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184 PV
ef さん
レビュアー:
あっと驚く意外な結末。
 最初は、「これはどういう作品なんだろう? 伝奇物? オカルティックなお話?」などとやや戸惑いながら読み進めて行ったのですが、最後の最後で「あっ!」と言わされてしまいました。

 物語の舞台になるのは、1874年のロンドンです。
 テムズ川の畔に建っていたミルバンク刑務所を一人の裕福な令嬢であるマーガレットが慰問に訪れ始めます。
 どうも、マーガレットは身体的及び精神的に問題を抱えている様子で(その事情は後に明らかにされます)、受刑者の慰問という慈善事業はそんなマーガレットにきっと良い影響を及ぼすだろうという知人の勧めもあって刑務所の慰問を始めたのでした。

 最初のうちは不気味な刑務所内の様子に怯えてもいたのですが、収容されている女性受刑者と面会していくうちに、徐々にその雰囲気にも慣れ、また、慰問の意義を感じるようにもなっていきました。
 刑務所内にはそれこそ様々な階層、年齢の、色々な犯罪を犯した受刑者が収容されていましたが、その中にまだ若く美しい女性受刑者を見つけたのでした。

 彼女の名前はシライナ。
 暴行と詐欺の罪で服役中だというのです。
 そして、彼女は霊媒だと主張しているのだとか。
 シライナは、他の受刑者と馴染もうとはしませんし、何ももめ事を起こさない模範囚ではあるものの、決して看守にも心を開こうとはしないのだそうです。

 マーガレットは、ある時、シライナが自分の独房の中で菫の花を持っているのを見かけます。
 「一体どこから菫の花なんかを?」
 マーガレットは、看守に報告しようかとも思いましたが、菫の花を持っているシライナの美しさに心を奪われ、そのまま黙っていることにしたのでした。

 その後、マーガレットはシライナと面会を重ね、徐々にその心を開かせていきます。
 シライナが語るところによれば、自分は冤罪だというのですね。
 シライナは霊媒としての仕事をしており、面倒を見てくれていたパトロンの貴婦人の庇護の下、降霊会を開くなどして出席者から礼金を得ていました。
 そして、自分にはピーターという守護霊がついており、そのピーターによって自分の霊能力も飛躍的に高められたというのです。

 自分が刑務所に入れられることになった犯罪というのは、ある若い女性の依頼に基づき、ピーターを降霊させた時に、ピーターがその若い女性を殴ってしまったことなのだというのです。
 物音を聞きつけたパトロンの貴婦人が無理矢理部屋の中に押し入り、倒れている若い女性を見てショックを受け、もともと心臓が弱かったこともありそのショックで亡くなってしまったというのです。

 だから、自分が暴行をしたわけではないのだけれど、裁判では霊が暴行を加えたなどという話は全く信用してもらえず、パトロンの貴婦人が亡くなったのは心臓病のせいとしても、若い女性に暴行を振るったのはシライナしかいないとされ、また、降霊会などというものはそもそも詐欺なのだとされて刑務所に収容されたというのですね。

 突然そんな話を聞かされたマーガレットは、霊媒などという話をにわかに信じることはできなかったのですが、その反面、シライナの不思議な魅力に惹かれていくのでした。
 そして、その後、自分の身の回りに様々な不思議なことが起きるようになり、シライナの言葉を信じる気持ちが徐々に高まっていくのでした。

 なおも憑かれたようにシライナとの面会を重ねていくうちに、シライナを強く愛するようになっている自分に気が付きます(マーガレットには同性愛の傾向があるようです)。
 シライナも、マーガレットの気持ちに応え、「あなたは私の半身なの」とまで言うようになります。

 もはや、マーガレットはシライナ無しでは過ごせないようになっており、刑務所にも足繁く通い続けたのですが、これはさすがにおかしいと刑務所側も気が付くようになります。
 特定の受刑者に特別の感情を抱かないようにと注意され、シライナとの面会も控えるように言われ始めます。
 このままではシライナと引き離されてしまう……。
 でも、シライナは、「私は霊の力を借りてあなたのところへ行くことができる。これから先は二人だけで生きていきましょう。あなたにはその準備をして欲しいの。」と迫ります。

 こんな雰囲気の物語で、冒頭に書いたように一体どういう物語なのか図りかねて読んでいたのですが……。
 作者の物語展開が上手いせいか、すっかりこの雰囲気にのまれてしまい、ラストで唖然とさせられてしまいましたよ。
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ef さん 本が好き! 1級 (書評数:1245 件)

幻想文学、SF、ミステリ、美術なんかも含めて怪しい物大好きです。ご紹介ベースでのレビューが基本ですが読んで頂けたらうれしいです。

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