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yukoさん
yuko
レビュアー:
やけどをしたから顔を見られたくないのと、妻は地下室に引きこもり、夫は長らく妻に会えなくなる。なんとも不思議なこの夫婦は、一体お互いの何を知っているのだと、深い沼へとずぶずぶ沈んでいく・・・
寝室も別々、結婚式もあげなかったし、お互いの誕生日祝いもしない、
出会って五年、結婚して三年の夫婦。


ある朝目が覚めると、妻が起きてこない。
寝室をノックすると、天ぷらを揚げて顔にやけどをしたから、顔を見られたくないのという妻。

まぁ、女の人ってそんなものかと思っていたら、
妻は、二人がギターとフルートを演奏していた地下室に籠ってしまいます。
連絡はLINEでしてきてという妻。
激務に追われる公務員の夫は、夜遅く帰ってくると妻が作ってくれておいた天ぷらを毎晩食べます。

そう、
晩ごはんは毎晩天ぷら・・・


だんだんと妻の顔が思いだせないと焦りだした夫は、妻に会おうとするのですがなかなか会えない。
妻に会いたいと言うと、自分が作ったゲームでトップテンに入ったら会ってもよい、と言います。

プログラマーである妻は、ゲームアプリを開発し、そのゲームはヒット。
彼女は大きな収入を得ていました。


だんだん異常な事態に耐えられなっていく夫。
絶対に地下室から出てこない妻。

なんとかして妻の気をひこうと、以前のように、二人は地下室で、
しかも真っ暗闇の中でギターとフルートを演奏し始めますが、
妻の要求はどんどんエスカレートし、夫は、仕事も手につかずゲームをし続け、フルートを猛練習し、もう精神的に破綻し、仕事にも行けなくなってしまいます。


夫婦のいったい何が問題だったのか。
夫婦はいったいどこへ行きつくのか。


とても不思議な物語で、読んでいて、いやいや、それはなかろう、と思うのに、
でも、朝早く家を出て、夜中に帰ってくる旦那さんなら、
会話なんてLINEしか一週間一切ない、とかありえるよなとも思えて、
でもそれは異常なのか、
はたまたお互いの仕事があって、お互い忙しくしていればそんなの気にする暇もないのかとか、
なんだか読んでいてどんどんわけがわからなくなっていってしまって。


不快感もあるのに、官能的でもあり、
孤独であるのに、深い愛情の物語でもあり、
すっかり不思議な世界に魅せられて、一気に読んでしまいました。


「人は誰かを知れるの?その人になれるわけでもないのに」

「すべてを知ってるのは、何も知らないのと同じことだよ」




そんな風に言われると、
誰とも一緒になんていられなくなる。

あまりにも恐ろしくて。
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yuko
yuko さん本が好き!1級(書評数:303 件)

仕事のことで鬱状態が続いており全く本が読めなかったのですが、ぼちぼち読めるようになってきました!

読んで楽しい:12票
参考になる:50票
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