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有坂汀さん
有坂汀
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本書は評論家/批評誌『PLANETS』編集長の宇野常寛氏が刊行する有料メルマガ「ほぼ惑」書籍化第3弾です。宇野、浅子、門脇の三氏がファッション、建築などの「カッコいいモノ」から未来を語ります。
ネットや紙媒体問わず、サブカルチャーから政治までの論評を展開する評論家、宇野常寛氏が自身が編集長として手掛ける有料メールマガジン『ほぼ日刊惑星開発委員会』の書籍化第3弾が本書に当たります。

ここで建築家・デザイナーの浅子佳英氏と、建築学者/明治大学専任講師である門脇耕三との鼎談で語られるテーマはずばり、「カッコよさ」です。訴状に挙げられているものはファッション、建築、インテリア、ホビーなどなのですが、正直なところ、「ホビー」に関して以外は縁遠いテーマなのかなぁと思っていたのですが、3人の熱いトークと宇野氏のファシリテーターぶり。それらの要素が相まって一気に読んでしまいました。

インターネットが世界中を覆い尽くすことによって逆にライフスタイルや志向が全体主義的な一元性へと向かい「カッコよさ」が語られなくなり、「よい生き方」や「正しいあり方」と言ったものがむしろ時として新しい文化の足かせとなることに警鐘を促し、まずはファッションを取り上げ、本書で言うところの「ライフデザイン・プラットフォーム」となりつつある「無印良品」と「ユニクロ」の哲学を論じるところでは日ごろユニクロなどに行って感じていることを言語化されていると読み、
「あー、そーいわれてみれば確かになー。」
と読みながら思った箇所がいくつもありました。

ただ、「住宅と建築」や「インテリア」について語られている章については自分自身に「住まい」というもののリアリティーがあまりなく、(浅子・門脇両氏の専門が建築であるにもかかわらず!)どこか遠い世界の話ように思え、僕はこの辺は少し距離を置いて読んでいた気がします。

しかし、後半部の「ホビーとグッズ」は僕自身も宇野氏と同様に(宇野氏ほど金をかけることはできませんが)元々自分の中に『仮面ライダー』や『ウルトラマン』シリーズで育った「原体験」があり、サブタイトルである
「デザインとしての立体玩具 ── おもちゃが表象する欲望と戦後日本社会」
と、語られている内容がとてもヴィヴィッドでした。

そして、やはり21世紀の世界に生きる以上、逃れることのできないテーマが「プラットフォームと文化」であり、「モノ」と「情報」の溢れる世界の「未来像」を熱く語っているのでした。

本書のあとがき『「カッコ」よさとは何か』で浅子氏はこう記しております。
『永遠に続く「カッコよさ」など存在しない。また、現在のように価値観が多様化した世界では誰もが納得する「カッコよさ」も存在しない。それでもなお、その都度「カッコよさ」を目指し、「カッコよさ」について語ることを止めず、どこからか批判されるのを承知でアップデートし続けること。』(p253)。と。

僕も自分の中にある「カッコよさ」とは何か? というテーマを自問自答したくなる一冊でございました。
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有坂汀
有坂汀 さん本が好き!1級(書評数:2673 件)

有坂汀です。偶然立ち寄ったので始めてみることにしました。ここでは私が現在メインで運営しているブログ『誇りを失った豚は、喰われるしかない。』であげた書評をさらにアレンジしてアップしております。

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