書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

morimoriさん
morimori
レビュアー:
 植物を愛し植物に愛された牧野富太郎は、祖母に愛され、従妹に愛され、妻にも愛された幸福な人物だった。
 偉業を成し遂げた人には、必ず支えてくれた人の存在があるとこの本を読み終えてつくづく感じた。幼くして両親を失い血のつながらない祖母に育てられた富太郎は、学問に秀で名光義塾に通っていた。さらに、山野を歩き植物採集するのが何よりの楽しみだった。明治7年名光義塾が閉じられ、学制制度が始まると富太郎は小学校に入学するのだが、すでに知っている事ばかりの授業は退屈この上ない。15歳で小学校を辞め名光義塾の教授が開いている伝播所に出入りするようになる。本来ならば、家業の造り酒屋を継ぐはずが、祖母の理解により自由に植物学を学ぶことができていた。

 20歳になっても山野を歩きまわっている富太郎は、上野で開催されている内国勧業博覧会に行くため故郷を後にした。博覧会を見学し博物局を訪ねた富次郎は、植物図の編者に会うことが叶った。そして、東京大学の伊藤圭介に会うことも叶い、植物学教室への出入りも許されたのだった。植物の目録作りに取り組む富太郎にとって、大学の図書室を自由に使えることは願ったり叶ったりであったのだが、やがて学会の一員でも、学生でもない富太郎の学歴が問題となっていった。

 自由に植物を研究する富太郎を支えたのはひとえに祖母だった。そして、祖母亡きあとは実家を継いだ従妹の猶、東京で出会い惹かれ合ったスエだった。植物志図篇、植物図説など自費出版するも借金が嵩み妻となったスエは質屋通いをすることになる。志はあれど、なかなか豊かな暮らしをすることができず、家族は貧しさを強いられることになるのだが、なぜか富太郎は憎めない。必ず手を差し伸べてくれる人物が登場し、危機を乗り越える。自分の好きな植物を好きなだけ極めることのできた富太郎はさぞや幸せだったのではないか。他人から見たら、借金に追われるような生活をやりくりするのも大変だと思うが、スエも決して不幸とは思わなかったのかもしれない。

 牧野富太郎の話は朝ドラで放送されるらしい。ドラマの中で、最初に富太郎の妻となった従妹の猶やスエのことがどのように描かれるのだろう。さらに、大らかで富太郎を家業に縛ることなく、自由に植物学をさせた祖母は誰が演じるのだろう。

お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
morimori
morimori さん本が好き!1級(書評数:951 件)

多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。

参考になる:32票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. Roko2023-01-27 10:10

    morimoriさん
    キャストが一部発表になりました、おばあさまは松坂慶子さんだそうです。放送が楽しみですね。

  2. morimori2023-01-28 08:06

    Rokoさん コメントありがとうございます。
    松坂慶子さんがおばあさまですか。富太郎を温かく包んでドーンと支えてくれそうですね。早く放送が見てみたい。

  3. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ