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詩人で剣豪のシラノ・ド・ベルジュラックと従妹の美人ロクサーヌの恋の物語。戯曲。シラノは、実在の人物で、ロスタンの戯曲では容姿がデフォルメされ、大鼻の持主。美男のクリスチャンと二人羽折の恋の行方は?
シラノ役は、鼻が役作りの上で重要。付け鼻で演じられることが多い。書影は、自分の手持ちの本と同じ、旺文社版だが、右の大きな付け鼻の人物がシラノ。

剣豪のシラノは同じ出身地(ガスコーニュ)の地方貴族が組織しているガスコン中隊の幹部。そこにクリスチャンと言う美男子が入隊した。シラノは彼の従妹のロクサーヌが好きだが、自分の容姿を顧みて、本心を彼女に打ち明けられない。そこにもってきて、ロクサーヌが今度はクリスチャンに一目惚れ。荒くれ者の多いガスコン中隊の中で彼がいじめられないように、と彼が後ろ盾になるように頼みに来た。自分の好きな相手から、その相手が惚れている別の男の保護を求められて心中複雑だが、騎士道精神旺盛な彼は、渋々保護役を引き受けた。ロクサーヌの理想は高く、才気好み。クリスチャンの容姿から、彼女は素晴らしい恋文の書き手、と信じて疑わない。
シラノはクリスチャンと話をするが、これが美男子ながらそこらの優男とは違い、一本気の通ったなかなかいい奴。しかも、彼もロクサーヌに恋していた。ならばと、シラノもひと肌いで、ふたりの間を取り持ってやろうと思ったが、クリスチャン曰く、自分はてんで野暮天で、文筆で女性の気は引けない、とのこと。ここで名案が浮かんだ。恋文、恋文句はシラノが代筆、黒子役を引き受けようと言うもの。体はクリスチャン、心はシラノとこの二人羽織でロクサーヌの気を引くことになった。
こうして、奇妙な三角関係がうまく行っている時に、ガスコン中隊もスペインとの戦争に駆り出された。戦場から送るクリスチャン(実はシラノ)の恋文に感動して陣中見舞いに来たロクサーヌが言った言葉がクリスチャンの胸を打った。「自分は彼の容姿はどうでも良い。恋文、恋文句に惚れているのだ」と。これを聞いたクリスチャンは、ロクサーヌが愛しているのは彼の容姿ではなく心、つまりシラノだと悟った。シラノに対して、自分は前線の偵察に行くので、その間にロクサーヌと二人きりになり、その間に本心を打ち明けるように言う。躊躇うシラノがようやく本心を打ち明けようとしたその時、・・・。
終幕の場面は15年後、尼になったロクサーヌの元に毎日通うシラノの姿があった。ひょんなことからシラノとクリスチャンの関係が露見し・・。

本書は、岩波、光文社でも出ているが、私が持っているのは前記の通り1971年に旺文社から刊行されたもの。訳者がなかなか優れている。シラノの前で「鼻」は禁句。彼の前で「鼻」とでも言おうものなら、和田アキ子の前で「大女!」と叫ばされる若手芸人の様な目に合う。しかし、クリスチャンとシラノの出逢いの場面は、優男に見られたくないクリスチャンが、自分にも気風のいいところがある、と言うことを示すために、シラノの手柄話に盛んに「鼻」を使った半畳を入れて行く。これが、ロスタンが日本語で書いたのでは、と思えるくらい出来の良い訳だった。フランス語のことはよくわからないが、岩波、光文社ともほぼ同じ諺を半畳に使っているので、あちらにも似たような慣用句はあるらしい。長くなってしまうが、引用する。

*前夜、シラノが百人相手に大立ち回りを演じた自慢話をガスコン中隊員にしている場面。シラノは、ロクサーヌから今日クリスチャンが入隊すると聞いていて、これが初対面。
シラノ(以下シ)「さて俺は歩きながら考えたね。これからすることはつまらない貧的をかばってやるためだ、敵に回すのはどこかの大身の貴族、名門の人物で、きっとこの俺の・・」
クリスチャン(以下ク)「鼻っ柱をへし折るだろう・・・、か」(一同ざわつく)
シ(言った相手が新人・クリスチャンと気づいて自制する)「う、うらみを―――、この俺に恨みをもつだろう・・・、要するに俺は、向こう見ずにも自分から・・」
ク「鼻を突っ込み・・・」
シ「手を・・・、手を出しちまったんだ。相手がお偉方の大物なら、この俺様も・・・」
ク「鼻をあかされる・・・」
シ「や、やっつけられるかもしれん。―――しかし、俺はこう思った。『進めガスコン、男の意地だ!行け、シラノ!』とな。こう言いながら、危地にふみこむその時に、闇の中から一人の怪漢、はっしとばかりに切り込むのを・・
ク「鼻であしらう・・・」
シ「た、体をかわして、闇をすかせば、向かい合ったは・・・」
ク「鼻と鼻」
シ「えぇ、勘弁ならん!(クリスチャンにつかみかかるが自制する)。酒の勢いでざわめき立った敵は百人、むっとする匂いが・・」
ク「鼻をつく」
シ「ネギと安酒のにおいばかり也!まず、頭を低くして敵のただ中に飛び込んで・・・」
ク「鼻は上向き!」
シ「右に左に斬りまくる!二人は胴斬り!一人は串刺し!またもや一人が切り込む奴をチャリンと受けとめ、斬り返して・・」
ク「チンと鼻をかむ!」
シ「ええい畜生!皆出て行け!」(クリスチャンを残して、一同大慌てで出て行く)

最後はちょっと種切れですが、これは直訳でしょう。しかし、名調子、よく出来た訳!書店で岩波、光文社の訳を参照したが、岩波は訳文が古いせいかリズムが口語になじまない。光文社版はこれに近い味わい。

旺文社版は、文芸坐での上演の写真も表紙や挿絵代わりに使っているが、解説によればロクサーヌは小川真由美、シラノは北村和夫、クリスチャンは細川俊之。私の年代では、若い頃の小川真由美は知らないが、さぞ美人だったのだろう。細川俊之はロスタンの考えたクリスチャン役としては良くあてはまるのではないか。
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ゆうちゃん さん 本が好き! 1級 (書評数:146 件)

神奈川県に住むサラリーマン(技術者)です。読書歴は大学の頃に遡りますが、感想や内容をメモするようになったのはここ3年くらいです。
元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、ここ1、2年、文明論、科学ノンフィクション、数学、SFなど読書分野が広がってきました。どうかよろしくお願い致します。

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