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星落秋風五丈原
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「母を訪ねて三千里」の時代とは少し違う 母を探す旅
 アニメにもなった『母を訪ねて三千里』はイタリアから出稼ぎに出た母を探して少年マルコが一人でブエノスアイレスまで旅をする。マルコは旅の途中で何度も危機に陥り、出会った多くの人に助けられ、また時には助け、優しさに触れながら成長していく。いわば小説自体がビルドゥングスロマン=教養小説であった。

 本作でもやはり主人公ミゲルは母親を探して故郷グァテマラからアメリカに旅をする。しかしその内容はマルコとは全く異なる。ミゲルは青少年難民センターで出会ったフェルナンド、アンジェロ、エミリオ、ヤスらと出会い、フェルナンドに誘われて彼等と行動を共にする。海を渡るマルコに比べればかなり近距離だが、ミゲル達の旅には、マルコにはないいくつもの危険があった。

 ミゲルらの主な交通手段は鉄道だ。それも正規の料金を払って乗車するのではなく、走っている列車に飛び乗り、屋根や空いている貨物車両に忍び込む。雨が降れば寒く、強風が吹けば吹き飛ばされる。当然の如く不法乗車を取り締まる警察もいるし、アメリカを目指す不法難民をカモにしようと待ち構えているギャングもいる。そしてギャングの手先はさも親切そうな顔をして、年端もいかないミゲル達のなけなしの金まで奪おうとする。

 新型コロナの感染拡大やハリケーンなどの天災によって、中南米諸国の雇用が大きな打撃を受けた。すぐそばに富裕な国アメリカがあれば、一攫千金までは狙わなくとも、やはり目指したくなる。元トランプ大統領が、公約として不法移民取り締まりのためのメキシコとアメリカの壁の強化を立ち上げたが、ただ止めるだけでは乱暴だ。貧富の差を埋め、自分達の国で立ち行くような生活を支援するために、富める国が手を差し伸べるべきなのだ。
    • カリフォルニア州オタイーメサの国境でトランプ大統領に建築する壁のサンプルを示す職員
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2328 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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