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休蔵さん
休蔵
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セミたちの合唱が響き渡る季節。セミのことを学び直すのにぴったりの1冊です。
 小学生のころ、セミ採りに熱中していた。
 アブラゼミが主な対象で、その他のセミを捕まえた人は羨ましがられたものだ。
 最近ではクマゼミばかりが鳴きわめいているが、かつては羨む対象だったのにと思ってしまう。
 夏休みのある日、羽化したばかりの白いアブラゼミを見つけた。
 喜び勇んで捕まえた。
 死んでしまった・・・
 それまでも多くの虫の死なせてきたはずなのに、その時ばかりはえらくショックを受けてしまった。
 それ以降、羽化したばかりの昆虫に手を出すことはなくなった。
 そんな昔のことを、改めて思い出したのは、本書に羽化したアブラゼミの写真が載っていたからだ。

 本書はアブラゼミの一生を写真で紹介する1冊だ。
 まず元気に鳴くアブラゼミからスタートする。
 木の幹にストロー状の口を刺して樹液を吸い、おしっこをして飛び立つ写真もある。
 子どものころには、このおしっこをよく浴びたものだ。
 なんと、5分に1回はおしっこをするらしい。
 そりゃやられるわ。

 そして、交尾して産卵。
 産卵は土の中ではなく、木の枝の中に。
 おなかの先にある産卵管を木の枝に刺したり抜いたりで、2ミリほどのタマゴを300個近く生みつけるそうだ。
 そして、親ゼミは死ぬ。

 タマゴから幼虫がかえるのは、次の年の梅雨頃。
 2ミリほどのサイズという幼虫は、透けるような白いボディをしている。
 枝を少しばかり歩き回った幼虫は、ポトポトと地面に落ちるそうだ。
 そして、土の中を目指すという。
 しかし、地面にはアリがうごめき、運悪く出くわしたら狩られてしまう。
 アリに出会わず、地面の中に潜り込んだ幼虫は、そこで年々大きくなり、茶色くなっていく。

 生まれて5年目の夏、いよいよ地上を目指す幼虫たち。
 いったい、どんな風に世界を感じるのだろうか。
 暗くなるのを待って幼虫は木を登り始めるそうだ。
 そして、いよいよである。
 30~31頁は見開きで羽化のシーンが掲載されている、¥。
 そして、32頁には真っ白なアブラゼミの姿が。
 ああ、切ない・・・
 羽化は夜の8~9時がピークとか。
 あの時は、なぜ真昼間に羽化したのだろうか。
 なぜ、出会ってしまったのだろうか。
 やっぱり、切ない・・・

 38~39頁にはアブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシの写真が並び、それぞれの特徴が記されている。
 個人的にはヒグラシがお気に入りで、夕暮れ時の「カナカナカナカナカナ・・・」に哀愁を感じてしまう。
 なんと、都市部には少ないということで、田舎者を実感してしまった。

 ページでそれ以上に気になったのは、各セミの説明のなかで「関東では」いつくらいから声が聞こえるといった書きぶりだ。
 なぜ、関東限定?
 関東の小さな出版社から出たのかと思いきや、小学館・・・
 最近、台風のニュースでも似たようなことが気になる。
 西日本では大荒れの状況にも関わらず、「関東への上陸は・・・」などという報道の仕方が主流になっているからだ。
 いま大荒れなんですけど、と思いながらしょせんは脇役ってことね、といじけてしまっていたが、まさか出版物にまでその影響が!
 切ない気持ちがぶっ飛んだページとして覚えておこう。
 
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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この書評へのコメント

  1. くにたちきち2019-07-29 15:41

    今年は、梅雨明けが遅れたせいか、蝉の声が少ないように思います。蝉の命は短くてといいますが、その一生を見れば、地中に5年、地上で数日(最近もう少し長いという研究が出たようです)とは相当な長さです。人の一生も、地中で長く暮らしたものほど、地上に出てから短いのが、普通だと思います。如何でしょうか?

  2. 休蔵2019-07-29 20:46

     コメントありがとうございます。
     確かに蝉の声が少ないと思っていましたが、今になり大合唱でややうんざりです。
     でも、地上の世界を謳歌しているのだと、少しばかり優しく聞くことができるようになりました。
     人の一生については、なんともです。
     ただ、長い地中暮らしの最中の身、地上に出てからこそ長く過ごしたいものです。

  3. No Image

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