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143 PV
hacker さん
レビュアー:
鉄道怪談というとまず思い出すのは、マルセル・シュオップ『列車081』、チャールズ・ディケンズ『信号手』ですが、本書は、鉄道怪談ばかり集めた「ポーランドのラヴクラフト」と呼ばれる作家による短編集です。
「訳者が出版のあてもなく本書の訳出を始めたのが2014年3月末か4月頭のこと。一篇ずつ訳しては電子書籍として発表していた。七篇ほど訳出したところで国書刊行会の編集者にお声掛けいただいた。そんな次第で、こうして紙の本として出版までこぎつくことができた」(訳者芝田文乃によるあとがきより)

このあとがきによると、作者の第二短篇集である本書は1919年に9篇による第一版が、1922年に12篇による第二版が出版され、さらに2篇を追加して第三版を出版する意図が作者にはあったものの、これは実現しなかったとのことです。ところが、本書は14篇からなっていて、つまり作者がかなえられなかった第三版を、実現したものなのです。冒頭の文章とあわせて、訳者のグランビンスキへの愛着がうかがえます。


1887年に生まれ、1936年に没した作者のステファン・グラビンスキは「ポーランドのラヴクラフト」と呼ばれている作家だそうで、同世代だったこともあるでしょうが、確かに日常のすぐ隣にある「異世界」をテーマにした作品が多い本書からも、その命名はうなずけるものがあります。ただ、この作家のキーワードをもう一つ挙げるなら、本書を読んだだけの印象で申し訳ありませんが、「運命」ということになるのではないでしょうか。

本書は、運命に逆らう、若しくは運命のままの選択をして、破滅する人間たちの物語集といっても過言ではありません。そして、レールの上を走ることしかできない列車というのは、その象徴的存在なのではないかと思います。幻の列車が登場する作品もありますが、それとてレールの上を走りますし、列車ごと失踪してしまう話もありますが、そこまでいかないと「自由」にはなれない物語でもあるわけです。


収録作品は、正直なところ、あまり怖くはありませんが、この作家のキーワードである「異世界」と「運命」が印象に残る作品がやはり優れていると思います。

前者に属するものでは、廃線となった路線の管理を無給で引き受けて、駅舎も線路もピカピカに磨き上げる男が待っている「運命」を語る『音無しの空間(鉄道のバラッド)』、人の死を予言する能力を持った男の話『ウルティマ・トゥーレ』がありますし、後者に属するものでは、生涯トンネル内の保全を仕事として陽の光を見たことのない男が見つける不老不死の「異世界」の住人を語る『トンネルのもぐらの寓話』があります。

ただ、本書で私が一番好きなのは、怪談ではありませんが、同じ車室に乗り合わせた若夫婦の妻に欲情し、夜も更けて寝込んだ夫の隣でコトに及ぶ中年男という、完璧にポルノグラフィーのシチュエーションと、その後の彼の転落を語った『車室にて』です。これは、ちょっとなかなかのものです。色々な意味でですが...


しかし、こういう本を読むといつも思いますが、世界は広く、まだまだ知らない作家は大勢いますね。
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hacker さん 本が好き! 1級 (書評数:672 件)

「本職」は、本というより映画です。

本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。

下段の「その他」から映画レビューに行けますので、覗いてもらえたら、嬉しいです。

よろしくお願いします。

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参考になる: 10票
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