ぱせりさん
レビュアー:
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外と、内と、境界と。
主人公の宇田川は、東京の大学を卒業して地元の高崎市に戻ってきている。いずれ伯父の神社の後継者として神主になることが決まっているため、いまは定職についていない。宙ぶらりんの状態だ。
都会と地元、友人と自分、恋人と自分。屈託なく付き合っていたはずの関係が、ふと外と内というふうに感じてしまうことがある。今まで意識したことなんかなかったのに。相手に対して、何かしらの齟齬を感じるときだろうか。
そのとき、外、内、という言葉にどんな気持ちを込めていたか、初めて意識することになる。
外と内の間には境界があると宇田川は考える。
都会でもなく田舎でもない場所が境界だ。
神事をつかさどる神主という仕事も境界だし、定職もなくどっちつかずの生活をしている主人公自身が境界にあるといえる。
誰かとの会話のなかに入る「あーねー」という合いの手(相手の言葉にあからさまに反意を表明したくないときの曖昧な相槌)も、境界ではないだろうか。
外と内どちらにも行き来できる場所で、どちらにも属さないでいられることは、不安定だけれど、居心地良いときもある。
境界、というものは必要なのだと思う。きしみやすい二つの世界をとりなすための潤滑油にもなっている。
一方で、曖昧な中間地帯は、認めたくないものや、今は考えたくないことをひとまず留め置く場所でもあり、向かい合わなければならない現実からの一時しのぎの逃げ場のような側面もある。
境界は、うつろいやすいものなのだ。なんとあやふやで頼りないのだろう。
境界は、いずれは腹をくくって出て行かなければならない場所でもあるのだろう。境界を出ていくその時には、外と内だと思っていたものが、もうちょっと違うふうに見えてくることだろう。
群馬県は、私には思い出深い土地だ。この本の中の地名もそこから見える景色も懐かしい。(あれはまだあるのか、そんな姿に変ったのか、も含めて)
独特の言い回しや方言、習慣などに、懐かしいあの人この人の顔が不意によみがえってきたりした。
都会と地元、友人と自分、恋人と自分。屈託なく付き合っていたはずの関係が、ふと外と内というふうに感じてしまうことがある。今まで意識したことなんかなかったのに。相手に対して、何かしらの齟齬を感じるときだろうか。
そのとき、外、内、という言葉にどんな気持ちを込めていたか、初めて意識することになる。
外と内の間には境界があると宇田川は考える。
都会でもなく田舎でもない場所が境界だ。
神事をつかさどる神主という仕事も境界だし、定職もなくどっちつかずの生活をしている主人公自身が境界にあるといえる。
誰かとの会話のなかに入る「あーねー」という合いの手(相手の言葉にあからさまに反意を表明したくないときの曖昧な相槌)も、境界ではないだろうか。
外と内どちらにも行き来できる場所で、どちらにも属さないでいられることは、不安定だけれど、居心地良いときもある。
境界、というものは必要なのだと思う。きしみやすい二つの世界をとりなすための潤滑油にもなっている。
一方で、曖昧な中間地帯は、認めたくないものや、今は考えたくないことをひとまず留め置く場所でもあり、向かい合わなければならない現実からの一時しのぎの逃げ場のような側面もある。
境界は、うつろいやすいものなのだ。なんとあやふやで頼りないのだろう。
境界は、いずれは腹をくくって出て行かなければならない場所でもあるのだろう。境界を出ていくその時には、外と内だと思っていたものが、もうちょっと違うふうに見えてくることだろう。
群馬県は、私には思い出深い土地だ。この本の中の地名もそこから見える景色も懐かしい。(あれはまだあるのか、そんな姿に変ったのか、も含めて)
独特の言い回しや方言、習慣などに、懐かしいあの人この人の顔が不意によみがえってきたりした。
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いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。
この書評へのコメント

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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:280
- ISBN:9784309416236
- 発売日:2018年07月05日
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