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三太郎さん
三太郎
レビュアー:
バブル期に作家デビューした著者の還暦を迎えての私小説集。
著者の保坂さんは1956年生まれで、この小説は2018年に上梓されたから、著者が還暦になった頃に書かれたということになる。著者の作品はデビュー作の「プレーンソング」を読んでいたが、中年の頃の作品はまだ読んでいない。この本は4篇の短編小説からなるが、はっきりと私小説のスタイルで書かれているのが、デビュー作とは異なる。でも文章のかたちはそのままのようだ。「。」を使わずに1ページ分の文章を「、」で繋いでいくという独特のスタイルだ。

保坂さんは僕と同学年にあたる作家なので、ここまでの経歴が気になったのだが、還暦までに十冊ちょっとの本を出している。プロの作家としては寡作だったといえそうだ。あるいは作家以外に本業があったのかも。「プレーンソング」の主人公の男性はバブル期を謳歌するチャランポランな会社員だったが、当時の著者は小説家になる夢を捨てられず悶々としていたサラリーマンだったらしいから、プレーンソングの主人公は著者自身の姿だったのかも。

この作品には、海の近くに住んでいた少年時代から作家デビューした会社員時代、やがて中年になって同棲相手の女性との結婚などが語られていくが、メインのテーマは彼の愛した猫たちとの生活と死別の物語だ。

何匹もの猫がでてくるが、メインは三毛猫の「花」かな。花とは入籍したばかりの妻と妻の母親の墓参りにいった時にであった。生後間もなくでまだ目が見えていない状態だった。迷ったあげく連れて帰るのだが片目がなく、獣医には全盲かも知れないといわれる。しかし猫という生き物は人間ほどには視覚に頼ることがなく、片目でも全盲でも一見自在に動き回ることができるのだとか。

愛猫の死とともに作者の父親の死や若い頃の映画作りで出会った友人の死についても語られる。還暦を迎えた著者は死の意味について考えることが多くなったということだろうか。

生命というものは<生きている状態>と<死んでいる状態>の二者択一ではとらえ切れない、<死んでいるはずが生きている状態>とか<生きているように見えるが死んでいる状態>とか<どちらともいえない状態>などの様々な状態の総和なのかもしれない、とつまらないことを考えた。


私事ですが、7月なってから、クーラーが壊れたがもう直ぐ引っ越しなので買い替えは控えた結果、暑さでぐったりしたり、親族のトラブルで深夜に電話で何度も起こされさらにぐったりしたり、愛用のサブノートPCのキーボードがいかれたのでたまたまあった外付けのキーボードをつないだが大きすぎて入力しずらかったり、あれやこれやで本が好きのレビューがあまり書けていません。秋には状況が改善すると期待しているのですが。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:830 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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この書評へのコメント

  1. hacker2023-07-22 10:34

    >秋には状況が改善すると期待しているのですが

    気長にお待ちします。この本も面白そうですね。ツンドク山脈に入れておきます。

  2. 三太郎2023-07-22 12:27

    10月中には仙台に落ち着けると思っているのですが・・・

    この作家さんは私小説作家に分類されそうですが、ポップな感じの文体で、私小説も幅広いなあと思います。

  3. hacker2023-07-22 12:37

    アニー・エルノーもそうでしょうが、私小説は、私も好きです。それに、私事が何らかの形で反映している小説は、すごく多いでしょうしね。

  4. No Image

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