かもめ通信さん
レビュアー:
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この散歩道、結構面白い!とキョロキョロしながら興味津々で歩いていたのに、気がつくと全然違う道に迷い込んでいたりして、その道がまたすこぶる面白かったりなんかして…。
「取り寄せ依頼 10:04 シ゛ュウシ゛ ヨンプン 入荷しました」
ある日、こんなメールが届いて首をかしげる。
肝心の商品名が書いていないが、いったいなにを頼んでいたのだっけ?
しばらく本気で考えたあと、ようやく思い出す。
そうだ!これ、本のタイトルだったんだ!と。
ちなみに「10:04」という時刻は、
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、
裁判所の時計台に雷が落ち、
主人公マーティーがその雷のエネルギーを使って
1955年から1985年に戻る時刻だという。
あの映画は私も何回か観たはずだけれど、
そういわれても今ひとつ、ぴんとこなかった。
ところが、普段、私の読んでいる本にはほとんど関心を示さない家族に
タイトルの意味を説明すべく
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と言いかけただけで
すぐに「ああ、雷が落ちた時間か!」というではないか。
それまでかなりのハイテンションで面白く読んでいたにもかかわらず
もしかすると私、
この本の魅力を全部味わい尽くしてはいないのかもという
不安に駆られた瞬間だった。
はじまりはハリケーンの上陸が迫るニューヨーク、ブルックリン。
詩人である語り手の〝僕〟は前年に発表した小説デビュー作で高い評価を得、
その短編を組み込んで長編を書くと約束すれば、
6桁強の原稿料が前払いでもらえるという。
大動脈に異常がみつかり、
将来的には〝解離〟の可能性もあると診断されたことによる不安。
人工授精のために精子を提供して欲しいと言い出した親友の女性アレックス。
生協組合員に義務づけられた労働作業の合間に聞いたある女性の家族の話。
小説の中に組み込むことを考えてねつ造する
著名な詩人や作家たちと交わした手紙。
読み進めていくうちに
作者本人を思わせる語り手の実生活と執筆中の小説とが交錯していく。
理屈っぽくて神経質な新進作家の語り手という設定は
自伝的メタフィクションにはありがちではあるけれど、
大動脈や精子までも駆使して
「自身」の内側を表現する作家が描く様々なエピソードは、
一つ一つが読み応えのある面白さで
いやそれもっと読みたい!そこをもっと掘り下げて欲しいんだけど!と
長編から短編を切り出す依頼をしたくなるほど。
あるいはもしかすると、
当初タイトルの示す意味にぴんとこなかったように
この語り手の意図を私はつかみきれていないのではないかとも思う。
それでもこの小説はすこぶる面白かった。
ある日、こんなメールが届いて首をかしげる。
肝心の商品名が書いていないが、いったいなにを頼んでいたのだっけ?
しばらく本気で考えたあと、ようやく思い出す。
そうだ!これ、本のタイトルだったんだ!と。
ちなみに「10:04」という時刻は、
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、
裁判所の時計台に雷が落ち、
主人公マーティーがその雷のエネルギーを使って
1955年から1985年に戻る時刻だという。
あの映画は私も何回か観たはずだけれど、
そういわれても今ひとつ、ぴんとこなかった。
ところが、普段、私の読んでいる本にはほとんど関心を示さない家族に
タイトルの意味を説明すべく
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と言いかけただけで
すぐに「ああ、雷が落ちた時間か!」というではないか。
それまでかなりのハイテンションで面白く読んでいたにもかかわらず
もしかすると私、
この本の魅力を全部味わい尽くしてはいないのかもという
不安に駆られた瞬間だった。
はじまりはハリケーンの上陸が迫るニューヨーク、ブルックリン。
詩人である語り手の〝僕〟は前年に発表した小説デビュー作で高い評価を得、
その短編を組み込んで長編を書くと約束すれば、
6桁強の原稿料が前払いでもらえるという。
大動脈に異常がみつかり、
将来的には〝解離〟の可能性もあると診断されたことによる不安。
人工授精のために精子を提供して欲しいと言い出した親友の女性アレックス。
生協組合員に義務づけられた労働作業の合間に聞いたある女性の家族の話。
小説の中に組み込むことを考えてねつ造する
著名な詩人や作家たちと交わした手紙。
読み進めていくうちに
作者本人を思わせる語り手の実生活と執筆中の小説とが交錯していく。
理屈っぽくて神経質な新進作家の語り手という設定は
自伝的メタフィクションにはありがちではあるけれど、
大動脈や精子までも駆使して
「自身」の内側を表現する作家が描く様々なエピソードは、
一つ一つが読み応えのある面白さで
いやそれもっと読みたい!そこをもっと掘り下げて欲しいんだけど!と
長編から短編を切り出す依頼をしたくなるほど。
あるいはもしかすると、
当初タイトルの示す意味にぴんとこなかったように
同時に複数の未来に自分を投影してみようと思うと冒頭で宣言する
この語り手の意図を私はつかみきれていないのではないかとも思う。
それでもこの小説はすこぶる面白かった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2019-07-31 05:31
祝 #白水社 #エクスリブリス #創刊10周年 記念読書会
のんびりゆったり開催中。
https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no358/index.html?latest=20
ぜひぜひぜひ皆さんのお薦め作品も教えてください。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:白水社
- ページ数:284
- ISBN:9784560090503
- 発売日:2017年02月22日
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