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科学者より自然の美を愛する日本人へ。「雪を見て風雅に歌を詠んでいるだけじゃダメよ。」
「みんなで読みませんか? 課題図書倶楽部・2016 」の課題図書の一冊。著者の中谷宇吉郎博士は、北海道大学の教授だった昭和初期に世界で初めて人工雪を作ることに成功した。私のような文系脳の持ち主は「北海道で雪を作るだと?捨てるほどあるのに?」などと思ってしまうのだが、この本は特にそういう人間が読むと得るところが大きい。なぜなら「正しい科学的精神」というものが含蓄のある文章で平易に記されているからである。

序文には「この本を専門の学者に読んでもらうつもりは毛頭ない」と述べられている。一般人の自然現象への興味を喚起しようと書かれた本であり、それには理由がある。
「我が国の人は、すべての自然の災害に対して何となく静かな気持ちでこれを受け入れている傾向が強いように思われる。」
「(日本の書物に現れる雪は)いずれも陽気な観察あるいは諦観、最も多くはこれを賞玩するような傾向を持っている。」
つまり博士は“日本人には物事の正体をつかもうとする精神が欠けている”と言いたいのだ。簡単にまとめてみよう。

詩的な美しい表現で雪に親しむのは大いに賛成だけど、それで終わりじゃなくて雪の性質にも注目してよね。毎年何百万の人が積雪に苦しめられ、経済的な損害も凄いんだから。雪の性質をもっと研究して解明できたなら、雪は今のように恐ろしいものではなくなるはずだよ。でも専門の学者の努力だけじゃ、日本の科学は発展してゆかないのだ。虫眼鏡を片手に自然の神秘をその目で見て欲しい。きっと「どういう仕組みになっているのか?」と科学的説明を求める気持ちが湧いてくるよ。

中谷博士は雪の結晶の様々な形を集めるところから始めて、ついにウサギの毛の先っぽに雪の結晶を作ることに成功した。種々の形が作られる過程と気象条件を関連付け、最終的な研究成果として“この形の雪の結晶が降っている時、お空の上の状態はこうですよ”ということが地上に居ながらわかるようになったのである。研究の過程もたいへん面白かったがそれ以上に、この本には静かな感動を与えてくれる何かがある。科学の研究とは何のためにするものか、どういう態度で臨むものか。中谷博士の科学者精神が、本書を照らしているからだろう。

「雪は天からの手紙」という言葉で有名な本だが、実は自然の美を愛でてばかりの日本人へ宛てた「科学者からの手紙」なのではなかろうか。


☆関連書評:『六花落々』
古河藩主の土井利位は江戸時代の雪の研究者です。雪の結晶の観察結果をまとめた『雪華図説』をめぐる物語。
中谷博士は本書の中で「世界的雪華研究者として歴史上に普及の名声を残した人々の仕事と比べてもあまり遜色がないように思われる。」と、この殿様を褒めていました。

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Wings to fly さん 本が好き! 1級 (書評数:544 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly 2016-03-14 11:56

    以下ご参考までに(^^)
    私はこの本を電子図書で読んだのですが、文章を追いつつ別ページにある図版や写真を見るのにはキンドルは不便でした。途中で岩波文庫版を図書館で借りてきました。そしたら紙の本は字が小さくて読みづらい!!
    文章は電子図書で、図と写真は文庫本で、という風に区分けして読み進めたのでございます。

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  2. No Image

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