かもめ通信さん
レビュアー:
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ここではないどこかに、無性に帰りたくなるような1冊。
私が生まれた時、そこにニューヨーク製菓店はあった。
ニューヨーク製菓店は私が生まれる前からそこにあったから、死んだ後にもしこにあるものと気ままに考えていたようだ。もちろん、人生はそういうものではない。
「ニューヨーク製菓店の末っ子」として生まれ育った作家が語るのは、幼い日の思い出、故郷のこと、そしてパン屋を切り盛りしていた母のこと。
作家が生まれる前から当たり前のようにあったから、そのままずっとそこにあるものだと信じて疑わなかった頃の思い出は、そのまま作家の母の半生でもある。
その場所に立ち戻っても既に店はなく、あの頃に戻りたくても戻ることはできない。
それでも、 ニューヨーク製菓店はかつて、確かにそこにあって、店と母とパンが、 作家を育んできたことは、紛れもない事実で。
その思い出が、作家の心に小さな灯りをともすとき、読者もまた、自分の原点に思いを馳せて、小さな灯火で暖をとる。
ここではないどこかに、無性に帰りたくなる1冊だ。
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翻訳家きむ ふな氏が今お勧めする作家の深い余韻と新たな発見を感じさせる短編を、日本語と韓国語の2言語で読むことができるシリーズ。
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・『原州通信』/イ・ギホ
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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この書評へのコメント
- かもめ通信2022-08-01 05:51
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- 出版社:クオン
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- ISBN:9784910214337
- 発売日:2021年12月10日
- 価格:1320円
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