原さん
レビュアー:
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整形大国韓国で 生きづらさを感じる女性達を描く
屋敷の運転手とメイドを両親に持つ20代前半の美容師アラは、中学時代からの友人でネイリストのスジンとルームシェアしている。故郷で起きた事件のせいで話せなくなり、筆談でコミュニケーションを取っているため、職場でもいじめられがちだ。K-POPの人気ボーイズグループクラウンのテインに一目会う事だけを願っている。
向かいの部屋に住む同い年のキュリは、アラのヘアサロンの常連で、客を連れてきてくれるお得意さん。キャバレーからルームサロンに転職。ルームサロンとはビジネスマンやその商談相手を酒とカラオケでもてなす個室形態のクラブである。美容整形で得た美貌で、高級クラブでエースの地位を得た。得意客の婚約話を知り動揺する。
スジンと同じ孤児院出身のミホは、奨学金を受給してNYの芸術大学に進み、卒業後に帰国した新進アーティストだ。スジンの紹介で同じオフィステルに入居し、キュリのルーム名緒だ。留学先で知り合った女性ルビーをモチーフにして現代アートの作品に取り掛かっている。ルビーの恋人だったハンビンと付き合っているが、最近浮気を疑っている。
アラたちの下の階で夫と暮らすウォナは30代前半の会社員で、両親を憎む祖母に虐待された過去を持つ。義母がいないという条件で結婚を決めたが、産休を快く思わないブラック企業に勤めており、日々プレッシャーを受けている。そのため、上階の独身生活を楽しんでいる(ように見える)スジンたちを羨ましく思っている。
アラ、キュリ、ミホ、ウォナの4人による章立てで物語は進む。章を持つ彼女たちの心情はある程度描写され、彼女達が“隣の芝生は青く見える”感覚でそれぞれを見ている事が提示され、双方を知る読者が人物像をより深く知ることができる。俳優でなくても、特に就職試験の際に“お直し”はお約束という整形大国韓国。アラ、キュリ、ミホの共通の友人でありながら、章をもたず心情描写のないスジンは、この風潮に乗ったキャラクターとして随所に登場する。
日本人が思っている以上に韓国人は見た目に拘る。幼い頃から両親や身近な人から聞かされてきて、体にすりこまれている「美=善、すばらしい」という価値観故である。何かと不利な立場に立たされがちな女性達は、自分らしく生きたいと思いながらも、仕事のため、恋人のため、そして実態のわからない世間のために、自分を作らざるを得ない。しかしそれで本当にいいのだろうか?という反論もドラマやK-POPでちらほらと挙がっている。美しさを目指すにしても、それは自分が目指す美しさであり「どこどこの誰々が認める美しさ」に合わせる必要はない。美しさはコンプレックスではなく、個性としてそれぞれを輝かせるべき要素なのだ。
向かいの部屋に住む同い年のキュリは、アラのヘアサロンの常連で、客を連れてきてくれるお得意さん。キャバレーからルームサロンに転職。ルームサロンとはビジネスマンやその商談相手を酒とカラオケでもてなす個室形態のクラブである。美容整形で得た美貌で、高級クラブでエースの地位を得た。得意客の婚約話を知り動揺する。
スジンと同じ孤児院出身のミホは、奨学金を受給してNYの芸術大学に進み、卒業後に帰国した新進アーティストだ。スジンの紹介で同じオフィステルに入居し、キュリのルーム名緒だ。留学先で知り合った女性ルビーをモチーフにして現代アートの作品に取り掛かっている。ルビーの恋人だったハンビンと付き合っているが、最近浮気を疑っている。
アラたちの下の階で夫と暮らすウォナは30代前半の会社員で、両親を憎む祖母に虐待された過去を持つ。義母がいないという条件で結婚を決めたが、産休を快く思わないブラック企業に勤めており、日々プレッシャーを受けている。そのため、上階の独身生活を楽しんでいる(ように見える)スジンたちを羨ましく思っている。
アラ、キュリ、ミホ、ウォナの4人による章立てで物語は進む。章を持つ彼女たちの心情はある程度描写され、彼女達が“隣の芝生は青く見える”感覚でそれぞれを見ている事が提示され、双方を知る読者が人物像をより深く知ることができる。俳優でなくても、特に就職試験の際に“お直し”はお約束という整形大国韓国。アラ、キュリ、ミホの共通の友人でありながら、章をもたず心情描写のないスジンは、この風潮に乗ったキャラクターとして随所に登場する。
日本人が思っている以上に韓国人は見た目に拘る。幼い頃から両親や身近な人から聞かされてきて、体にすりこまれている「美=善、すばらしい」という価値観故である。何かと不利な立場に立たされがちな女性達は、自分らしく生きたいと思いながらも、仕事のため、恋人のため、そして実態のわからない世間のために、自分を作らざるを得ない。しかしそれで本当にいいのだろうか?という反論もドラマやK-POPでちらほらと挙がっている。美しさを目指すにしても、それは自分が目指す美しさであり「どこどこの誰々が認める美しさ」に合わせる必要はない。美しさはコンプレックスではなく、個性としてそれぞれを輝かせるべき要素なのだ。
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2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:0
- ISBN:9784152100849
- 発売日:2022年02月16日
- 価格:2970円
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